弁護士 本橋たえ子

日本・中国知財法を得意とする弁護士です。東大リケジョ→ソニー知財部(弁理士)→弁護士へ…

弁護士 本橋たえ子

日本・中国知財法を得意とする弁護士です。東大リケジョ→ソニー知財部(弁理士)→弁護士へ。そして渡中。気づけば知財業界歴15年。経産省HP掲載「中国における営業秘密管理マニュアル」等、中国特許・営業秘密関連著作多数。どこにいても、知財の側面から、日本の会社、技術者を応援したい!!

最近の記事

【知財管理技能士の方へ】7/19(金)キャリアアップ研修+懇親会(中国知財)

7月19日(金)18:30~、知的財産管理技能士会の以下のセミナーに登壇します! 第61回キャリアアップ研修「中国・知的財産セミナー」 https://www.ip-ginoushikai.org/seminar61st セミナーは以下の2部構成 第1部:「中国ビジネスで知っておきたい知財リスク」 第2部:「日本と中国の比較でみる 営業秘密と競業避止に関する法律実務」 で、私が第1部、第2部は、私と同期で中国労働法に強い五十嵐弁護士が担当します。 実は、五十嵐くんは、司

    • 【増補・改訂版リリース】中国における営業秘密管理マニュアル

      初版に引き続き執筆させて頂きました「中国における営業秘密管理マニュアル」の増補改訂版が経産省のHPにアップされました! https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/outreach_r5_china.pdf 初版以降、関連する司法解釈などが改正されたことなどが改訂の主な理由ですが、これを機に、取り上げる判例や事例なども全て見直して入れ替えるなど、ほぼすべての内容を大なり小なりアップデートしました。 これ

      • 【論考】中国におけるSEP規制の動きとその背景

        日本ライセンス協会さまのご依頼で、 「中国における標準必須特許に対する法規制の動きとその背景-携帯端末とICV 実装をめぐる状況からの一考察-」(←我ながらタイトル長い・・・) と題する論考を、季刊誌「LES JAPAN NEWS」の2024年3月号に寄稿させて頂きましたので、こちらにも貼っておきたいと思います。 中国における近年のSEP(標準必須特許)規制について、司法・立法・行政の3つの側面から概説するとともに、その背景について、報道レベルのものもありますが、自分で調べ

        • 意匠権か、著作権か。-中国における応用美術-

          1.中国における「応用美術」の考え方 4月26日、東京都知財総合センターで、中国をメインに、海外知財についてお話します。 弁護士が伝授!外国知財対応のプランB~合わせて知っておきたい助成金~(Webセミナー) 今回は、実用新案権、意匠権、著作権(また、出願ではないですが、冒認商標の取消等もお話します。)に焦点を当て、中小企業が、実際の製品において何をどの権利によってどう保護すべきなのか、実際の活用・対応事例などの具体例に即して、分かりやすくお話していきます。 このような

        【知財管理技能士の方へ】7/19(金)キャリアアップ研修+懇親会(中国知財)

          【無料セミナー】中小企業のための海外知財戦略-外国知財対応のプランB-

          2024年4月26日(金)14時~17時、東京都知的財産総合センター主催のセミナー 弁護士が伝授!外国知財対応のプランB~合わせて知っておきたい助成金~ に登壇します! セミナーの概要本セミナーは、東京都の中小企業の方を対象に、既に海外で事業展開をされてる企業の方、または、これから海外に進出することを考えている企業の方向けに、自社の技術や商品、ブランドを海外(特に中国)で保護するために、どの知的財産を使って、どのように保護していくか、について、実際の事例やデータを踏まえてお

          【無料セミナー】中小企業のための海外知財戦略-外国知財対応のプランB-

          旧日立金属事件など/(中国)最高人民法院知財法廷5周年典型事例に

          一昨日、2月22日付で、中国の最高人民法院で知財事件を専門に審理する知的財産権法廷から、「最高人民法院知的財産権法廷設立5周年100件の典型事例」が発表されました。 1.知的財産権法廷とは 知的財産権法廷は、2019年に設立され、これまで技術がらみの事件の第二審の審理を担当してきました。それにより、この5年間で、下級審も含めて全体的に、特許権侵害等の技術関連事件の審理水準が向上してきたという印象を私は受けています。 もっとも、設立当初は、特許権、実用新案権、営業秘密侵害訴

          旧日立金属事件など/(中国)最高人民法院知財法廷5周年典型事例に

          信義則違反で特許が無効になる?

          先日、クライアント様からご質問を頂きました。 Q:「今度から、中国では信義則違反で特許が無効にされると聞いたのですが、本当ですか?」 A:「はい、本当です。」 これは、昨年の12月に改正された、「専利法実施細則」に関するご質問ですね。 信義則違反については、実施細則11条に新たに規定されました。 この規定は、実施細則50条、59条、69条で引用されることにより、初歩審査の対象となるほか、拒絶理由、無効理由にも該当することになります。したがって、「信義則違反で特許が無効に

          信義則違反で特許が無効になる?

