タカヲ

理系大学生で劇団員です。 twiiter→https://twitter.com/ya…

タカヲ

理系大学生で劇団員です。 twiiter→https://twitter.com/yachi_nobody

最近の記事

命が終わるとき

佐藤花子は若く美しかった。世間一般的に若い女性というものはたといその相貌が朱、白粉を纏わずとも崇高なる美として存在するものだが、花子は中でも格別の美しさを誇った。彼女の豊かな黒髪はわずかにウェーブし、要綱を浴びれば瑪瑙のごとき輝きを放ち、常時わずかに潤む大きな瞳はほのかな哀愁と目一杯のあどけなさを宿し、まるで朝日を拒絶した青薔薇のごとき至高を髣髴とさせた。さらに花子の所作は見目に違わず、美の根源たる聖母マリアの清廉さと同時にあらゆる男衆を見下す高額毒婦の高邁さという、一見する

    • 夢転

      獏の嬌声                              響く喝采                              踊る沙羅                              酩酊は恋し海 佳人の波留足は                                     薄氷に蕩け                               惜別ゆえに扇は凪ぐ                                 催涙雨を降らす

      • パライソ・枝豆・ラーメン

        佐藤太郎くんとは会社の同期です。彼は開発部門に配属されましたが、新人でありながら、彼の有能っぷりは会社中の知る所です。おまけに太郎くんはよく気が利き、謙虚で、努力家で、誰にでも優しくて、愛らしい顔立ちが特徴的な美青年でした。だから経理の鈴木さんから営業の田中さんに至るまで、彼とお近づきになりたいと願う女性は非常に多かったです。 一方の私は企画部配属の、よくもわるくも目立たないイチ社員です。朝はギリギリまで寝ていることが常で、パーソナルカラーに合っているのかも分からないメイク

        • 佳人薄命

          私は長生きできるでしょう 人間は50年、化転は100年、私は200年 私の鼻にはドラキュラもお手上げで 私の指は紳士淑女のディナーにぴったり されど 「醜悪」と蔑むにはあまりに愛されすぎて 「薄氷」と称えるにはあまりに血管が太い 命短し恋せよ佳人 私がアナタを食らう前に

        命が終わるとき

          佐藤太郎君へ

          佐藤太郎くんは綺麗な顔をしている。 佐藤太郎くんは頭がいい。 佐藤太郎くんはユーモアがあって皆に優しい。 佐藤太郎くんは私とセックスした。 2年前、私と佐藤太郎くんは同じ大学の二年生だった頃の話だ。お互いに学科も同じだったけど、彼と私は人間的な性質が全くの正反対で、彼は所謂陽キャ、私は陰キャ。太郎くんはイケメンで賢くて運動神経も抜群で、おまけに皆に優しいから大学の女の子は太郎くんにメロメロになった。私もその一人だったけど、思い切ってデートに誘うなんて勇気も、誘われるだ

          佐藤太郎君へ

          かじるバターアイス超うまい

          セブンにて絶賛再販中の「かじるバターアイス」だが、ほんとにほんとにほんとにおいしい。バイト先へ向かう道中、昼飯代わりに食べるソレだが、癖になりすぎて三日連続で食べてしまった。ただでさえダイエット中の女子大生が食べるブツではないのに、連日摂取するなど、もはや血糖値にノルマでもあるのかと言わんばかりの振る舞いだ。でも、ほんとにほんとにおいしいのだから仕方がない。 まずパッケージだが、ガリガリ君でおなじみの赤城乳業さんの、さりげなくも堂々とした主張がプリントされている。「赤城乳業

          かじるバターアイス超うまい

          アイライナーがなくなっちゃった

          なんてこった。デート当日の朝、アイライナーがキレてしまった。前々から筆跡が薄くなってはいたけど、「まぁ明日買えばいいか」を繰返しているうちに土壇場を迎えてしまった。 困った困った。アイライナーがないと私は瞳にインパクトが出ないんだ。なんてたって私は純ジャパニーズの堀浅顔で、歪なバランスの、華もクソもない平凡女なんだもの。すっぴんの自分に自信なんかありゃしない。お化粧を施して、ようやく人並みか、それ以下くらい。あーあ、嫌になっちゃう。でもネットには自分よりも明らかに容姿の劣っ

          アイライナーがなくなっちゃった

          人形売りがみたキカイ人

          今となっては霞のかかった昔話ですが、私はかつて人形売りを生業としていました。幼児が弄ぶ玩具から、蒐集癖に目覚めた大人のコレクション、はたまた首輪をつけた畜生によって涎まみれにされる綿詰めまで、私が取り扱う「人形」は多岐に渡るものでした。ええ、勿論一から全て手作りです。綿の選別のためにはインドの農場へ直接足を運び現物を眺め、フェルトはわが国で最も質を誇る工場より取り寄せております。肝心の縫製は私が担当しておりますが、これも胸を張って世界一の技術だと誇ることができるでしょう。時に

