弁護士 本橋たえ子

日本・中国知財法を得意とする弁護士です。東大リケジョ→ソニー知財部(弁理士)→弁護士へ…

弁護士 本橋たえ子

日本・中国知財法を得意とする弁護士です。東大リケジョ→ソニー知財部(弁理士)→弁護士へ。そして渡中。気づけば知財業界歴15年。経産省HP掲載「中国における営業秘密管理マニュアル」等、中国特許・営業秘密関連著作多数。どこにいても、知財の側面から、日本の会社、技術者を応援したい!!

最近の記事

意匠権か、著作権か。-中国における応用美術-

1.中国における「応用美術」の考え方 4月26日、東京都知財総合センターで、中国をメインに、海外知財についてお話します。 弁護士が伝授!外国知財対応のプランB~合わせて知っておきたい助成金~(Webセミナー) 今回は、実用新案権、意匠権、著作権(また、出願ではないですが、冒認商標の取消等もお話します。)に焦点を当て、中小企業が、実際の製品において何をどの権利によってどう保護すべきなのか、実際の活用・対応事例などの具体例に即して、分かりやすくお話していきます。 このような

    • 【無料セミナー】中小企業のための海外知財戦略-外国知財対応のプランB-

      2024年4月26日(金)14時~17時、東京都知的財産総合センター主催のセミナー 弁護士が伝授!外国知財対応のプランB~合わせて知っておきたい助成金~ に登壇します! セミナーの概要本セミナーは、東京都の中小企業の方を対象に、既に海外で事業展開をされてる企業の方、または、これから海外に進出することを考えている企業の方向けに、自社の技術や商品、ブランドを海外(特に中国)で保護するために、どの知的財産を使って、どのように保護していくか、について、実際の事例やデータを踏まえてお

      • 旧日立金属事件など/(中国)最高人民法院知財法廷5周年典型事例に

        一昨日、2月22日付で、中国の最高人民法院で知財事件を専門に審理する知的財産権法廷から、「最高人民法院知的財産権法廷設立5周年100件の典型事例」が発表されました。 1.知的財産権法廷とは 知的財産権法廷は、2019年に設立され、これまで技術がらみの事件の第二審の審理を担当してきました。それにより、この5年間で、下級審も含めて全体的に、特許権侵害等の技術関連事件の審理水準が向上してきたという印象を私は受けています。 もっとも、設立当初は、特許権、実用新案権、営業秘密侵害訴

        • 信義則違反で特許が無効になる?

          先日、クライアント様からご質問を頂きました。 Q:「今度から、中国では信義則違反で特許が無効にされると聞いたのですが、本当ですか?」 A:「はい、本当です。」 これは、昨年の12月に改正された、「専利法実施細則」に関するご質問ですね。 信義則違反については、実施細則11条に新たに規定されました。 この規定は、実施細則50条、59条、69条で引用されることにより、初歩審査の対象となるほか、拒絶理由、無効理由にも該当することになります。したがって、「信義則違反で特許が無効に

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          こっそり改正。職務発明報酬の法定基準額(中国専利法実施細則)

          先週、12月21日付で、中国の改正専利法実施細則が公布されました。施行は、2024年1月20日からとなります。 1.専利法実施細則の位置づけちなみに、中国では、特許+実用新案+意匠の3つの権利をまとめて「専利権」と称し、この3つがまとめて1つの「専利法」に規定されています。 そして、この専利法に関しては、 ①最高人民法院が、主に権利解釈などを含めたエンフォースメント関連で具体的な解釈基準を示した各種の「司法解釈」 ②日本でいうなら、特許庁が出してる審査基準に相当する「専利

          こっそり改正。職務発明報酬の法定基準額(中国専利法実施細則)

          禁反言の適用についての補足-中外製薬事件の概要-

          11月28日、日本知的財産協会にて、「中国専利権侵害の理論と実務」についてのお話をさせて頂きました。ご参加くださった皆様、ありがとうございました! また、当日、頂いたご質問につきましては、11月29日に、ご質問者の方に直接、メールにて回答をお送りしております。万一、「質問したけど回答が来ていない!」という方がいらっしゃいましたら、知財協会の事務局にご一報ください。 さて、今回は、後半の他者権利対策パートで、均等と禁反言について詳しくご説明させて頂きました。もちろん、これは自

          禁反言の適用についての補足-中外製薬事件の概要-

          日本企業の中国特許訴訟の状況

          11月28日、日本知的財産協会のライブ配信で、中国におけるエンフォースメントとFTOプロセスの実務についてお話させて頂きます。 「理論と実務」というタイトルですが、理論、つまり、法規定や判例等についてお話する場合、私は、あくまで、実務に役立つ理論をピックアップするように心がけています。 そして、実務上、押さえておくべき論点として、何を取り上げるかの参考にしているのが、日本企業の中国における特許訴訟の状況です。 トータル件数や勝敗件数などの統計的なデータであれば、既に提供され

          日本企業の中国特許訴訟の状況

          知財権濫用についての中国独禁法の新規定

          昨日、市場監督管理総局から、「知的財産権の濫用による競争の排除、制限行為の禁止に関する規定」が公布されました。施行は、8月1日からになります。 独禁法をベースとした知財権濫用に対するガイドライン的な規定の検討作業が開始されたのは2009年。策定の過程では、ファーウェイ等の国内企業のほか、クアルコム、サムスンなどの国外企業からも意見を聴取する形で進められ、2015年に、国家工商行政管理総局(当時)から今回の規定と同名の規定が公布されていました(2020年に国務院の機構改革に伴

