記事一覧
第77_部活が好きな人のために思うこと
夏に入るこの時期になると、近年盛んに取り上げられている「部活問題」に対して、「そんな正しいことを言っても実務は、」と思いそうになる。灼熱の下開催される夏の甲子園も問題視されているが、同じく部活動も危惧されている。そんななか読んだとある教師たちの対談書では、「部活動が好きで、今後も続けていきたい人たちにこそ夏の問題に耳を傾けて欲しい」、「部活動を全て無くせばいいと全く思っていない」という多くの生徒
もっとみる第76_戸籍のない日本人たち
学生時代に購入した雑誌に目を奪われる記事があった。記事は、「戸籍のない日本人たち」のタイトルで、相当にどぎついものだ。
私の母も本文で触れられている民法七七二条(摘出推定の規定)に苦しめられてきたひとりだった。とはいえ具体的に聞いたことはないのだが、どうも母の父親、つまり私の本当の祖父が、当時の日本ではあまり受け入れられない種類の人だったらしい。本当の祖父、と書いたのは、その後すぐに離婚をす
第75_頽落する報道、疑念なき得ない
アメリカのキング牧師の暗殺から半世紀が経った。私がキング牧師のことを初めて知ったのは、中学校の英語教科書だったと思う。非暴力運動でアフリカ系アメリカ人の公民権を勝ち取ったキング。彼を扱った当時の授業を思い出しながら、先日、黒崎真「マーティン・ルーサ・キング」というキングの生涯と思想について書かれた本を読んだ。
この本によれば、キングの非暴力運動は単なる無抵抗とは異なり、次のような「戦術」を持っ
第74_劇薬による経済成長
小池の継続が確定したことは、統合型リゾート(IR)の推進が確定したということである。外国人観光客を呼び込むための成長戦略だと語る自民党に世論の非難は勢いを増すが、小池の継続により、野党の散々な対応も制止ができない状況に陥った。
野党は、統合型リゾート設備推進法、通称カジノ法にギャンブル依存症対策の条項を盛り込むことで強制的に採択を容認し、民進党の議員はこれに対し「よくこんなでかい二つを盛り込
第71_死にたければ自分で死ね
2019年5月に発生した「川崎登戸通り魔事件」では、当時51歳の男がスクールバスの停留所で児童や保護者を刺殺した後、自殺した。この事件以降も、東京の京王線の列車内で火をつけ、刃物で乗客を刺した25歳の男が逮捕後「誰でもいいから2人くらい殺して死刑になろうと思った」と供述した。その後も無辜の命を「死にたい」という理由で刺殺する事件が発生している。
当時の大阪知事の「死にたければ自分で死ね」とい
第70_成長と脱成長
久しぶりにみたテレビ、小学生の課題特集があった。大豆の苗を学校から持ち帰った子どもは夏休みを使って大豆を育てるのだという。数日経って発芽し、そこから大豆はみるみると成長した。それを見守る子どもの側もみるみると成長していく。「そんなに急いで成長しなくてもいいんだよ」って思わず言ってしまう。
成長という言葉が持つこのポジティブな含意が、「脱成長」を議論する際に共鳴を阻む要素となっているかもしれな
第69回_働かせる自由の拡大・働く自由の縮小
労働者の破壊が凄まじい勢いで進行している。この20年で労働者の生命と健康と生活を守るための規制や保護が、次々と撤廃された。その変化を一言で言えば、「働かせる自由」の拡大、「働く自由」の縮小である。
企業は、正規雇用を非正規雇用に置き換え、労働条件を切り下げ、労働者をモノのように転売し、文句を言う者は切り捨てた。「働く自由」の縮小は「人権」の縮小に他ならない。働くことは、個人や家族の生計を立て
「小金持ち育成サロン」
はじめに
平素よりお世話になっております。TAKAMIと申します。突然ですが「小金持ちサロン」をローンチすることにしました。今回は具体的なサロンの中身について解説をし、一人でも多くの方に「事業をすることの楽しさ」と「小金持ち」になって人生を謳歌いただけるよう、有益なコンテンツにしたいと考えております。面白い取り組みだと思いますので、最後まで読んでいただければ嬉しいです。*情報の質を価値としたい
第67_disinhibition
英国人作家の本の書評で引用された”disinhibition"という言葉がわからなかった。大英和を引いてもしっくりくる説明がない。あれこれ考え、「抑制解除」という訳語を考えたところで、これが重要な概念であることに気づいた。
第二次安倍政権発足後、関係者の下劣な言動が政権基盤を揺るがすのではなく、逆に大衆的な反応と共鳴しているのに驚いたが、今、それが「抑制解除」であると思い至った。動物はそれぞれ
第65_政治家というも
子ども時代に文化大革命期をくぐり抜けたある中国人研究者から、「日本の政治を見ていると、まるで子どもの遊びのようだ」と言われたことがある。教室での発言一つで友人たちに糾弾され、指示する人を間違えたら排除され、命まで奪われかねないという厳しい時代、いかに本音を出さずに相手の本音を見抜くか、誰が信じられ誰が信じられないか、必死に観察し、孤独に考え、文革時代を生き延びたその研究者は、この度の黒川検事長の
もっとみる第64_無菌状態は健全ではない
子どもの頃、葡萄のぷりぷりとした小粒の実をいくつもほおばっては、もぐもぐと動かして実と種を取り分けた。甘酸っぱさが広がり爽やかな気分になりながら、空に向かってピッピッとザラついた種を飛ばす。あの開放感は、そういえば最近はほとんど味わっていない。品種改良が進んだせいもあろう。そればかりではない。サッシの窓や衛生管理といった「近代的な暮らし」には、種を飛ばすの空間はなくなった。
何もかもが整備され
第62_自由な選択肢
これほどまでに女性の活躍を謳っておきながら、日本という国ほど旧態依然、古い考えに縛られている国も珍しい。
少し前に、ある女性教員が、職場(学校)での旧姓の使用を求めて訴えを起こし、敗訴したというニュースを目にした。女性は、「教員のキャリアでは一貫した性を使いたい」という、至極自然な感情のもと、学校側への訴えを起こしていた。判決は、旧姓の使用を認めないことを「違法な侵害であると評価することがで