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知財権濫用についての中国独禁法の新規定

昨日、市場監督管理総局から、「知的財産権の濫用による競争の排除、制限行為の禁止に関する規定」が公布されました。施行は、8月1日からになります。

独禁法をベースとした知財権濫用に対するガイドライン的な規定の検討作業が開始されたのは2009年。策定の過程では、ファーウェイ等の国内企業のほか、クアルコム、サムスンなどの国外企業からも意見を聴取する形で進められ、2015年に、国家工商行政管理総局(当時)から今回の規定と同名の規定が公布されていました(2020年に国務院の機構改革に伴う若干の改訂あり)。
今回の規定は、実質的にこの規定の改訂にあたります。

独禁法に関しては、2022年の独禁法本体の改正もそうですし、今回の規定を含めて、関連する各種のガイドライン的な規定の整備により、全体的な規制の強化が目立ちます。

今回の公布に先立ち、昨年、草案のパブコメが行われていますが、その際に
は、「標準必須特許等の重点領域」のルールの改善が改訂の柱の1つとして説明されていました。そして、実際、

「市場支配的地位を有する事業者は・・・標準必須特許のライセンス過程において、公平、合理的、無差別原則に違反し、善意の交渉プロセスを経ずに、裁判所その他の関連部門に、関連知的財産権の使用を禁止する判決、裁定又は決定を請求し、ライセンシーに不公平な高価格やその他の不合理な取引条件を受け入れるよう迫る(行為を行い、競争を排除、制限してはならない。)」

との規定が追加され、いわゆる「ホールドアップ」を規制しようとする規定が正面から設けられました(19条3号)。パブコメ版から、表現が若干修正され、また、「裁判所・・・に、・・・判決、・・・を不当に請求し」の「不当に」が削除されたようです。

この辺りも含めて、中国における標準必須特許と独占禁止法などに関して、来月、公正取引委員会の競争政策センターでお話させて頂きます。
標準必須特許については、近年、法制、ガイドライン等の整備が進んでいます。特に5Gに関して、携帯端末とICV(=Intelligent Connected Vehicle。コネクテッドカーのこと)を軸として、業界の動きや海外での紛争、学界の論調などと絡めて立体的にお話させて頂く予定です。私自身、とても楽しみです!


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