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【詩】

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【詩】をまとめたものです。
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記事一覧

【詩】飽きることの余白に立って

気が付いたら 稲刈りが終わっていた イチョウは黄色くなっていた コスモスは揺れていた ススキ…

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【詩】夏休みだった空

田んぼを通るあぜ道の空には積乱雲 その雲の中には龍の形をした稲妻が走って 城が浮かんでいる…

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【詩】変化と輝きの黒

黒から黒へ変わる水曜日 孤独の黒から迷いの黒へ 黒猫の黒から暗転の黒へ 黒い本は過去へ導き …

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【詩】知らず知らず5月の輝き

日に日に小さくなっていく あの山の小さな雪 白く輝く5月の雪 あんなにも冬の残りが小さくな…

【詩】咲いては散って

扉を開けたら 廊下にはソメイヨシノの花びら サイテハチッテ サイテハチッテ 道路沿いにはシ…

【詩】春の雨は

桜はすでに満開らしい 空はグレーでしっとりしている たぶん花びらは濡れているだろう 傘がい…

【詩】1日目の夜

窓から入る明かりは見知らぬ明かり その部屋には見知らぬ余白 自分の選択を握りしめていっしょに座る 空白地の部屋を 自分の持ち物で占領して その空間にあらがう 片付けに力尽き 窓の外は新鮮という異世界 まだ なじんでいない空間 まだ 知らない部屋 まだ 知らないテレビの音が広がって まだ 知らないアナウンサーがニュースを読む 初めての夜を迎えるとき 部屋の闇に押しつぶされそうで 知らない天井に目をつぶる 持ってきた布団だけがあたたかい 明日という未来はどんな顔をしているだ

【詩】春の孤独が染み込んでくる

冬の重みは いろいろなものから守られた 安心のあたたかさ じっと静かに沈む 目をこらして …

【詩】基礎と水平線

いつも海へ行く道は渋滞だった ゆっくり進む道の途中の弁当屋は すごくおいしそうに見えた …

【詩】3月のさようならを抱いてねむる

さようならを言って 朝の空をかける白鳥の あとを追って 3月の風が 残雪に触れてくる 泥とな…

【詩】残雪の旅

片隅で少しずつ小さくなる残雪は 冬の背中のようで 強くなりつつある日差しは 地中へと押し込…

【詩】真夜中に粉雪が舞う

真夜中に粉雪が舞う 街が粉雪で埋まる 全てが時間の結晶で この星の記憶が 細かく小さなかけら…

【詩】放射冷却のオリオン

ひんやりと落ち着いた 1月深夜の部屋の中で 毛布の中で眠りに落ちる 真冬日の凛とした 空気…

【詩】オリオンの加護を5分間だけ

23時のオリオンが真上でまたたくころ 1月の澄んだ冷たさと 静かさの底にある住宅街 三ツ星にいざなわれ オオイヌのシリウス オリオンのベテルギウス コイヌのプロキオン 冬の大三角を見つけたあと オリオンの三ツ星に戻る 1日の終わりに住宅の隙間から見上げた オリオンの輝きは 日常を置き去りにして あの画角だけプラネタリウム その小さな異世界だけを視界に入れて 1月のダイヤのトンネルを通り抜け 意識を飛ばしたあと 玄関の扉の鍵を開ける 日常は元通りに動き出すけれど 5分間だけは