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セミリタイア人生を充実させたい人向けの話です。その21

その21

田古島さんスペシャル②です。

第二十一話

田古島から連絡が来たのは
AM5時前後だった。

彼から聞いた話しの内容は
とても理解出来るものでは無かった。

クレーム対応で取引先と
先方の店舗へ訪問し、
弁当のウィンナーが生だったという
クレームに対応している中、
当初は取引先に向いていた矛先が、
何故か田古島に変わり
挙句の果てには取引先の人間が
先に帰ってしまうという
あり得ない事態が発生し、
外部への連絡もとれないまま、
約8時間の長時間にわたって、
店舗に軟禁状態だったとの事だった。

彼から電話が入る、

「お疲れ様だったね、
 体調に大丈夫なのかい?」

「いやーっありえねぇっすよ」

まぁ、取り敢えず声が聞けて安心した、
そして思ったよりも元気そうだ。

「本当に大変だったね、
 ウィンナーが生だったの?」

「いや、ちげーっすよ、
 赤ウィンナーっす」

どっちでの良い気がするが、、、

「赤ウィンナーが生だったの?」

「いや、ありえねぇっすよ、
 弁当の中で赤ウィンナーだけ
 レンチンして温まってないなんて。」

「まぁ、そりゃそうだけどさ、
 取引先さんと2人で今迄かい?」

「いや、それがありえねぇっすよ、
 途中で帰っちゃって、
 その後はずーっと1人ですよ?」

うーむ、言ってる意味が良く分からない

「途中で帰るなんてありえるのかい?」

「それがあったんすよ、
 取引先の担当と話していたら
 先方の怒りが沸点に到達して、
 もう帰れって言ったら、
 本当に帰っちゃったんですよ!」

「その担当さんは
 ウィンナーが生だったということを
 認めなかったの?」

「ちげーっすよ、赤ウィンナーっす」

そうそう赤ウィンナーね、

「赤ウィンナーが生だった事を
 認めなかったってこと?」

「そうなんすよ、
 そうしたらメチャクチャ切れはじめて」

「で、そのウィンナーは田古島から見て
 生だったの?」

「赤ウィンナーっす」

・・・

「赤ウィンナーは生だったの?」

「そんな訳ねぇっすよ」

先方のクレームの内容にしても
ウィンナーでも赤ウィンナーでも
もうどうでも良くなってしまいそうになる。

店舗の立地からして、
クレームが多いのは致し方無いし
田古島自身も、
良い意味でも悪い意味でも
クレームの対応に慣れていたのだが
取引先が帰るという予期せぬ行動迄は
想定外だったのかもしれない。

その後1人残された数時間については、
本当に大変だったと思うのだが
彼の声を聞いていると
全然平気そうに聞こえてくる。

そうは言いながらも
然るべき対応をとらなければいけない
取引先に対して
今回発生した一連の行動について
確認しなければならない

そして、
今後の店舗対応については、
やはり警察へ相談だけはしておいた方が
良いだろうということになり
その他の再発防止策等を確認した。

今回の対応については、
田古島さんには非が無いものの
常に想定を超える出来事が
起こるものだと思って
今後は対処しようという事にもなった。

想定を超えるものと言えば
田古島という人間こそ、
いつも此方の想定を超えてくる
持ち前のバイタリティで
どんな困難に対しても
陽のパワーを発揮して乗り越える。

また、田古島の武勇伝が増えたと
四国で仕事をしながら
同僚達に話しをしていると
長時間拘束されていた
彼が大変だったことを心配するよりも
いつもの事だと思っている姿に
田古島という人間の
いろいろな意味での
引きの強さについて関心しつつ
昨日の件を取引先へ確認してみると
先方からは平謝りの電話が入る。

詳細を聞いてみると
取引先の担当として、
今迄経験した事が無い恐怖を味わったらしく
正常な判断をする事が出来なくなり
ほとんどパニック状態になり
とにかく家へ逃げ帰ったとのことだった。

