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編集所代表。書く人。編む人。「tuesday」共同主宰「HinT table」メンバー 元とびラー(6期) TOP画像:N.S.ハルシャ「ふたたび生まれ、ふたたび死ぬ」(2013年)

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    アートやアートプロジェクト、 アートコミュニケーションやらしきもの。 そんなものたちの感想や妄想や。

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    共同主宰・たかやまのアート・レポートなど *tabloidはメンバー個人が作成するマガジンです。 *マガジントップ画像:齊藤智史氏の“イシキ”より

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今年も仁王像にくつろぎを。

昨年、三好桃加さんの「仁王像たちのオフの日」展に中目黒で出合った。展示は最終日で作品は完売という状況だった。 今回はその2024年バージョンを、表参道に新しくできた「tHE GALLERY OMOTESANDO」の杮落として拝見した。 会期半ばといったタイミングだろうか。一点を残して完売となっていた。 仁王像たちは今年もくつろいでいた。スマホで音楽を聞いたり、狛犬と戯れたり、梅雨時だからだろうか、レインコートを着てたり。 三好さんは在廊されていたが、次々と鑑賞者が三好さ

    • ずり落ちたストッキング。

      公園でサッカーの練習をしていたに違いない。 肩より少し長い髪を後ろでまとめて、上下黒の練習着。ストッキングも黒。 ただ右足のストッキングだけ、くるぶしあたりまでずり落ちている。 少女の少しばかり汗ばんだこめかみに細い髪の毛がへばりついている。 父は「なにか飲む?」と少女に訊く。 頷く彼女。 進行方向を変え、左右に大木が繁る公園の道を自販機の方角に歩き始める。 少女の背丈は父の腰のあたり。 彼女は左手を父の背中に伸ばし、そのTシャツをぐっと掴んだ。 その握りこぶしに向かってTシ

      • その思いが伝わる「私のリサ・ラーソン」展

        実はリサ・ラーソンをはっきりと意識したことはなかった。目つきの悪い?マイキーを、何かのキャラクターだろうといった思い込みをもって横目で眺めていたくらいだ。 なので、この展覧会は家族に誘われて向かったものだ。 が、展覧会として非常に良かった(この会場は、知り合いの家の目と鼻の先だった)。 入口には彼女の作であろう置物が目印として置かれている。階段を上がっていくと、すかさずスタッフに声をかけられた。展示構成の説明と、写真は一点だけなら撮ってよいと告げられる。 何が良かったかと

        • しゃがむ少女。

          いつものように森を走る。西門から入ると、木立に日差しが遮られた森はひんやりとしている。腕にうっすらと浮かび始めた汗を葉擦れの音を奏でる風が乾かしていく。これ以上ないというほどのゆっくりとしたペースで、慣れたコースを流す。デイキャンプ場脇を抜けて、せせらぎのある方面へ。途中、橋をわたって芝生のある広場に向かって上っていく。いつもは犬の散歩グループや子どもたちの賑やかな声がするが、雨上がりということもあって、その日の森は静かだった。前日の雨が落ち葉の下に音を閉じ込めてしまったみた

        今年も仁王像にくつろぎを。

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        記事

          やっと、つながるカレー

          これまでなんとなく視野に入っていた「カレーキャラバン」プロジェクト。 慶応SFCの加藤文俊先生が行っている活動だ。 街に出かけていき、そこで食材を手に入れカレーをつくる。 提供は無償。先生はそこで生まれるアクシデンタルな出合いやコミュニケーションに価値を置いている。その「カレーキャラバン」、よくよく見ると、加藤先生のソロ活動では「カリーキャラバン」となっている。「カレーキャラバン」は無期休業で、「カリーキャラバン」はニュー・シーズンという位置づけらしい。 その「カリーキャラバ

          やっと、つながるカレー

          道草を喰む小さな実践。

          いったいいつ以来だろう。体験型ワークショップに参加してきた。 コロナ禍前、とびラー仲間だったグループで展示するというので、そこに出かけていって、そのとき拝見した別の作家の方のお一人・水野渚さんの「Forage the Poetry:道草を喰う。詩の奏作ワークショップ」というもがそれだ。 どうもよくわからなかったが、ワークショップの開催場所となっているComorisという場にも惹かれて、申し込んだ。 わからないものに身を晒す。その感覚を忘れかけていたので、もう一度、そうした振

          道草を喰む小さな実践。

          地に立つ。それは過去に立脚すること

          衣真一郎さんの個展「積み重なる風景」を拝見した。 衣さんは、一九八七年、群馬県生まれ。東京造形大学絵画専攻を卒業したあと、パリ国立高等美術学校に交換留学を果たす。二〇一六年、東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻を修了された画家だ。 絵のモチーフは、自身の生活の中で見てきたもの、身体的な感覚や記憶が元になっているという。それゆえ、衣さんが生まれ育った群馬の山や畑、田んぼなどの田園風景がベースになっている。 絵の中には古墳や埴輪などが存在していたりする。それらはその地に住む

          地に立つ。それは過去に立脚すること

          暫く振りの「おく」

          かなりの頻度で見てきたパフォーマンスアート「おく」。 久しぶりにギャラリーでやるというので、一人でのこのこ西麻布まで出かけた。狙っていたバスを逃し、JRの駅からとぼとぼ歩いたのはご愛嬌である。 「おく」を実践している「Oku Project」は、板倉諄哉、藤中康輝、金森由晃という同郷の三人が二〇一七年から始めたアートユニット。 「おく」は、本当にただ「物を置く」行為を繰り返す実践。向き合う二人が一五手(←たしか)ずつ、交互に物を置いていく。このことによって、プレーヤーの中

