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「好きなことを仕事にする」について考える。


お金がいっぱいもらえて、ストレスが少なくて、面白くて、やり甲斐があって・・・。みんながそんな仕事に就けるのであれば、「好きなことを仕事にする」系の自己啓発本が流行ることなんてないだろう。試しに「好きなことを仕事にする」とググったら、ざくざく出てきた。

今ホットなワードなのかもしれないけれど、好きなことを仕事にする云々って今の時代だから発生した主張ではなくて、けっこう昔から誰かが言っていた普遍的なテーマだと思う。いつの時代でも人はやりたい(好きな)仕事があったはずだ。

「好きなことを仕事にする」という言葉は好きだ。「人生を楽しもう」と励まされているような気がする。でも、その耳ざわりの良い言葉に対して、正体不明のモヤモヤが頭のどこかにあって、しばらくそれが何なのかわからなかったのだけど、最近ようやくわかったような気がする。

ひとつの疑問として、すべての人が好きなことを仕事にして生きる世界なんて成立するのだろうか、というのがある。「一億総“好きな仕事”時代」なんてくるのだろうか。AIやロボットが話題になっているが、人がやりたくない仕事を全部AIに任せれば、私たちはみんな好きなことだけで食べて生きていけるようになるのだろうか。「AIの進化で面倒な仕事はなくなる」という未来予測も、実験や資金調達など色々な課題をクリアして、多くの人が働く中小零細企業にまで降りてくるのはだいぶ先の話ではないだろうか。

どうなんだろう。これからどれだけテクノロジーが発達した時代になっても「そんなに好きではない仕事を責任と誇りを持ってやっている人」が、社会をひっそりと支えているような気がする。具体的には言わないけど。

今現在、多くの人が「好きでもない仕事」を我慢してやっている。2017年頃に某メディアが行ったアンケート調査では、好きな仕事に就いている人の割合が30%以下という結果だったらしい。7割の人が好きではない仕事をやって生きているという現実がある。これはなかなか衝撃的な数字だ。

「好きなことを仕事にしよう」と主張している人たちは、本人たちがそれを実現できているから説得力はある。「そんなつまらない仕事やめて私みたいに自由に好きなことをやればいい」という言葉を真に受けて、みんなが、その「つまらない仕事」を一斉にやめて自分探しを始めたら経済は回るだろうか。まあ、みんなが同時に動き出すことなんてありえないし、本当に行動にうつす人なんて稀だとは思う。

どういう表現が正しいだろう。好きなことを仕事にして生きていける人の定員には、どうやら限りがあるような気がする。そのへんのことを考えると、「好きなことを仕事にしよう」という言葉に対して、「信じる者・先に動いた者だけが救われる」的な、ある種の無責任さを感じて、そこに自分はモヤモヤしていたのだと思った。

まあ、それはそれとして。

憧れの仕事に運よく転職したり、好きなことで起業したりできればいいけれど、自分の思うようにうまく進まない場合の方が多いかもしれない。そんな時、どうすればいいのかについて考えてみることにする。

会社をやめずに自分が今いる環境で「好き」を探すとしたら。たまたま内定をもらえた会社で、毎日やりたくもない仕事を生活のためだけに嫌々やっているとする。その仕事を頑張って続ければそのうちやり甲斐が見えてきて、いつか夢中になれるかもしれないと思うかもしれない。これって「好きなことを仕事にする」ではなく「好きじゃない仕事がだんだん好きになってくる」未来に期待するってことだ。それはそれでなかなかの博打だけど、ポジティブな働き方ではあると思う。

個人的な意見で言えば、「好きなことを仕事にする」を目ざすのであれば、「好き」の分母を増やしておくことが大切ではないかと。いつか羽ばたくその時のために、今の環境で「好き」の準備をしておく。要は、「好き」を一つにしぼらず、いっぱい持つことで、選択肢やアイデアも広がって「好きなことを仕事にする」可能性は上がるはず。

最後に、面白法人カヤックの柳澤社長の言葉を紹介しておこうと思う。自分が大好きな言葉だ。

「アイデアが多い人は深刻にならない」



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