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編集所代表。書く人。編む人。「tuesday」共同主宰「HinT table」メンバー 元とびラー(6期) TOP画像:N.S.ハルシャ「ふたたび生まれ、ふたたび死ぬ」(2013年)

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    アートやアートプロジェクト、 アートコミュニケーションやらしきもの。 そんなものたちの感想や妄想や。

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    共同主宰・たかやまのアート・レポートなど *tabloidはメンバー個人が作成するマガジンです。 *マガジントップ画像:齊藤智史氏の“イシキ”より

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月は馬のごとく走る

琉球大学人文社会学部在学中の豊永浩平さん(21)の 群像新人賞受賞作品「月ぬ走いや、馬ぬ走い」を「群像2024年6月号」で 読了。 タイトルが読めなかった。ルビは振ってあったが、それもすんなりとは頭に入ってこず、しばらくは字面をビジュアル的に捉えていた。 これは黄金言葉ともいわれる沖縄のことわざだそうだ。 「月ぬ走いや、馬ぬ走い」と読む。 月日は馬が走るがごとく瞬く間に過ぎていくという意味だとある。 この物語では、沖縄の戦後80年ほどの時間が、 いくつものレイヤーで描かれ

    • 〝めんどくさい〟が、おもしろい。

      ずいぶんと前の話になるが、巷で話題の?、気なるカフェに行ってきた。その名も「めんどくさいカフェ」。なにがめんどくさいかというと、自分が飲むコーヒーのために、焙煎からドリップまで、すべてを自分自身で行わなければならないことだ。「ブレンド!」と注文してスポーツ新聞を読んでいればコーヒーが出てくる喫茶店とは違うのだ。しかも無料ではない。 その日は、運動を控えろと繰り返し自治体からプッシュ通知がくる猛暑日。火を使って焙煎するなんてもっての外だ。が、そこは酔狂な好奇心が熱波に勝つ。

      • 夢と交差する視線。

        真鍋由伽子さん 個展『Observe every water droplet』 新宿に用があったので、その足で西荻窪で開催されている真鍋由伽子さんの個展にお邪魔した。ここまで来ると、私の中ではるばる感が満ちてくる。 会場は「ヨロコビtoギャラリー」。はじめて伺う。飲み屋街とは反対方向にのんびり歩く。西荻窪は豊かな街だなぁと思う。生活との距離感がとても良いように思う。暮らしたことはないので、本当のところはよくわからないが。 郵便ポストを目印に右折。ギャラリーがすぐに目に入る

        • また書いて食べた。カリーキャラバン

          また加藤文俊先生の「カリーキャラバン」にお邪魔した。 カレーを食べるためには、前回同様、一五〇文字の作文をその場で書かなければならない。 〝ならない〟と書いたが、実はこの書くという部分を私はけっこう楽しんでいる。なるべく一五〇文字ぴったりに書く。上手くハマると気持ちが良い。 そして今回、ちょっとした理由があって二枚書いた。 それから先生がまとめていた「わたしとカレー」の一号、二号も拝見した。こうして活字になると一五〇文字というのはけっこう短いということがわかる。書いてい

        月は馬のごとく走る

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        記事

          今年も仁王像にくつろぎを。

          昨年、三好桃加さんの「仁王像たちのオフの日」展に中目黒で出合った。展示は最終日で作品は完売という状況だった。 今回はその2024年バージョンを、表参道に新しくできた「tHE GALLERY OMOTESANDO」の杮落として拝見した。 会期半ばといったタイミングだろうか。一点を残して完売となっていた。 仁王像たちは今年もくつろいでいた。スマホで音楽を聞いたり、狛犬と戯れたり、梅雨時だからだろうか、レインコートを着てたり。 三好さんは在廊されていたが、次々と鑑賞者が三好さ

          今年も仁王像にくつろぎを。

          ずり落ちたストッキング。

          公園でサッカーの練習をしていたに違いない。 肩より少し長い髪を後ろでまとめて、上下黒の練習着。ストッキングも黒。 ただ右足のストッキングだけ、くるぶしあたりまでずり落ちている。 少女の少しばかり汗ばんだこめかみに細い髪の毛がへばりついている。 父は「なにか飲む?」と少女に訊く。 頷く彼女。 進行方向を変え、左右に大木が繁る公園の道を自販機の方角に歩き始める。 少女の背丈は父の腰のあたり。 彼女は左手を父の背中に伸ばし、そのTシャツをぐっと掴んだ。 その握りこぶしに向かってTシ

          ずり落ちたストッキング。

          その思いが伝わる「私のリサ・ラーソン」展

          実はリサ・ラーソンをはっきりと意識したことはなかった。目つきの悪い?マイキーを、何かのキャラクターだろうといった思い込みをもって横目で眺めていたくらいだ。 なので、この展覧会は家族に誘われて向かったものだ。 が、展覧会として非常に良かった(この会場は、知り合いの家の目と鼻の先だった)。 入口には彼女の作であろう置物が目印として置かれている。階段を上がっていくと、すかさずスタッフに声をかけられた。展示構成の説明と、写真は一点だけなら撮ってよいと告げられる。 何が良かったかと

          その思いが伝わる「私のリサ・ラーソン」展

          しゃがむ少女。

          いつものように森を走る。西門から入ると、木立に日差しが遮られた森はひんやりとしている。腕にうっすらと浮かび始めた汗を葉擦れの音を奏でる風が乾かしていく。これ以上ないというほどのゆっくりとしたペースで、慣れたコースを流す。デイキャンプ場脇を抜けて、せせらぎのある方面へ。途中、橋をわたって芝生のある広場に向かって上っていく。いつもは犬の散歩グループや子どもたちの賑やかな声がするが、雨上がりということもあって、その日の森は静かだった。前日の雨が落ち葉の下に音を閉じ込めてしまったみた

