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2021年度、国はどんなロボットに投資するのか?#2(国交省、農水省、厚労省など編)

前回は『ロボットの開発に対して、国はどんな投資をしているのか』ということを、経済産業省の2021年度予算から見てみました。

今回はその続きとして、他の省庁(特にロボットユーザに関係する省庁)がどんなロボット関係の取り組みをしているのか見てみましょう!

国土交通省や農林水産省は知らない取り組みが多く、見てるだけで、『へぇーーー面白いことやってるなー』と思いました。

前回に引き続き、勝手にネットサーフィンして得た情報なので、抜け漏れはご容赦ください。資料は基本的には各省庁の予算ページから貰ってきています。

国土交通省

まずは国交省。イメージ的には道路を作ったり、川を整備したりというイメージですが、傘下には気象庁があったり、観光庁があったりと色々な事業をしています。

私もあまり知りませんでしたが、「ドローン」、「身体拡張」、「自動運転」とロボット関係の取り組みもかなり多いです。

特に、物流、サプライチェーンという視点で倉庫内の自動化(ピッキングなどのロボット化)やドローンを使った配送などを積極的に取り組んでいるようです。しかも思ったより取り組みの数が多い。驚きました。

もしかすると、国交省というプレイヤーは道路の地図や建物情報(BIM)などのロボットを動かす環境側のデジタルデータを全て持つことが可能かもしれないので、その意味においてもDXとかCPSとかのキーとなるプレイヤーなのかもしれませんね。

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経産省側で開発が行われている屋外での宅配ロボットに関しても、国交省側でも制度設計のための予算が組まれています。

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また、数年前から力が入っているのがインフラ関係のロボットです。笹子トンネル崩落事故があって以来、老朽化しているインフラの点検をロボットで行うという研究開発が積極的に推進されています。

過去NEDOプロとして行われたインフラ点検ロボットの取り組み内容は【こちら】などに纏められています。

来年度も以下のような事業として、インフラ維持に活用されていくようです。

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そして、建築施工分野のデジタルトランフォーメーション『建機の自動化・自律化、人間拡張、AI開発支援』などなどが推進されます。建機の自動化や自律化や遠隔化などは、1992年の雲仙普賢岳の噴火災害復旧工事が危なすぎるということで、開発が加速されたと聞いていますが、現在も脈々と受け継がれています。

まさか国交省の予算申請の資料で『人間拡張』という言葉が使われるとは思っていませんでした。パワーアシストスーツなどの活用による労働者負荷の軽減を目指した取り組みが行われるようです。

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また、自動運転系の取り組みもかなり豊富です。もちろん、車の自動運転関係の取り組みも多く行われていますが、MaaSの視点で自動車以外の小型モビリティや歩行者など様々な移動主体へどのようにデータ活用していくのか、サービス実現をしていくのかという検討が積極的に行われていくようです。

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また、モビリティ側ではなく、より自動運転を行いやすくするためにどんな道路にするべきなのかという検討や、自動運転を活用したマチづくり、地域づくりへの支援も行われます。インフラを整備する国交省らしい取り組みだなぁと思いました。

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自動運転の取り組みも「陸」だけではありません。ドローンなどの「空」の取り組みは更に大型化して人が乗るタイプへ発展していくようですし、「海」での船、ボート、潜水機の自動運転にも力が入っているようです。

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国交省の予算関係のページを見て特徴的だなぁと思ったのは、長期視点のビジョンとセットで取り組みが説明されていることでした。

以下のように2040年の道路の姿「人々の幸せにつながる道路」を描いた上で何をしないといけないのかという設定をしたり、

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ドローンの活動を2030年代のロードマップと紐付けて紹介したりと。

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特に初めて取り組みを見る場合には、こういうビジョンやロードマップとセットで今年度の取り組みが紹介されていると非常にわかりやすかったです。

農林水産省

続いて、農水省。文字通り、農林水産という日本の一次産業全体を見ています。特徴的なのは、農業関係の研究開発と現場へのロボットなどの導入の両方がバランスよく取り組まれている点です。

開発側では「スマート農業」という視点で、「ドローン」「自動収穫ロボット」などの先端技術の実証安全確保に向けたルール作りが行われます。

そして、面白い!!と思ったのが、『フードテック』という視点でロボットを活用した食品製造、食品加工や調理ロボットなどを支援する取り組み。単純な一次産業支援だけではないのですね。このプロジェクトでは『宇宙食』とかも対象になっています。

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また、実際の農場に対する先端技術製品の実導入にも支援が行われています。なぜか搾乳ロボットの事例が多いようですが、おおむね半額補助のような形になっているようです。


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厚生労働省

次は厚労省。医療、福祉、介護などに関する取り組みをしています。

厚労省の中では4つくらいロボットに関連する取り組みがありそうです。文字だけの説明だったので、どんなものが開発されるかはわかりませんが、医療福祉分野でのロボット開発が明言されています。

特に介護ロボットに関しては、開発のネタに関するニーズとシーズのマッチング大規模な実証の支援も行われます。おそらく、この辺りの活動はテクノエイド協会などの活動ともリンクしてくるものと思われます。

また、身体的にも負荷が高いと言われている介護のスタッフの「労働環境・処遇の改善」「資質の向上」を図るためにロボットを導入支援、活用促進が図られるようです。

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その他

通信という視点であるかなぁと思っていた総務省ではロボットと明言した事業は見つけられませんでした。検索能力不足かもしれませんが、5Gとか多言語翻訳とか8Kとかがメインの研究開発対象のようです。関連機関であるATRなどでは、ある程度ネットワーク視点でのロボット研究が行われています。

また、内閣府文科省でもロボット特出しではありませんが、イノベーション促進という名目で多額の研究開発投資が行われています。

戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期
ムーンショット目標3「2050年までに、AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットを実現」
ムーンショット目標1 「2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現」

また、警察庁では、研究開発ではないですが、自動運転関係の調査に関して、複数の予算が計上されていましたので、法制度整備などの視点で取り組みが進んでいくものと思われます。

二週に渡り、2021年度の国の予算の中でどんなロボットの研究開発、実用化、導入支援にお金が使われていくのかを見てみました。

経産省はもちろんのこと、国交省、農水省など関連する省庁で開発から導入まで幅広い活動がされていることは驚きでした。

もちろん、全て国頼りという話ではなく、民間においても多額の費用が投資されている領域ですので、うまく役割分担しながら、効率的に推進できると良いですね。

また、今回改めて各省庁の予算関係のホームページを見ました。決して分かりやすいとは言えないと言うのが本音ですが、かなり色んな情報が掲載されていました。改めて、国家公務員の皆様、日本のためにありがとうございます!という気持ちです。

ロボット関連の面白い情報としては、経済産業省のロボット政策室の室長が一般に公募されていました。こんな制度があること自体知りませんでしたが、以下のスキルをお持ちでご興味ある方は、応募されてみてはいかがでしょうか?

・ロボット産業における近年の技術動向、デジタル技術を含めた先端技術分野に関する知⾒(加えて、競争政策等含め関連政策・法規の知⾒もあるとなお可)
・様々な企業・業界、アカデミア、⾃治体と円滑にコミュニケーションや調整を図れる⼒
・数⼈規模のメンバーをマネジメントする⼒

てまは、また来週~〜

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安藤健(@takecando)

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