そんな正常な判断も出来ない中で
田古島1人だけ残して
そしてその事を誰にも報告せず、
1人だけ帰るなんて、
もし田古島じゃなかったら
大変な事になっていたかもしれないと思うと
新たな怒りも生じてきた。

大概の人間であるならば
この一連の流れでお腹いっぱいになるはずだが
田古島という男は底が知れないという事を
2日連続、深夜の電話で思い知ることになる。

四国から九州に移動し、
食事を終えてホテルに戻る、
昨日の事もあり、
早めに体を休めようと思って
PM11時には寝てしまっていたのだが
また、ブーーン、ブーーン、ブーーン、
間違い無く携帯電話が震えている。

嫌な予感のまま、
昨日以上に寝ぼけた状態で
携帯電話の画面を見てみれば
田古島からの電話だった。

「もしもーし、どうしましたか?」

「部長大変っす、襲撃を受けています。」

一気に眠気が吹っ飛ぶとはこの事だ。
今度は何事なのか、

「襲撃?誰が?」

大体普通に暮らしていて
襲撃なんて受けることあるものなか

「今度は何したの?」

「昨日の店舗の人達が店頭へ来て
 田古島出せーって言ってます。」

「今日の昼間、何かあったの?」

「いや、何も無いです。」

「じゃあどうしてよ?」

「分かんねぇっす。」

「表には絶対に出るなよ、
 警察は呼んでるの?」

「ハイっ、さっき電話しました」

「なんか約束してたの?」

「いやいや、何もしてねぇっす、
 アッすんません、警察来ました。
 電話切ります。」

「・・・・・」

また、昨日とおんなじだ、、、
悶々としたまま、
結局はまた朝方になってしまった。

AM5時、昨日と同じ時間に
携帯電話が昨日と同じ番号で震える

「はい、お疲れ様でした。
 大丈夫だったかい?」

「いやいやいや、ありえねぇっすよ」

いやいやいやじゃないのは
こっちの方だよ、
そんな事を思いながら聞いてみると
田古島からの報告内容は
本当にあり得ないコトだった。

「何があり得なかったの?」

「いやー、警察に
 今日相談したじゃないですか?」

「わざわざ、派出所じゃなくて
 ○○署に行ったんでしょ」

「そうなんすよ、そしたらそこの署員が
 昼間に店舗に行って
 注意してくれたらしいですけど
 その逆恨みで御礼参りになりました。」

もう、頭がぼーっとしているし
言ってる意味が良く分からないコトばかりだし、、、

睡眠不足の頭で考えてみれば
田古島が悪い点は一点も無いのだが

取引先がクレーム対応で
1人だけ残して帰っちゃうなんて
聞いた事無かったし、

警察へ相談したら
御礼参りの襲撃をくらうなんて
想定もしたこと無かった。

このエピソードの後も
田古島個人の問題なのか
彼をとりまく環境なのか
いつも驚くコトばかりが
彼の周辺では発生する。

しかし不思議なコトに
その驚くコトを経験する度に、
彼のチームは強くなる。

田古島という人間の
魅力なのかもしれないが
良い事も悪い事も
いろんな人すらも
引き寄せてしまうのかもしれない。

それは、
2021年になっても変わらない
彼が身近の人間で一番最初に
コロナ陽性になった時も
驚くコトも無かった。

彼と一緒にいると
この言葉を思い出す、

神は乗り越えられない試練を与えない

第1コリント 10:13
あなたがたが経験した試練はみな、
人の知らないものではありません。
神は真実な方です。
あなたがたを耐えられない試練に
あわせることはなさいません。
むしろ、耐えられるように、
試練とともに
脱出の道も備えていてくださいます。

2021年始まったばかりだが
どんな試練があったとしても
この言葉を忘れずに頑張る事にしよう。

続く


2018年に退職後、 独立して頑張っております。 まだまだ不慣れですが 何に対しても頑張りますので 温かく見守ってくださいませ(^^)