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連続プロレス小説「たまちゃん」(仮)第一部

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歴史はあるが小さな女子プロレス団体が舞台 そこでプロレスラーを目指す都並貴絵(たまちゃん) 厳しくも優しい先輩レスラーの雨宮夢子、看板レスラーの真琉狐そしてたまちゃんの憧れの薨 …
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#1 12月31日

12月31日
大晦日

なんとなく毎年この日はカラッとした快晴で冷たい空気が澄み渡っている
そんな気がする
実際の過去の天候なんて調べているワケもないけど一年の締めくくりで明日には新年を迎えるという心境的な問題
この様な澄み切った晴れた気持ちでいたい
そんな思いがそう感じさせてるのだろう

だがそれとは反比例するかのようにオドオドドキドキしながら深くキャップを被り、サングラスにマスクという姿で電車

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#39 セカジョの神様 第一部 完

#39 セカジョの神様 第一部 完

「で、アンタが入ってきたのはいいんだけどさ。正直なところ私も自信喪失してた時期でさぁ。この子に賭けてみようってのもなかなか思えなくて」

夢子さんにもそんな時期があったんだ
いつも自信に溢れているイメージがあったので少し驚いた

「でも私の言うことを素直に聞いて何だかちょこまかちょこまか動いて与えられた課題に真っ直ぐに向き合っていくアンタを見てたら私も自信持ってもう一度コーチとしてアンタの気持ちを

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#38 まだまだ夜は終わらない

うわー
なんかめちゃくちゃ寝たなー

うっ!
痛っ!
足は何かむにょむにょだなぁ

あ!
電気つけっぱで寝た?

やらかしたー

ま!いいか

ん?
てか何か変だぞ?

え?
人の気配がする

何?
何!何?!

すっぽり被っていた布団をそぉっとずらして部屋を見渡、、、

「うおーっ!!」
思わず声を上げる

「ひ、ひ、ひ、人がいるぅーーっ!!」

え?アレ?

「アンタ何騒いでんのよ!!」
夢子

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#37 TAMAE

「フゥーフゥーフゥーフゥー」

呼吸もだいぶ荒れている
そしてなんとか掴んでいたロープから手を離しロープを背にして構える

夢子さんはその様子を見届けた

ギュッと右手で拳を作り私の方に向けて腕を伸ばす

そこからそのまま親指を立て自身の左胸にその親指を差す

えっ?!これって!!

リングの下にいる真琉狐さんと亀さんがざわつきだす
小声でよくは聞こえないが顔を突き合わせ

「やばい!やばいよ!や

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#36 立て!

ゴングが鳴り夢子さんと改めて対峙する
こういう形でリングの上で夢子さんと向かい合うなんて、、、

流石に早すぎるよおぅー

夢子さんはリングに立っているだけで圧倒的な覇のオーラを醸し出している

雨宮夢子を倒す!
なんて思ってはみたものの一体どうすればいいのだ?

そもそもプロレスの試合開始って?

リングを円を描くように回りそこからの手四つやロックアップからの力比べ?

真琉狐さんのようなキック

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#35 プロテスト、その内容

「しゃ、社長ーー!!」
夢子さんが呼び止めようとするが聞こえてないように社長は階段を上がっていく

いやはや私は甘いね
そう簡単にはやっぱいかないか
自分で簡単に掴める夢はないって思ったばっかじゃん

まあでも10分後にプロテストが始まることだけは確定している
少しでも回復するように目を閉じよう

「ジョニーさんトレーナーでしょ?なんか対処出来ないの?」

「バカ!そんなん名ばかりに決まってんだろ

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#34 声

「、、9、、、100!」

汗がボタボタとマットに落ちていく

ようやく100回が終わった
後400回途方もない数字に感じる
でも負けたくない

本当に入門してから自分がこんなに負けず嫌いだなんて初めて知った
自分自身が一番驚いている

漠然と薨や夢子さん、真琉狐さんのように強くカッコよくなりたい
ライトをいっぱい浴びてリングで歓声に包まれてみたい
それが衝動

でも今はそれだけじゃない
親身なっ

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#33 簡単に掴み取れる夢なんてあるワケない

3月30日
プロテスト当日

通常通りに起き掃除をしてご飯を食べる
今日も朝から真琉狐さんのグッズが届いたので袋詰めや発送の業務を黙々とこなす
なるべく平常心を保とうとするが袋詰めの薄いビニールを破ってしまったり宛名を書き間違えたりと凡ミスを繰り返す

