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信義則違反で特許が無効になる?

先日、クライアント様からご質問を頂きました。

Q:「今度から、中国では信義則違反で特許が無効にされると聞いたのですが、本当ですか?」
A:「はい、本当です。」

これは、昨年の12月に改正された、「専利法実施細則」に関するご質問ですね。
信義則違反については、実施細則11条に新たに規定されました。

専利法実施細則11条
専利出願は誠実信用の原則に従わなければならない。各種の専利出願の提
出は、真実の発明創造活動を基礎としなければならず、虚偽を弄してはならない。

この規定は、実施細則50条、59条、69条で引用されることにより、初歩審査の対象となるほか、拒絶理由、無効理由にも該当することになります。したがって、「信義則違反で特許が無効にされる」は、ウソではありません。

しかし、その具体的な判断基準は、実施細則のすぐ後に出された、「専利審査指南(2023)」(2024年1月20日から施行)もあわせて見る必要があって、

専利審査指南 第1部分第1章7.9
発明特許出願が専利法実施細則第11条の規定に適合しているか否かの審査については、「専利出願行為を規範化する規定」を適用する。

であり、この「専利出願行為を規範化する規定」(こちらも2024年1月20日から施行)は、質の低い出願であり、審査負担にもなっているとして、長らく問題視されていた、「非正常出願」をターゲットとした規定ですので、実際にこの規定に基づき、「信義則違反」で特許が無効にされるケースは、日本企業にとっては、あまり考えにくいかと思います。

上記の「専利出願行為を規範化する規定」(こちらも2024年1月20日から施行)には、このような非正常出願が以下のように規定されています。

3条
(1) 出願された複数の専利出願に係る発明の内容が明らかに同一であるか、又は実質的に、異なる発明の特徴及び要素の簡単な組合せにより形成されている場合
(2) 出願された専利出願に、捏造、偽造、変造された発明内容、実験データ、技術的効果が含まれている場合、又は、先行技術若しくは先行意匠の盗用、単純置換、寄せ集めなど、これらに類似する状況の場合
(3)専利出願された発明の内容が、主にコンピュータ技術等を利用してランダムに生成された場合
(4)専利出願された発明が、明らかに技術改良、設計常識に合致せず、又は、改劣、冗長、不必要に請求の範囲を減縮したものである場合
(5) 出願人が実際の研究開発活動なくして複数の専利出願を行い、かつ、合理的に解釈できない場合
(6) 実質的に特定の単位、個人又は住所に関連する複数の専利出願を悪意で分散させ、順次又は異なる地で出願する場合
(7) 不正の目的で専利を出願する権利を譲渡若しくは譲受け、または、発明者、設計者を虚偽変更する場合
(8)誠実信用原則に違反し、専利業務の正常な秩序を乱すその他の非正常専利出願行為。

内容は、2021年の「専利出願行為の規範化に関する弁法」の規定に似ていると思います。

今回の実施細則の改正で、私が真っ先に目についたのは、前記事にも書いた職務発明対価の法定基準額の増加ですが、クライアントさんの目線って、結構違うんだな、と、いつも勉強になります。

上記以外でも、知財法、中国法に関するご質問等あれば、プロフ欄の連絡先までご連絡下さい。

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