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【読書記録#17】「学力」の経済学

 ジュニアサッカーの指導をしています。早くて3歳からサッカーを始める選手もいて有効な子育てに関する方法は何か考えていたときに手に取りました。

・褒めることが良いとされるけど、どんな時に何についてが有効なのか?
・ゲームや動画はやらせない・見させない方がいいのか?
・「勉強しなさい」で学力は上がるのか?

 など、僕も育成に強く関心と疑問をもっていたので本書で紐解くことができました。重要なのが「科学的根拠に基づく」証拠が実験から分かっているということです。

 1つの育成方法が一様に全ての子にあてはまるかというとそうではありません。子どもによっての個性があるからです。しかし、本書で述べているのは、米や欧州、アフリカなどの大規模な実験結果を基に分かった有効な育成方法です。実験結果を基にして、各ご家庭やスポーツチームで応用を効かせることが良いと思います。

 以下メモ書きとして、❶「ご褒美」について・❷「褒める」について を書いてます。

❶「ご褒美」について

①「テストで良い点をとればご褒美をあげます」
②「本を一冊読んだらご褒美をあげます」

 この二つのうち、学力の向上に効果があるのは②です。なぜかというと、行動のしやすさにありました。①はご褒美がわかったとしても具体的な行動が示されず、何をすべきかわかりません。②は具体的な方法がわかるので行動ができます。

 とすれば、①の様に(outputに)ご褒美を与える場合は、方法を具体的に伝え、導いていく先生や先輩の存在がいることが重要になります。

ここで懸念点が生まれます。それは、

「ご褒美」は子どもの勉強する楽しさを失わせてしまうのではないか?

ということです。面白いことにこれが「NO」だったそう。
明確な理由は書いてありませんでしたが、実験した結果、ご褒美をあげたグループとあげなかったグループには、内在的インセンティブに有意な差は見られなかったとあります。

すると、今度はご褒美に「お金」は良いのか?

が問題になります。これについては、
・子どものうちはトロフィーなどお金以外の物がいい。
・中高生には物よりも「お金」が効果的。

だそうです。

お金については悪いと思われるかもしれませんが、「お金」というご褒美と一緒に、貯蓄用の銀行口座をつくったり、家計簿をつけるなど金融教育も同時におこなうと、子どもたちはお金の価値に加えて、貯蓄することの大切さまでも学んでくれると言います。

たしかにこれは学力向上と一石二鳥。僕はとても納得しました。

改めてまとめると、ご褒美について功を奏するのは、アウトプットではなくインプットに対して、遠い将来ではなく近い将来に与えることと言えます。

❷「褒める」について

 「褒めて伸ばしましょう」。よく言われるフレーズですが、全てそのようではありません。例えば、悪い成績をとった学生に対して、「あなたはやればできるのよ」と言ったとしても、実力を伴わないナルシストを育てることになりかねません。

 重要なのは「褒め方」です。具体的には、①「頭がいいのね」と②「よく頑張ったわね」だと、②が効果的です。

 コロンビア大学のミュラー教授が公立小学校を対象におこなった「褒め方」に関する実験があります。子どもたちを2つのグループに分けて3回のテストをさせました。その内容と結果を以下要約させていただきます。

【実験内容】
>テストの1回目、
Aグループのテストの点が良い子には、「あなたは頭が良いのね」と褒めますBグループのテストの点が良い子には、「あなたはよく頑張ったわね」と褒める
>テストの2回目、
1回目のテストと比べて難しい問題を出した。
>テストの3回目、
1回目のテストと同等の問題を出した。
【結果】
 Aグループの子たちは成績を落としたのに対し、Bグループの子たちは、成績を伸ばした。Aグループの子は2回目のテストで「本当は頭が良くないんだ…」と思った。Bグループの子は逆に「がんばったらできるかもしれない」と思った。実際に「頭が良いのね」と褒められた子は、テストでよい点数が取れなかったときに、成績についての嘘をつく傾向が高いと分かった。一方、「よく頑張ったわね」と努力を褒められた子は、悪い成績を取っても、「(能力の問題ではなく)努力が足りないせいだ」と考えた。

 以上から、効果的な褒め方は、<結果や能力を褒めるより、経過や努力を褒めること>が分かります。

 僕たち大人は突き出された結果に対する着眼点が強く、その結果に対するアプローチを自然ととる傾向がありますが、それは逆効果になるんだなと改めて僕も気付きました。

「経過や努力を褒める」

これが大切ですね。また、子どもを褒めるときは、「あなたはやればできるのよ」ではなく、「今日は1時間も勉強できたんだね」「今週は毎日決まった時間に起きれたね」と具体的に子どもが行動した内容を挙げることも重要です。そこに気付ける大人で在りたいです。

◆感想

 「なんとなく、こうしたらいいんじゃないか?」

 育てることをこう漠然と捉えてましたが、科学的根拠の裏付けを基に何をどうしたらいいのか分かってきました。統計があると反映しやすく、何より人間の行動動機までわかるように感じます。

 実際に試したり、経験したりで本書に書いてあることに確実性を感じると思います。まずは「褒め方」から意識していくといいかもしれないと感じます。誰もができることだからです。誰に対しても大切なことですね。

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