          こっそり改正。職務発明報酬の法定基準額(中国専利法実施細則)

          先週、12月21日付で、中国の改正専利法実施細則が公布されました。施行は、2024年1月20日からとなります。 1.専利法実施細則の位置づけちなみに、中国では、特許+実用新案+意匠の3つの権利をまとめて「専利権」と称し、この3つがまとめて1つの「専利法」に規定されています。 そして、この専利法に関しては、 ①最高人民法院が、主に権利解釈などを含めたエンフォースメント関連で具体的な解釈基準を示した各種の「司法解釈」 ②日本でいうなら、特許庁が出してる審査基準に相当する「専利

          こっそり改正。職務発明報酬の法定基準額(中国専利法実施細則)

          禁反言の適用についての補足-中外製薬事件の概要-

          11月28日、日本知的財産協会にて、「中国専利権侵害の理論と実務」についてのお話をさせて頂きました。ご参加くださった皆様、ありがとうございました! また、当日、頂いたご質問につきましては、11月29日に、ご質問者の方に直接、メールにて回答をお送りしております。万一、「質問したけど回答が来ていない!」という方がいらっしゃいましたら、知財協会の事務局にご一報ください。 さて、今回は、後半の他者権利対策パートで、均等と禁反言について詳しくご説明させて頂きました。もちろん、これは自

          禁反言の適用についての補足-中外製薬事件の概要-

          日本企業の中国特許訴訟の状況

          11月28日、日本知的財産協会のライブ配信で、中国におけるエンフォースメントとFTOプロセスの実務についてお話させて頂きます。 「理論と実務」というタイトルですが、理論、つまり、法規定や判例等についてお話する場合、私は、あくまで、実務に役立つ理論をピックアップするように心がけています。 そして、実務上、押さえておくべき論点として、何を取り上げるかの参考にしているのが、日本企業の中国における特許訴訟の状況です。 トータル件数や勝敗件数などの統計的なデータであれば、既に提供され

          日本企業の中国特許訴訟の状況

          知財権濫用についての中国独禁法の新規定

          昨日、市場監督管理総局から、「知的財産権の濫用による競争の排除、制限行為の禁止に関する規定」が公布されました。施行は、8月1日からになります。 独禁法をベースとした知財権濫用に対するガイドライン的な規定の検討作業が開始されたのは2009年。策定の過程では、ファーウェイ等の国内企業のほか、クアルコム、サムスンなどの国外企業からも意見を聴取する形で進められ、2015年に、国家工商行政管理総局(当時)から今回の規定と同名の規定が公布されていました(2020年に国務院の機構改革に伴

          知財権濫用についての中国独禁法の新規定

          知財弁護士としてのプロフィール

          私が大切にしている思い私は日本でも、弁理士、弁護士として業務をしていたのですが、中国に渡ったことで、むしろ日本との接点が広がり、かつ深まりました。 日本で働いていた時は、自分が属していた企業もそうでしたし、弁護士になってからも、大企業の案件を対応することがほとんどでしたが、中国にわたって、知財権侵害や営業秘密管理体制支援において、大企業のみならず、地方の中小企業の方とお仕事させて頂くことが圧倒的に増えたのです。 そうした中で、私が本当に毎回のように感嘆し、敬意を払わずには

          知財弁護士としてのプロフィール

          【続報】和解?ー日立金属事件(中国訴訟)

          以下の記事で紹介した日立金属の事件ですが、 その後、ある中国の大学教授の講演を聞く機会があり、その先生が、上記事件は、和解したようだ、とお話されていました。 早速、調べてみたのですが、公開裁判データからは、上記の事実を確認することはできず、私が事実としてお話しできるのは以上の部分だけ、つまり、「本件は和解で終結したとの情報が中国にある」、ということだけで、和解の内容も分かりません。 上記記事でも書きましたように、本件は、一審判決後(判決内容は上記記事に張り付けています)

          【続報】和解?ー日立金属事件(中国訴訟)

          中国の特許権侵害訴訟における損害賠償額の算定

          はじめに昨年の11月、日本ライセンス協会のご依頼で、「中国専利権侵害訴訟における損害賠償額の算定」というタイトルの論文を執筆致しましたので、こちらに張り付けておきます。 中国において、特許権・実用新案権・意匠権(これらの3つの権利を「専利権」と総称します。)の侵害訴訟の提起を考える日本企業の方のご参考になれば幸いです。 要旨長いので、簡単にポイントをまとめておくと、 ■専利法の規定上、①権利者損害、②侵害者利益、③ライセンス料の倍数をベースとする損害賠償請求が可能であるが

          中国の特許権侵害訴訟における損害賠償額の算定

          業務提携相手により出願された、改良発明に係る専利権帰属—2023最高人民法院知識産権法廷20の典型判例より

          はじめにここでは、2023年4月に最高人民法院から発表された、知財事件を専門に扱う最高人民法院の法廷―知識産権法廷が担当した事例の中から選出された、20の典型判例の中の1つ、(2020)最高法知民終1652号を取り上げ、事案の概要と、実務上の留意点について説明したいと思います。 事案の概要・本件は、原審原告(X)が、原審被告(Y)が行った実用新案権出願はXの図面に記載の技術をベースとしており、Xにその権利が帰属するとして、その確認を求めた訴訟である。 ・Xは、石炭ガス化に係

          業務提携相手により出願された、改良発明に係る専利権帰属—2023最高人民法院知識産権法廷20の典型判例より

          ちょっと笑った知財事件—中国2022年度知的財産権行政保護典型事例より―

          今年もこの季節毎年、中国では、4月になると、各所から、典型事例の発表があります。例えば、最高人民法院(最高裁に相当)からは、①「中国裁判所十大知的財産権事件及び50の典型知的財産権事例」が、知識産権局(特許庁に相当)からは、②「知的財産権行政保護典型事例」や③「専利覆審無効十大事件」が発表されます。 平たく言えば、①は、前年度の知的財産権に関する民事・行政・刑事訴訟判決の中から、②は、前年度に知識産権局で扱った知的財産権の行政紛争に関する裁決等の中から、③は前年度の無効審判

          ちょっと笑った知財事件—中国2022年度知的財産権行政保護典型事例より―