見出し画像

数奇屋造り

閉じ込めたのよ、座敷牢にさ
あの子を自由にするとね
とっても危険なのよ

こんなに生傷が絶えないとさ
そうするしかないのよね
とっても悲しいけど

水さえあげなったのよ、座敷牢はね
近付くだけで足がすくむくからさ
可哀想だけど仕方ないのよ

こんなに整備されたのに
何処にも見当たらないのよね
あの子が自由に遊び回れる場所は

見失ったのよ、護る対象が何なのか
そもそも何かを護りたかったのか
それすら分からなくなったのよ

情にほだされた挙句自らに枷をかけたのよ
かつて妓楼だったこの数寄屋造りにさ
棲みついたのがいけなかったのよね

座敷牢へと続く回廊に彷徨う
娼妓の遺した数多あまたの怨念と
対峙するしかないのよね

閉じ込めたのはあくまでも急場しのぎなの
あの子だけは死なせたくないから
可哀想だけど仕方ないのよ






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?