「売るだけのKPI設計はやめてLTV(顧客生涯価値)を意識した目標設計をしよう」という話
【この記事を読んでほしい方】
前提:BtoBのサブスク型事業に関わっている方
・サブスクリプション事業(以下、サブスク事業)を行っているセールス組織(インサイドセールス(IS)/フィールスセールス(FS)/カスタマーサクセス(CS)等)の方
・セールス組織をマネジメントしている方
・自社サービスの解約率を抑えたいと思っている方 等々
《冒頭》
今まで、複数のサブスク型の事業や営業組織を見てきましたが、多くの企業で設計されている目標値は「リード数」や「商談数」、「受注(獲得)率」「単価」といった「まずは売る」ための指標が大半でした。
当然、その指標で評価されるのは「アポ数を大量に獲得するインサイドセールス(以下IS)」「とにかく売ってくるフィールドセールス(以下FS)」「アップセルが得意なカスタマーサクセス(以下CS)」といった方々です。
このような方が評価されるべきではないとは思いませんが、本当に上記指標だけで評価をすべきなのか疑問でした。今回は、その点について書いて行きたいと思います。
1.「受注数は多いが解約客が多い営業」と「受注数は普通だが、解約客が少ない営業」はどちらが評価されるべきか?
この質問をすると、サブスク事業をやっている方は、後者と答える方も多いかと思います(個人の受注率や単価にもよるかと思いますが)。ただ実際に多くの組織で評価されているのは前者の方だと思います。
これはIS組織でも似たように「(獲得した顧客に関わらず)商談数を多く獲得するIS」が評価されている傾向があります。
※CSの場合、継続率など一定顧客満足が反映される指標がありますので、一概に言えないかと思います。
いわずもがな、サブスク事業において、継続率は非常に重要な指標です。新規で獲得する顧客よりも、一度解約してしまった顧客を再度受注するほうが数倍の労力がかかります。更に、一度「使えない」と感じた顧客から口コミ等によって拡散され、企業やプロダクトのブランド毀損にもつながります。
極端なことを言いますと、解約率が多い手法は、焼畑のように、将来大きく役に立てる顧客まで潰しかねないので、企業にとってもマイナスになると思ってます。
2.LTVを踏まえた指標作成はできるのか?
ではなぜ、解約率やLTVを踏まえた評価や指標作成がされないのか。その理由の一つに「数値データを取得するためにかかる期間が長いから」だと思われます。
BtoBのサブスク事業の大半は、契約期間が半年や1年といった長期になりがちです。そのため、解約率の結果がでるのは受注してから1年後だったりします。1年後に「このFSが売ってくる顧客は解約する」という数値が出ても、評価に反映することは難しいと思われます。
※組織体系やプロダクトが日々変わる事業において、1年前の指標で評価されても評価者本人も納得できないと思います。
では本当に指標作成をすることはできないのか?
私個人の考えですと、評価指標にできなくとも、最低でも目標指標やルール化することは可能だと考えています。
3.LTV最大化は、CSだけが担う役割ではない
Saas企業等で多い組織形態が、The Model型の組織(営業部隊をマーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセス等に分けて運営する仕組み)になっており、解約率(継続率)などLTVに関係する指標を持っているは、主にCSになっています。
では、CSの質を上げればLTVは最大化できるのか?というと、私は違うと思ってます。The Model型組織の肝は「部門間の連携」であり、ISやFSでもLTV向上に貢献することができると考えてます。
4.LTV最大化のためISは何を考えるべきか?
ISは顧客候補となる企業に対して商談を創出してくれる部署です。
よく設定されているKPIは「テレアポ数」や「商談獲得数」など数によっている傾向があります(企業によっては、上記+「獲得した商談価値」や「受注率」などを設定している企業もあります)。
では、なぜ商談を獲得するのか?というと理由は簡単で「売上や利益を創出するため」です。当然ながら、ターゲットでない商談を何件獲得しても無意味で、営業や先方の時間を使っている分、マイナスと捉えることもできます。
もちろん、マーケティング部署にて、ターゲットの絞り込みをしてくれる企業もありますが、マーケティング部署にて、非ターゲットを完全に除外してターゲットだけ集客するのはできないと思ってます。
そんな時、ISに必要なのは「この企業に、自社プロダクトはお役に立てるのか?」を考えることだと思います。そのためにも、アプローチする前に、相手の事業内容や想定課題を調べ、電話し、ヒアリングの上、商談を獲得するのが重要と思ってます。
※具体的な手法は、テキスト量が多くなってしまうので、今回は割愛し、今後、別記事にて記載します。気になる方はフォローお願いします(._.)
5.LTV最大化のためFSは何を考えるべきか?
FSは「新規の受注を獲得する」部署です。
受注した顧客は基本的にはCSにパスすることが多く、受注後の顧客接点は薄くなる傾向にあります(企業によっては、アップセルなどをFSが行うため、継続して顧客接点を持つ企業もありますが…)。
無償で始まるサービス以外、「受注=売上創出」となるので、受注すれば一定評価されるのは良いと思うのですが、記述のように解約顧客ばかり作ってしまうFSがいた場合、誰が困るのか?というと、顧客を引き継ぐCSです。
継続いただく顧客を増やすためには、CSへの円滑な引き継ぎが必要です。そのために必要なことは「顧客のマインドセット」と「顧客の期待値調整」「導入後の支援体制のすり合わせ」だと考えます。
前述のようにISが、しっかりターゲティングやヒアリングまでしてくれた商談に対して、FSがやるべきことは「ツールを入れて終わりではなく、これからがスタートであり、これからが本番であること」と顧客に意識してもらうことだと思います。
※具体的な手法は、テキスト量が多くなってしまうので、今回は割愛し、今後、別記事にて記載します。
私も営業を受ける側として経験がありますが…
「とりあえず1年やってみませんか?」「まずは安いプランから始めませんか」のような「まずはやってみましょう」トークや「簡単に課題が解決できるお手軽ツール」のような説明を受けたことがありますが、このような売り方をするとCSが導入後にクレームを受けるなど、非常に困ります。
◆ツール導入における考え方は、こちらの記事でも一部触れてます。
https://note.com/takataka_/n/ne468502d6620
大半のBtoBサービスにおいて「ツールを入れて終わり」ということは殆どないかと思います。むしろ、導入後の方が労力がかかることが多いです。その意識を持たせないで、「導入後はCSに任せた!」とCSに引き継ぐのは無責任にしか聞こえないかと思われます。
6.LTV最大化のためCSは何を考えるべきか?
最後にLTV最大化の肝となるCSについて記載します。
ISやFSも貢献できるとはいえ、やはりLTV最大化にはCSが重要と言わざる得ないと思います。
そのCSの方に意識いただきたいことは「顧客は自社サービスを入れたかった訳ではなく、課題を解決するために自社サービスを入れた」ことを強く意識することです。
当たり前だ!と言われる方もいるかと思いますが、今まで見てきたCS組織の中には、自社サービスの機能説明や他社事例の紹介がメインとなってしまっていることが多くありました。
CSの役割は「その企業にとって、最適な利用方法を提案し、再現性のある形で定着させ、サクセス(課題解決)させる」ことだと思ってます。他社の事例をいくら伝えたところで、同業他社がやっていることが、そのまま自社でできるとは限りません。
※具体的な手法は、テキスト量が多くなってしまうので、今回は割愛し、今後、別記事にて記載します。
以上です。
今回はテキスト量の問題で、各部門の役割や考え方について、触れただけですが、これから各部門について深堀りしていきたいと思います。
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