          知財権濫用についての中国独禁法の新規定

          知財弁護士としてのプロフィール

          私が大切にしている思い私は日本でも、弁理士、弁護士として業務をしていたのですが、中国に渡ったことで、むしろ日本との接点が広がり、かつ深まりました。 日本で働いていた時は、自分が属していた企業もそうでしたし、弁護士になってからも、大企業の案件を対応することがほとんどでしたが、中国にわたって、知財権侵害や営業秘密管理体制支援において、大企業のみならず、地方の中小企業の方とお仕事させて頂くことが圧倒的に増えたのです。 そうした中で、私が本当に毎回のように感嘆し、敬意を払わずには

          知財弁護士としてのプロフィール

          【続報】和解?ー日立金属事件(中国訴訟)

          以下の記事で紹介した日立金属の事件ですが、 その後、ある中国の大学教授の講演を聞く機会があり、その先生が、上記事件は、和解したようだ、とお話されていました。 早速、調べてみたのですが、公開裁判データからは、上記の事実を確認することはできず、私が事実としてお話しできるのは以上の部分だけ、つまり、「本件は和解で終結したとの情報が中国にある」、ということだけで、和解の内容も分かりません。 上記記事でも書きましたように、本件は、一審判決後(判決内容は上記記事に張り付けています)

          【続報】和解?ー日立金属事件(中国訴訟)

          中国の特許権侵害訴訟における損害賠償額の算定

          はじめに昨年の11月、日本ライセンス協会のご依頼で、「中国専利権侵害訴訟における損害賠償額の算定」というタイトルの論文を執筆致しましたので、こちらに張り付けておきます。 中国において、特許権・実用新案権・意匠権(これらの3つの権利を「専利権」と総称します。)の侵害訴訟の提起を考える日本企業の方のご参考になれば幸いです。 要旨長いので、簡単にポイントをまとめておくと、 ■専利法の規定上、①権利者損害、②侵害者利益、③ライセンス料の倍数をベースとする損害賠償請求が可能であるが

          中国の特許権侵害訴訟における損害賠償額の算定

          業務提携相手により出願された、改良発明に係る専利権帰属—2023最高人民法院知識産権法廷20の典型判例より

          はじめにここでは、2023年4月に最高人民法院から発表された、知財事件を専門に扱う最高人民法院の法廷―知識産権法廷が担当した事例の中から選出された、20の典型判例の中の1つ、(2020)最高法知民終1652号を取り上げ、事案の概要と、実務上の留意点について説明したいと思います。 事案の概要・本件は、原審原告(X)が、原審被告(Y)が行った実用新案権出願はXの図面に記載の技術をベースとしており、Xにその権利が帰属するとして、その確認を求めた訴訟である。 ・Xは、石炭ガス化に係

          業務提携相手により出願された、改良発明に係る専利権帰属—2023最高人民法院知識産権法廷20の典型判例より

          ちょっと笑った知財事件—中国2022年度知的財産権行政保護典型事例より―

          今年もこの季節毎年、中国では、4月になると、各所から、典型事例の発表があります。例えば、最高人民法院(最高裁に相当)からは、①「中国裁判所十大知的財産権事件及び50の典型知的財産権事例」が、知識産権局(特許庁に相当)からは、②「知的財産権行政保護典型事例」や③「専利覆審無効十大事件」が発表されます。 平たく言えば、①は、前年度の知的財産権に関する民事・行政・刑事訴訟判決の中から、②は、前年度に知識産権局で扱った知的財産権の行政紛争に関する裁決等の中から、③は前年度の無効審判

          ちょっと笑った知財事件—中国2022年度知的財産権行政保護典型事例より―

          スマート農業情報、中国人技術者による不正流出の疑い

          今日、Yahooニュースに以下の記事が掲載されていました。 本件は、日本国内で営業秘密が不正に持ち出されたことが疑われる事案であり、本件のように外国人を含めて、人員採用の際には、秘密情報管理の側面からも、採否や配置等を慎重に検討する必要があることを、改めて認識させられる事例です。 本件は、日本国内での営業秘密漏えいの問題ですので、ニュースとして大きく取り上げられたかと思いますが、中国では、営業秘密侵害の刑事事件等のニュースも日本よりはるかに多いですし、日本の営業秘密は、日

          スマート農業情報、中国人技術者による不正流出の疑い

          SEPをめぐる重大特許権侵害行政事件― ファーウェイvsシャオミ ②

          ①からの続きです。 ■本件の背景事情中国における通信SEPをめぐる紛争は、これまで、外国企業権利者vs中国の端末メーカというパターンがほとんどでした。 しかしながら、スマートフォンなどの通信端末産業における、SEPをめぐるプレーヤー(SEPホルダー及び実施者)の入れ替わりに伴い、このような構図にも変化が生じつつあるようです。 下図は、スマートフォンの世界出荷台数上位5社を示すグラフです。 目立つのが3位以下の変化です。2020年にシェア3位であったファーウェイが米国の

          SEPをめぐる重大特許権侵害行政事件― ファーウェイvsシャオミ ②

          SEPをめぐる重大特許権侵害行政事件― ファーウェイvsシャオミ ①ー

          ■事件の概要 2023年2月24日付で、中国知的財産権報に、新たな重大特許権侵害行政事件の受理が公告されました。公告内容は以下のとおりであり、いずれも、華為技術を中心とするファーウェイグループが小米(シャオミ)に対して、特許権侵害に基づき、行政法執行を申し立てたものです。 公告内容 ■行政法執行と重大専利権侵害行政裁決中国では、特許権侵害に対して、司法ルート(民事訴訟)と行政ルート(行政法執行)の2つの手段を採ることが可能です。 行政法執行は、基本的には、各地の当局に対

          SEPをめぐる重大特許権侵害行政事件― ファーウェイvsシャオミ ①ー