「やばばだよぉぅー」
なんか泣き入りそうです

「いやいやトランキーロ、トランキーロ」
焦るな私

チラチラチラチラとキッチンの時計を何度も見る

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#32 その花言葉

「この花がカモミールなんですねー。あのハーブティーなんかで使うやつですよね?初めて知りました」

お母さんはニッコリ笑って
「そうよ。かわいらしいでしょ?匂いも嗅いでみて」

私はカモミールに鼻を近づける
甘いリンゴような匂いが鼻腔をくすぐる
「いい匂い」

「ふふふ」

「ヒデは今も良い友達がいるんですねー」

「そうねぇ、でも夢子さんが一番よく知ってる人よ」

「えっ?」
私と夢子さんは同時に

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#31 カモミール

「あの子?、、、ですか?」

「うん、そうあの子」
まっすぐな夢子さんの瞳が陽の光でキラッと光った

「この間の時に聞いたでしょ?事故のこと」

「あ、ハイ」

「今日はあの子、、英実、、ヒデの月命日なんだ」

「あ、そうだったんですね」
そうだったんだ、だから、、、

「なるべく行くようにはしてるんだけどね。でもなかなか行けないことも多くてさ。だから今回たまにも会って欲しくてね」

英実さんって

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#30 ドライブ

そして翌日
プロテストまで残り2日

今日は夢子さんとマンツーマン
基礎体の練習をみっちりとやる

セカジョの選手として当たり前にこなさなければならないメニューを私だけでなく夢子さんも一緒になって練習する

かなりついていけるようにはなったが夢子さんに置いてかれる所も多々あった
それでも歯を食いしばりなんとかやり抜いた

そして練習も終わり片付けも終えたところで夢子さんが私を上から下までゆっくり見

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#29 一か八か

狙いは真琉狐さんの太ももから膝辺り

思い切り飛び込んだ

もう一度ネックロックの体勢で掴んで投げようとしていたであろう真琉狐さんは想像より低い私のタックルを掴み切れなかった
そして体勢を崩し尻餅をつきそのまま倒れる

よっしゃーー!!

同体で倒れてしまったが急いで首固めの様な体勢で真琉狐さんを押さえ込む

ここしか勝機はないかもしれない
必死で押さえ込み真琉狐さんの両肩がマットについた

「フ

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#28 ONE MORE TRY

練習は日に日に過酷さを増す

元々の基礎体力が夢子さんが言った通り最低限には達していたお陰か徐々にだがついていける様になり始めていた

そんな折、社長からプロテストの日にちを告げられた

3月30日

審査員は社長、夢子さん、真琉狐さん、ジョニーさん、亀さん

変わらずテストの内容は告げられなかった

残り1週間弱

「さあー今日もやるぞー!!」

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プロ

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#27 FIGHT OR FLIGHT

ドキドキ
ドキドキドキ

「おはよー」
道場に入ってきたのは夢子さんだった

「おはよ、、?!」
と挨拶をしかけたが続けて亀さんが

「おっはよー!!」
と元気いっぱいの声で入ってきた

え?え?え?!

すると小さな人影が近づいてきて私の足にギュッとくっつく

「たぁまちゃん!」

「ほ、ほのちゃーん!」
思わず私はほのちゃんを抱きしめた
そしてその様子を笑顔で見つめる夢子さんと亀さん

それに

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