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女が嫌い。

女性は、興味のある対象以外を人として見ていない。というのをどこかで見て、なるほどと思ったことがある。
脳の違いだとか、専門的な話になると全く話が出てこなくなっちゃうので、そこはパスで。

感情で動く生き物だと思う、私自身、人との関わりで葛藤する時のカギは感情のコントロール面が多い。気持ちひとつ捉え方ひとつで、物事が一変する事が分かってからはだいぶ楽になった。

幼い頃の連帯感は、なんでも共感することにあった。好きな色、選ぶものも一緒、動線も一緒、ただ主従関係があるので、「ねー。」は輪唱になる。
それだけで平和なのだ。

学生時代は、すごく狭い範囲で。
好きな人がいたとすると、あらゆる下調べをして(仲間に手伝ってもらうなど)自分の近くの女の子に打ち開け、その好きな人の近くにいる人に明かし言伝を頼む。
または、直接告る。
もう狩のようだ。

私にもそれに近いような苦い経験がある。

中学に上がると、みんな色気付いてくる。
運動部の先輩に憧れて、休み時間に追いかけ渡り廊下から中庭でバスケするセンパイを眺めてキャッキャする同級生。を眺めていた私。

同級生は、小学校から繰り上がりなのでみんな知っている仲なのだが、すでに女子の連帯感から嫌気がさしていた私は中学デビューものり遅れ相変わらずだった。知らないうちにグループができていた。

キャッキャする女子は、校則すれすれでスカートを短くしていて、下校時にはその下に何故かジャージのハーフパンツを履く。
机には「LOVE BOAT」と彫っていたりする。同じクラスのおとなしめの男子を、まるでいないみたいに立ち回る。

机に好きな声優の名前をびっちり描くタイプの子は、スカートは購入時の長さのまま。何故か靴下をロールダウンしている。
すごく髪を伸ばしている女子で固まって、お互いを「おぬし!」と呼び、聞き慣れないワードが飛び交っているのを私は聞き逃さなかった。

私といえば、昨日ボキャブラ観た?!ごっつ観た??とガハガハ笑い合う男女混合が居心地が良く、スカートはウエストをまくり上げて少しだけ短く見せた。それを服装検査では定位置に戻せるように。
机には、定時制の人が書いていく落書きがあって、翌日に突っ込みのコメントをする楽しみがあった。
「SEX」と書かれていたときは、初めて返事に、「バーカ」と書いた。自分の机にSEXと書いてあるのも嫌だったけど、自分の机に自らバーカと書くのも嫌だった。

ようやく、私にも憧れのセンパイが出来た。
センパイ目当ての女子は、学校で一番多かったと思う。私も昼休みにはバスケをするセンパイを羨望の眼差しで追いかけていた。サッカー部で、運動神経がよく見た目は日本人離れしていてかっこいい。制服を少し着崩し、鞄がペタンコのちょいヤンキーな可愛らしい彼女がいる。

何かの拍子に小学校から仲の良かったキャッキャ系の女の子に、センパイの事を話した。
それがいけなかった。
彼女の両親は教師で、かたい家に育ち、兄と弟が優秀、彼女が劣等感を抱えているのは、話の端々に染み出ているので気付いていた。
中学生になると家の外では、大いにはっちゃけていた。調子が良く、下っ端の賑やかし。

ある日、その子から、「〇〇センパイが呼んでるよ、チャリ置き場に来て欲しいって。」と言われた。
なるべく控えめにしていたのに、何でだろう。もしかして、なんて、めちゃくちゃ緊張した。

駐輪場に行くと、そこには、センパイと連れと彼女と彼女のツレの4人。
なんか、分かっちゃった。

「シメ会だから、これ。」

開口一番、小林旭口調でセンパイの彼女が言った。腰を基点にして、石を蹴るように歩み寄ってきた彼女の面白さに負けそうになりながら、怯えた。

あまりにも辛かったからか、鮮明に思い出せない。
どうやら、私がセンパイを好きなことを話したあの子が根も葉もつけてチクったようだ。

「俺にはね、〇〇がいるんだよねー。」と、彼女の肩を引き寄せながらセンパイが言った。

ハイ。ハイ…。と言って、ただここから逃げ出すことしか考えられなかった。思考停止。

彼女が、「はぁー?わかったんけ?!」と語気を荒らげながら目の前の自転車を蹴り倒した。

それ、私の自転車じゃなーいなー。

4人から離れた向こうで、チクり魔が困り眉をしながらニタニタしているのが見えた。

その日、どうやって眠りについたのか覚えていない。
それからだ、私の女子の連帯感嫌いが確実なものになったのは。


センパイは、卒業の数ヶ月前に、交通事故で亡くなってしまった。

ドラマかよ、と思った。

恋心はあのシメ会で粉砕されたけど、本当に悪夢だと思った。
白亜の校舎、中庭に眩しく日がさしてる中で軽快にバスケをするセンパイを観ていた日々を思い出して、胸がぎゅうっと締め付けられた。
その日は、朝から全校集会があり校長がセンパイの話をして、みんなで黙祷をした。全校集会が終わり、ぞろぞろと教室に戻るときに、渡り廊下から中庭をふと見ると、人だかりの中心に先輩の彼女がいた。崩れるように泣いているのが分かった。
私は、それを見てシメ会を思い出し、また苦しくなった。

涙は出なかった。私は、もしかしたらみんなと同じく、キャッキャしたかっただけなんじゃないかとも思った。


センパイを見て友達とキャッキャしていた時間は、紛れもなく楽しくて充実していて、あの中庭のように眩しかった。


誰か特定の女が嫌いなんじゃなくて、連帯感のせせこましさが嫌いなんだと思う。

うまくシメられないからまた加筆するかも知れない。

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