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染色作家への道。


こんにちは。今日はわたしのテキスタイル制作についておはなしさせていただきます。

どんな作品をつくっているか
どんな考えでつくっているか

などを今後、お伝えしていければとおもいます。


わたしの制作スタイルは自宅でコツコツ染めるスタンプ捺染という技法です。

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布を蒸す工程を、工房などにお願いするのではなく、自宅で蒸しと洗いを行いはじめました。(写真は蒸す前のものと、サンプルで蒸した右下のものです。)


以前に、着物一反を自宅で染めた時のことからお話させてもらいます。

布を洗う際に問題がおこりました。布を蒸し終わり、化学染料を自宅で洗う際に、わたしのなかで疑問がわきました。「あ、これを家の下水に流すのか…。糊が詰まってしまわないかな。」と心配になり。

庭に流すことにしたのですが、今度は、「庭に化学染料を流すのは抵抗があるな。」と思いました。庭にドクダミがよく生えるので、以前より取れたドクダミなどでお茶を作ったりしていたからです。

そこで、これ以上作るのをやめました。今後も続けて制作しても、この方法では、庭を汚してしまう恐れもあるので無理に持続できないと判断しました。


作家は制作をやめてはいけないようなことを周りからよく聞きますが、わたしはなんでも納得しないと先に進めません。

消化できないで先に進んでも空回りするような感覚なので。やりたいことが出来たら自然と体が動くように思うところがあります。


ここから、制作を休んでいたときのことをお話しさせていただきます。

制作をやめてから、天然染料に興味を持ちました。以前、東京の大島で「ぱれ・らめーる」という貝の博物館貝に行ったことを思い出し、無いだろうと思いつつ、貝の染料があるのか調べたら、偶然見つけて感動しました。

その名も「貝紫染め」。貝を集めるのがなかなか難しそうで…いつか、この染料で染めてみたいと憧れます。

次に貝紫染めを調べることで、たどりついた書籍が『日本の色』今まで植物染料に興味がなかったのですが、吉岡幸雄さんの日本の色を拝見して紫草(ムラサキ)の根からとれる「紫根(しこん)」に興味を持ちました。
貝紫や紫根をいいなと思ったのは、日本では高貴な色とされていることもあります。


建築めぐりを目的に京都に伺った際に、偶然にも吉岡幸雄さんの展覧会「日本の色展」にも伺うことができました。

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今までのわたしの植物染料のイメージを覆されました。とても深みがあるので鮮やかな色彩を重ねても喧嘩しないのだなぁ…と感じました。

全てに土気色が微量に含まれているような。
木の絵を描いたことがある方は分かると思うのですが、えのぐの緑をチューブをそのまま出して塗っても葉っぱの色にならないんですね。少し茶色系、赤などを混ぜると、自然な色彩になります。
天然染料で染めた布も、そんな自然体の深みがありつつ、鮮やかさを染の職人さんが引き出しているのだと感じます。

十二単衣が、いくつも色を重ねていてもどこか違和感なく一体感をかんじるのは土気色の恩恵なのだろうと想像できました。


そして、別の機会に、高崎市染料植物園という場所があることをしりました。

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草木染めの父、山崎斌(あきら)・息子さんの山崎青樹さんの作品も高崎市染料植物園にて展示されています。
藍染体験の担当をしていただいた植物園の方とお話しさせていただいていたところ、なんと、藍染工房の窓の外で、ちょうど紫草を栽培されていると教えてもらいました。
ぜひ見てみますか?と!本当に嬉しいことに、ちょうど小さな白い花が咲いていたんですね。

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実はこの、紫草(むらさき)の根から染料がとれます。その名も「紫根(しこん)」昔は武蔵野でも自生していてよく見られた植物だったそうです。

しかし、西洋紫草と交配しやすく西洋紫草には紫根の染料が入っていないそうなんですね。現在は日本紫草は絶滅危惧種なんだそうです。

紫草の知識は、著書『紫 紫草から貝紫まで』を読ませていただきました。この著者である竹内淳子さん、とてもよく研究・取材をされていて、尊敬しています。文章もわかりやすく読みやすいので。貝紫・紫草や天然染料に興味があればぜひ。

そして、それ以前に、草木染めがなぜ必要なのかを考えるきっかけになったのは。御嶽山の宝物館に伺ったことでした。(場所の整理が追いつかず、話があっちいったりこっちいったりで、すみません。)

厄祓いに伺った際に、宝物館で「赤糸威鎧」の展示をみてガイドさんのお話を伺いました。古いものでも真っ赤な組紐の色が鮮明に残っている状態なんです。新しく修繕された組紐の方が、色が褪せているといった状況…それでも現代のひとが、昔の技術を研究されて再現しているので、昔の人の染色技術の高さに驚きました。

技術の問題なのか、染料の問題なのか、植物の問題なのか、本当は鉱物を使っているのではないか…などなど。想像が膨らみます。御百度参りならぬ、お百度染なんてのも冗談抜きでありそうです。

植物染料は、こういった歴史的な展示品の修繕や再現・復元などにも使われます。なので、紫根のもとになる紫草も絶滅したら、文化的価値のある品の保存に必要な材料をひとつ失うことになるんですね。

吉岡幸雄さんのドキュメンタリーで、「わたしは昔の人に挑戦しているんです」と言われていたのを拝見して、あぁ、スゴイなぁと純粋に思いました。


わたしのテキスタイル制作の話に戻ります。

庭にたくさんドクダミが生えているのをお伝えしましたが。今までのことが全て繋がってきたように感じます。


初めて、染料を一から作ってみました。ドクダミの染料です。初めは失敗したのですが、なんとか染料ができました。

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防染糊も自作で作ることができました。小紋ぬかを購入させていただき、あとは餅粉をまぜて蒸します。こちらも、初めは失敗したのですが。なんとか完成。

染料と糊をまぜれば、今まで使っていた染料のようにスタンプ捺染ができる状態まで粘度のある染料ができました。

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今までは美大だったり、工房で頂いた染料を使わせてもらっていましたが。これから継続していけるために、身近で出来ることを、始めようと。今後は一人で材料を作っていけるようになったので…これからは先が明るくなってきました。

また今度は、コンセプト、モチーフについてお話できたら嬉しいです。

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ここまでのお話に、お付き合いありがとうございます。


貝紫についての以前書いたものです。


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