          暫く振りの「おく」

          【文学フリマ東京38】第一ZINEができあがりました@U-37 (第一展示場)

          初出店します。 屋号は「のおそれ人」。 もちこむZINEは新作二作と旧作一作。 新作のうち、一冊が納品されました。 『野を恐れる』(B6 200頁)という往復書簡です。 とびらプロジェクトの先輩・中野未知子さんと 一年に亘って交わした交信の記録です。 装画・装丁は、東京藝術大学美術学部絵画科日本画専攻卒業後、同大学院版画研究室を修了された真鍋由伽子さんにお願いしました。 往復書簡は目次上、季節によって仕切られていて、それぞれこんな見出しがついています。そしてそこに真鍋さん

          【文学フリマ東京38】第一ZINEができあがりました@U-37 (第一展示場)

          【文学フリマ東京38】出店します

          文学フリマ東京38に出店します。 ここ三度ほど、文学フリマ東京に足を運び その面白さにはまってしまったので、 自分でも出てみたくなり とびラー仲間の方をお誘いして 「往復書簡」を引っさげて(鋭意制作中) 出てみることにしました。 すれ違いながらも「大人の事象」を語り続ける 往復書簡。書名は『野を恐れる』。 装画、装丁は東京藝術大学大学院を修了された 若き作家さんにお願いしました。 (FIXしましたら、公開していく予定です) もひとつおまけに、間に合ったら〝ビールZINE〟

          【文学フリマ東京38】出店します

          コマとコマの間に潜み込むもの。

          アートプロジェクトハウス「Open Letter」で開催されている〝最後の手段〟の「NEW首都高」という展示を見に行った。 〝最後の手段〟とは何か。いや、誰か。 〝最後の手段〟は、有坂亜由夢、おいたまい、コハタレンさんの三人が二○一○年に結成したビデオチームだ。手描きのアニメーションと人間や大道具小道具を使ったコマ撮りアニメーションなどを融合させ、有機的に動かす映像作品がその特徴。人々の太古の記憶を呼び覚ますのが狙いだという。 〝最後の手段〟というユニット名は、行き先の定

          コマとコマの間に潜み込むもの。

          解いた周縁に起ち上がるのは線なのか。

          もう随分時間が経ってしまった。鎌倉に三瓶玲奈さんの個展を見にいったのは八月の下旬のことだ。その日は美学者で一般社団法人「哲学のテーブル」代表理事の長谷川祐輔さんと詩人のカニエ・ナハさんを迎えて三瓶さんが語るというトークイベントも用意されていて、一通り画を拝見した後にそこに紛れ込ませていただきもした。 三瓶さんは日頃、まるで修行僧のように線を描くプラクティスをこなしている。手首を固定してスライドした線や、キャスターごと身体を移動させたときの線など、とにかく線を引いている。その

          解いた周縁に起ち上がるのは線なのか。

          映像エスノグラフィーが捉えるもの

           久しぶりに映像エスノグラファーである大橋香奈さんと、大橋さんと同じ慶應義塾大学政策・メディア研究科で学んだジョイス・ラムさんの映像を見に、藤沢アートスペースまで出かけた。大橋さんは、私が何度か書いている〝Home in Tokyo〟のナビゲータを務めた、いわば私の先生のような立場の人だ。ジョイスさんとも〝Home in Tokyo〟で出合っている。 今回は、ジョイスさんの展示がメインで、その特別企画として〝家族を巡る2本の映像上映会〟が催され、そこに大橋さんの作品も掛かった

          映像エスノグラフィーが捉えるもの

          透けているけど、明らかにそこにあるもの。

          川端さんの絵は藝大の学部時代から拝見していて いつもその精緻な鉛筆の表現に驚嘆してきた。 しかしながら、川端さんはただ正確に対象物を描くということではなく 人と人(あるいは対象となるもの)との間に横たわる相互作用の不全を描いている印象がある。 歪んだ(あるいは歪められた)目元。その視線は行く先を失い、 見るものもキャンバス上の人物の目線を捉えることはできない。 やがてその視線が捉えたであろう人物たちが、霞の向こうに現れる。 けっして焦点が合うことはなく、ディテールは定かでは

          透けているけど、明らかにそこにあるもの。

          そこに封じ込められた時代感。

          パナソニック汐留美術館 開館二〇周年記念展 「ジョルジュ・ルオー かたち・色・ハーモニー」 汐留にジョルジュ・ルオーを見に行った。 パナソニック汐留美術館は、開館以来、ルオーの作品を継続的に収集し、 二〇二三年三月時点で二六〇点を所蔵しているそうだ。 今回は、フランスや国内の美術館などから、国内初公開作品含む 初期から晩年までの代表作約七〇点が展示される。 〝かたち・色・ハーモニー〟とは、ルオー自身の言葉。 理想の装飾芸術を目指すうえでのルオー自身が掲げたモットーだという

          そこに封じ込められた時代感。

          測れない距離感の向こう側。

          インスタで開催されていることを知ったムラタ有子さんの展示に伺った。 六本木通りを西麻布方面へ。けっこう歩いたところで、右に折れてすぐ。 ギャラリーサイド2。初めて伺うギャラリー。 ギャラリーには鍵が掛けられていて、インターホンを押して来訪を告げる。 すると二階からギャラリストの島田さんが下りていらして解錠してくれる。 この展示は、新作油彩画一四点と新旧ドローイング六点で構成されている。 ムラタ有子さんを拝見するのは初めてだと告げると、 基本的な情報を的確に伝えていただいた。

          測れない距離感の向こう側。