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FMラジオの春のキャンペーンソングに、自分がこの場所に戻って来れたことを知る

そうだった、春は繁忙期だった。

わたし、やっとここに戻ってきたんだな。

だいたい結婚式は春と秋に多くて、ウェディングの仕事をしているわたしの3月と4月は、毎年とんでもなく忙しかった。

そのことに、作業場で聴いているラジオで思い出した。FMラジオでは毎年、「春のキャンペーンソング」っていうのをやっていて、いつもアトリエのラジオで作業中に聴いていたのだ。

「春のキャンペーンソング」は、春になるとラジオだけでオンエアされる特別な一曲だ。毎年メインのミュージシャンが作詞作曲を担当し、楽曲は人気ミュージシャンたちが複数人で歌っている。毎年、若手も大御所も、けっこう豪華なメンバーが揃っていてうれしい。

春のあいだだけは過去のキャンペーンソングもリクエストできることになっていて、この時期になると今までのなつかしい曲が頻繁にラジオでかかることになる。その度に、当時の結婚式やドレスの思い出が、音楽とともになつかしく蘇る。どの曲の時にどのドレスを作っていたかとか、けっこう覚えているものだ。

例えば2019年はaikoが作詞作曲した「メロンソーダ」
KANA-BOONの谷口鮪、チャットモンチーの橋本絵莉子、そしてマカロニえんぴつはっとり!

この曲はこのドレスを作っていた時によく聴いていたな。

シルクのセパレートドレス

とか、

2018年は尾崎世界観(おざき せかいかん)の「栞」

そうそう、このとき作ってたドレスはこれだった。
花のようなオーガンジーのスカート、「栞」を聴きながら、えんえんと花びらを製造していた。

おやゆび姫のドレス


そんな風に、そのとき作っていたウェディングドレスや、関わっていた結婚式の思い出とセットになって思い出されてくる。当時の気持ちも。

ところが2020年は、ウェディングの仕事がなくなって、2021年の春は自分の作業場をまだ持てていなかった。

そして、この春やっと、

「ラジオで春のキャンペーンソングを聴きながら、自分のアトリエでウェディングドレスをつくる」

その場所まで戻って来れた。うれしい、すごくうれしい。

でも、すごく忙しい。追われてる。焦ってる。でもすごくしあわせ。

ああ、この感じ、ただいま。


2019



だれにたのまれたわけでもないのに、日本各地の布をめぐる研究の旅をしています。 いただいたサポートは、旅先のごはんやおやつ代にしてエッセイに書きます!