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別所隆弘
2019年3月28日 14:54
本屋で『桐島、部活やめるってよ』というタイトルを見た瞬間、思わず手に取った。あまりにも斬新なタイトルの作品が、どんな文章で始まるのかを確認しないではいられなかったのだ。1ページ目を開いたとき、タイトルに引かれた自分の直感が、予想よりはるかに鋭い形で具現化しているのに驚愕した。「え、ガチで?」という冒頭の1行。震えが来たとはこのことだった。それに続く言葉のすべてが、新しい時代の声と抑揚と響きを伴っ
2019年3月21日 12:00
前回、京極夏彦の『姑獲鳥の夏』を題材に、「真実」とは結局何を指すのかという話を展開した。『姑獲鳥の夏』を引き合いに出したのは、2つの理由がある。1つは「全知全能の探偵による断罪」という神聖不可侵な探偵小説のプロットそのものを転覆してその後の多くの探偵小説の流れを変えてしまったこと。真実を人間がうまく把握できない以上、「断罪」など一体誰ができるのか、京極夏彦以後の探偵たちは、本質的な人間の限界を意
2019年3月14日 12:00
真実を写すと書いて「写真」。一方、英語では「photograph」と書かれるこの言葉は、ギリシャ語のphos(光)とgraphein(描くこと)の合成語であり、その原義に近づけて訳すならば「光で描く画」となる。「真実を写し出すもの」としての写真と「光で描かれた画」としての写真。どちらが正しいという不毛な論争を展開したいわけではないが、人間は基本的に「言葉」によって精神も身体も構成される存在である
2019年3月7日 12:00
10年ほど前に公開されたイスラエル映画「戦場でワルツを」の中で、かつて実際にあった心理学実験について語られるシーンがある。こんな実験だ。被験者に子どもの頃の写真を10枚持ってきてもらう。そして後日、その写真のエピソードを語ってもらう。被験者はそれぞれのエピソードを懐かしそうに語る。ところが、10枚のうち最後の1枚が合成写真に差し替えられている。被験者が行ったことも見たこともないはずの場所、例