          人形売りがみたキカイ人

          「バズれ」とは言いますが

          私は「作家になりたい」。一括りに作家といっても、できれば文章を用いたお仕事がいい。脚本、シナリオ、小説といった類だ。 それを聞いた大人たちは、めいめいに「なんでもいいからSNSでバズれ」と言う。 なんでもいい?文章じゃなくてもいいのか?というか今ってどういうコンテンツがバズるんだ?万人に分かりやすい魅力を備え、かつインパクトを残せるものとは?回りくどくなく、野性的な荒々しさで感性を刺激する何か……私の貧相な頭に思い浮かんだものは「見目の良さ」だった。しかし残念なことに私は

          「バズれ」とは言いますが

          ダンスなんてやる予定じゃなかった

          最近ダンスを習い始めた。アイソレだのカウントだのよう分からんけど、マジで疲れるんだってことだけは覚えた。スキップだけでもこんな疲れるようになったなんて、ほんとに歳をとってしまったんだなと感じる。 勿論そんな年になって新しい運動を始めたもんだから、体にも不調が出る。まず筋肉痛。膝を暫く伸ばしていただけで次の日は階段をフラフラで降りるはめになる。地味に恥ずかしいんだ、他の人に見られるとさ。 あとは食欲が減衰した。そりゃそうだ、ずっと動いてるんだから胃にモノなんて入れない方がい

          ダンスなんてやる予定じゃなかった

          え!?この状況のディストピアでも入れる保険があるんですか!?(1)

          「ω321、ココアが冷めてしまうよ」 O-918に指摘されて僕はふと我にかえった。 僕たちは1217秒前にカフェに入り、901秒前にコーヒーとココアを提供された。O-918は実に気のいい個体だ。3日前から落ち込んでばかりの僕を見かねて、精神的ケアのために大衆向けカフェテリアに連れ出してくれた。僕は五感のうち味覚が未発達なため、セラミックから抽出したコーヒーを飲むことができない。しかしセラミックから抽出したココアは好ましいと感じている。その証拠に、僕らの体内を常時監視してい

          え!?この状況のディストピアでも入れる保険があるんですか!?(1)

          豪快かつ繊細

          大学生と言えば金がない。ましてや一人暮らしとなると日々の食費にも気を遣う。となると必然的におつとめ品や粗悪品(言い方)がトモダチになるわけだが、一人の甘党としてはスイーツは欠かせない。 何もなんちゃらショコラだの、なんちゃらかんちゃらだの、やたらに繊細でこんまい高級スイーツが食べたいってんじゃない。日々のジャンキーフードでメーターが狂った舌では、堪能の仕方も忘れているからだ。 かといって、煎餅やポキポキのポキ棒等をひたすら頬張るのは味気ない。庶民感が強すぎて特別な感じがし

          豪快かつ繊細

          またODしちゃいました

          いやね、わざとじゃないんです。自分でも訳が分かりません。 ふと視線を落とすと、ボコボコのアルミ紙が映りました。その後辺りを見回し、机の上に置かれた空のペットボトルを見てようやく悟ったのです。嗚呼、また私は沢山飲んじゃったのだなと。 飲んだ瞬間の事はあまり覚えていません。おそらくは何気ない終焉欲といいますか、今抱えている何もかもと心中したいという強い一心で、一思いにあおったのでしょう。冷静になってしまえばそれは理屈から離れた、動物的なロマンチズムの行く末にも見えます。しかし

          またODしちゃいました

          妄想シンデレラ

          私、灰被(はいかぶり)シンデレラ!今年で3〇歳!彼氏はいないの!でも幸せ! お家にはね、ぬいぐるみが沢山あるの。だって一人で暮らしていると寂しいもの。本当は人間がいてくれると嬉しいし楽しいのだけど、私はすっごい寂しがり屋だから、普通の人間じゃ満足できなくて、あそこのパジャマの持ち主はみ~んな出て行っちゃった。でも私に寂しい思いをさせる方が悪いと思わない?いくらお仕事が忙しいからって、限度があるでしょ!帰りが遅い日が続くと、きっと何処かでピンク色の油を売ってるんじゃないかって

          妄想シンデレラ

          死んでしまいたい

          死んでしまいたいと常々考えている。しかしそのような考えが自分の甘えに由来するものだとも自覚している。私は救いがたいガラクタだ。油をさすほどの価値もない。この言葉の羅列は俗に、自虐オナニーという。 こうしてインターネットに希死念慮を吐露した所で誰も私を救えない。自分の弱さ、そして弱さをスマートに隠すほどの知性を持ち合わせない愚かさは私以外の誰のものでもない。それでも私は自分を救う術を模索しようとしていない。自堕落故に今の環境を変えようとするほどの思い切りも先見も持たず、それで

          死んでしまいたい

          出会い系サイトに登録した

          年齢イコール彼氏いない歴の女がここに一人いる。傍らには何時買ったのかも覚えていない、健康飲料。百円ショップで購入したイヤホンは片方の銅線が千切れていた。 スタイルにも顔かたちにも自信がない。性格が明るい方でない事も重々承知だ。カラッとした太陽に割られた海の潮風が鼻孔を擽る時でさえ、内でくすぶる陰鬱な黒塊はドロドロと液状化し、口から吐き出される。高らかなるウミネコの嘲笑が私の魂を平手打ちする。勘弁してくれ。私の腸は既に絞殺されているのだ。 こんなわけで私は一人では生きられな

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