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財布を新調する日、息子が泣いた。(1339文字)



いきなりですが、財布ってどのくらいの頻度で買い替えますか?
先日わたしは5、6年ぶりに財布を新調しました。


「今までずっとそばにいてくれたんだねぇ。がんばってくれたんだね」
私がいそいそと旧から新に中身を移していると息子いった。

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「財布さん今までありがとう」
なんとなく、メッセージをかき、書いた紙で財布さんの体をくるんだ。
そしたらメッセージをじっと見つめる息子の目からどんどん涙があふれてきた。
財布の気持ちになったのか、財布の所持者の気持ちになったのかはわからないけれど、とにかく泣いていた。

子どもってつくづく、ふんだんな発想力と豊かさで満ちている。


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父の日にはおみくじつきの手紙をつくって夫をいやし、
「節約」をいう概念を知った日には、電気代を節約しようと真っ暗なトイレに入る。(息子のトイレタイムは多く見積もっても、10秒)

わたしが息子の似顔絵を描くと、ゴリラのような自分の似顔絵をじっとみて、
「お母さんはどんな気持ちで書いたの?」と聞く。
かわいいなぁと思いながら書いた、と答えると、
「じゃあ絵は大成功だよ!」と励ます。

夫が仕事で遅い日には突然ポエマーと化した。

~だれのせいでもない~
お父さんのせいでもないし、社長のせいでもない。
納豆のせいでもないし、猫のせいでもない。
ぽつんぽつんと向こうに人がみえる。
その人のせいでもない。


そんな息子のふかふかで滑らかな心の栄養素となっている一つは本だろう。
 2、3歳のころから毎晩本を一緒に読む。
少なくとも平均で毎日1冊読んでいる見積もりでも、今までに2000冊は二人で読んできた計算になる。
教育なんて目的は微塵もなく、子どもと遊ぶのが苦手だった自分が楽しんでできる貴重なアクティビティの一つ。

東京子ども図書館(*)編の発行するおはなしのろうそくに、こんな言葉があった。

幼い日に耳からはいったお話は、それを語ってくれた人の声とぬくもり、子どもたちがそれを聞きながら思い浮かべたイメージと共に、一生その子の中にとどまります。お話は、おとなが子どもにおくることのできる、いちばんいのちの長い贈りものだと思います。

(*)1974年設立された、東京にある児童書専門の私設図書館。
石井桃子、土屋滋子、松岡享子がそれぞれ運営していた個人文庫が母体。


ただやりたくてやっていたいままでの本読みが、なんだかとても素敵なことに思えてくる言葉だった。



向こうにほとんど進んでいないゆっくり歩きの親子がいる。
追いついてみると、なぜ遅いかがわかった。
その子はゆっくり静歩行と動歩行を繰り返す、二足歩行のロボットのまねをして歩いていたのだった。
 可愛くて、ずっと後ろからみていたいけれど、みていたら怪しい。追い越してしまうのが惜しいけれど、追いこす。
我慢できなくて振り返ると、その子はまだロボットだった。


すたすた歩くとなんてことない道も、ロボットみたいに歩いてみるときっと愉快なんだろう。
そして、この愉快なロボットさんの亀の様な歩行ペースにあわせ、辛抱強くみまもるお母さまにアッパレ!

ところで、動きの遅いものの代表の亀。
亀って実際は猛スピードで進む。
飼っているとき、一瞬でも目を離すとすぐ脱走し、壁に突進していた。

今度からは遅いものを例えるときには、モグラやナマケモノを使おう。





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