          しゃがむ少女。

          やっと、つながるカレー

          これまでなんとなく視野に入っていた「カレーキャラバン」プロジェクト。 慶応SFCの加藤文俊先生が行っている活動だ。 街に出かけていき、そこで食材を手に入れカレーをつくる。 提供は無償。先生はそこで生まれるアクシデンタルな出合いやコミュニケーションに価値を置いている。その「カレーキャラバン」、よくよく見ると、加藤先生のソロ活動では「カリーキャラバン」となっている。「カレーキャラバン」は無期休業で、「カリーキャラバン」はニュー・シーズンという位置づけらしい。 その「カリーキャラバ

          やっと、つながるカレー

          道草を喰む小さな実践。

          いったいいつ以来だろう。体験型ワークショップに参加してきた。 コロナ禍前、とびラー仲間だったグループで展示するというので、そこに出かけていって、そのとき拝見した別の作家の方のお一人・水野渚さんの「Forage the Poetry:道草を喰う。詩の奏作ワークショップ」というもがそれだ。 どうもよくわからなかったが、ワークショップの開催場所となっているComorisという場にも惹かれて、申し込んだ。 わからないものに身を晒す。その感覚を忘れかけていたので、もう一度、そうした振

          道草を喰む小さな実践。

          地に立つ。それは過去に立脚すること

          衣真一郎さんの個展「積み重なる風景」を拝見した。 衣さんは、一九八七年、群馬県生まれ。東京造形大学絵画専攻を卒業したあと、パリ国立高等美術学校に交換留学を果たす。二〇一六年、東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻を修了された画家だ。 絵のモチーフは、自身の生活の中で見てきたもの、身体的な感覚や記憶が元になっているという。それゆえ、衣さんが生まれ育った群馬の山や畑、田んぼなどの田園風景がベースになっている。 絵の中には古墳や埴輪などが存在していたりする。それらはその地に住む

          地に立つ。それは過去に立脚すること

          暫く振りの「おく」

          かなりの頻度で見てきたパフォーマンスアート「おく」。 久しぶりにギャラリーでやるというので、一人でのこのこ西麻布まで出かけた。狙っていたバスを逃し、JRの駅からとぼとぼ歩いたのはご愛嬌である。 「おく」を実践している「Oku Project」は、板倉諄哉、藤中康輝、金森由晃という同郷の三人が二〇一七年から始めたアートユニット。 「おく」は、本当にただ「物を置く」行為を繰り返す実践。向き合う二人が一五手(←たしか)ずつ、交互に物を置いていく。このことによって、プレーヤーの中

          暫く振りの「おく」

          【文学フリマ東京38】第一ZINEができあがりました@U-37 (第一展示場)

          初出店します。 屋号は「のおそれ人」。 もちこむZINEは新作二作と旧作一作。 新作のうち、一冊が納品されました。 『野を恐れる』(B6 200頁)という往復書簡です。 とびらプロジェクトの先輩・中野未知子さんと 一年に亘って交わした交信の記録です。 装画・装丁は、東京藝術大学美術学部絵画科日本画専攻卒業後、同大学院版画研究室を修了された真鍋由伽子さんにお願いしました。 往復書簡は目次上、季節によって仕切られていて、それぞれこんな見出しがついています。そしてそこに真鍋さん

          【文学フリマ東京38】第一ZINEができあがりました@U-37 (第一展示場)

          【文学フリマ東京38】出店します

          文学フリマ東京38に出店します。 ここ三度ほど、文学フリマ東京に足を運び その面白さにはまってしまったので、 自分でも出てみたくなり とびラー仲間の方をお誘いして 「往復書簡」を引っさげて(鋭意制作中) 出てみることにしました。 すれ違いながらも「大人の事象」を語り続ける 往復書簡。書名は『野を恐れる』。 装画、装丁は東京藝術大学大学院を修了された 若き作家さんにお願いしました。 (FIXしましたら、公開していく予定です) もひとつおまけに、間に合ったら〝ビールZINE〟

          【文学フリマ東京38】出店します

          コマとコマの間に潜み込むもの。

          アートプロジェクトハウス「Open Letter」で開催されている〝最後の手段〟の「NEW首都高」という展示を見に行った。 〝最後の手段〟とは何か。いや、誰か。 〝最後の手段〟は、有坂亜由夢、おいたまい、コハタレンさんの三人が二○一○年に結成したビデオチームだ。手描きのアニメーションと人間や大道具小道具を使ったコマ撮りアニメーションなどを融合させ、有機的に動かす映像作品がその特徴。人々の太古の記憶を呼び覚ますのが狙いだという。 〝最後の手段〟というユニット名は、行き先の定

          コマとコマの間に潜み込むもの。

          解いた周縁に起ち上がるのは線なのか。

          もう随分時間が経ってしまった。鎌倉に三瓶玲奈さんの個展を見にいったのは八月の下旬のことだ。その日は美学者で一般社団法人「哲学のテーブル」代表理事の長谷川祐輔さんと詩人のカニエ・ナハさんを迎えて三瓶さんが語るというトークイベントも用意されていて、一通り画を拝見した後にそこに紛れ込ませていただきもした。 三瓶さんは日頃、まるで修行僧のように線を描くプラクティスをこなしている。手首を固定してスライドした線や、キャスターごと身体を移動させたときの線など、とにかく線を引いている。その

          解いた周縁に起ち上がるのは線なのか。