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世界一周307日

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2011年3月10日。ひとりの旅行作家が全く新しいシステムによる世界一周の旅をスタートさせた。巡る先はアジア、ヨーロッパ、アフリカ、北米、南米、オセアニアの世界6大陸。『SUGO…
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2020年5月の記事一覧

note17 : ホーチミン(2011.5.2)

【連載小説 17/100】 6年ぶりにホーチミンを訪れて驚いた。 前回泊まって気に入ったサイゴン川沿いのマジェスティックホテル・サイゴンを目指して空港からタクシーに乗って来ると、リバーサイドから見てその後方に超高層ビルが建っていたのである。 マジェスティックホテルは1925年創業のクラシックなコロニアル様式の建物で、作家の開高健が朝日新聞社の特派員として1964年から翌年にかけて100日間滞在したことを知り、前回の訪問では氏にならって少し長めにこのホテルに滞在して仕事を

note18 : ホーチミン(2011.5.4)

【連載小説 18/100】 旅が進むにつれ、このfacebookを使った連載ブログ形式の「note」が僕の紀行録になってきているような気がするが、PASSPOT社が提供する「SUGO6」という旅行企画のシステムを読者に紹介するミッションが僕にはある。 ちょうど昨夜が「Dice Roll」デーだったので、ホーチミンに続く僕の次なる訪問地と、まだ紹介していなかった「SUGO6」の旅でツーリストに与えられるユニークなシステムについて解説しておこう。 まずは次なるデスティネーシ

note19 : ホーチミン(2011.5.5)

【連載小説 19/100】 昨日「SUGO6」の旅程決定に関するレポートをアップした後、10ヶ月にわたる僕の旅の全ルートをこの「note」でまだ紹介していないことに気付いた。 「Travel Map」というfacebookアプリ上のルート図へのリンクをウォールで紹介してはいたが、この「note」でもテキストにして残しておこう。6大陸を巡る僕の「世界一周」は以下のように設定されている。 【アジア(26都市)】 東京(日本)→ソウル(韓国)→北京→上海(中国)→台北(台湾)

note20 : ホーチミン(2011.5.6)

【連載小説 20/100】 人の集合体である以上、国家もまた“生き物”である。 若ければ元気よく、老いると随所の具合が悪くなる。 ホーチミン滞在でしみじみ感じたのは、ベトナムという国家の“若さ”と相対的な日本の“老い”。 少子高齢化が叫ばれ出したのはいつの頃からだろう? 口では「まだまだ大丈夫」と強がりながら、身体の方はどんどん言う事を聞かなくなる老人に似て、日本という国家は年々着実に元気をなくしているような気がする。 古くは後進国から発展途上国、後発国、新興国…と、ベ

note21 : プノンペン(2011.5.10)

【連載小説 21/100】 現在、カンボジアには年間15万人強の日本人ツーリストが訪れているそうだが、僕が海外へ頻繁に出かけ出した1990年代初頭のことを考えると隔世の感がある。 国民を大虐殺したポル・ポト政権で有名な長き戦乱後のカンボジアで、国連監視のもと停戦・武装解除の監視及び民主化選挙が行われたのが1992年。 その際に日本の自衛隊を平和維持活動(PKO)に派遣するか否かを巡っておおいにもめたのを覚えているが、当時カンボジアはそれほどに危険な地で、民間人が観光に訪れ

note22 : プノンペン(2011.5.13)

【連載小説 22/100】 一攫千金を目指してアンコール遺跡の盗掘を狙う若きフランス人考古学者のクロードと正体不明のドイツ人ペルケン。 かつてインドシナの地に繁栄を誇ったクメール王朝の“王道”をたどる旅は、サイゴン(現ホーチミン)からメコン川を船で遡行し、プノンペンを経てシェムリアップへと続く。 密林の奥深く眠る未知なる遺跡を探索するふたりを待ち受けるのは過酷な熱帯の自然環境と猛暑、原住民の襲撃。 そして“女神の像”を手に入れた彼らが最後に見たものは… フランス人作

note23 : プノンペン(2011.5.14)

【連載小説 23/100】 パソコンを持たずに5日間の旅に出るから、カンボジア後のスケジュールについて出発前に手短に報告しておく。 「SUGO6」の旅の中で2回だけダイスの目を自ら決定できる「Dice Free」のシステムについて「note18」(5/4)で説明し、次の「Dice Roll」デーに権利を行使するつもりであることを表明していたが、無事手続きが完了した。 前回はホーチミンから「3」の目でプノンペンに進み、ミッションで次の都市シェムリアップまで移動することにな

note24 : メコン川(2011.5.19)

【連載小説 24/100】 プノンペンから5日間かけてシェムリアップに着いた。 メコン川とトンレサップ川を遡上する一本道(川)の旅だったから、本来なら「A地点からB地点」への旅なのだが、僕には「A地点からA地点」に戻る循環の旅だった感がある。 どこかに辿り着いたのではなく、元いた場所に帰還したという感覚が強いのは、物理的な移動よりもタイムスリップのような歴史を遡る時間を過ごしたからだろう。 現代文明からしばし遠ざかり、1世紀前のインドシナへの時間旅行を体験して再び現代文

note25 : メコン川(2011.5.21)

【連載小説 25/100】 日本を出て73日目になる。 出発翌日に起きた大震災の模様を異国で映像を通じて見た時「電気を失った被災地は寒いだろうな」と心が痛んだが、早くも日本では真夏日を記録する季節を迎えているようだ。 カンボジアは今日も蒸し暑いが、その中で僕は再び懸念する。 電気の足りない日本はこの夏の暑さを乗り越えられるだろうか? 今回の震災で日本国民が、いや世界中の人々が再考せざるを得なくなったのが原子力に依存してきた電力の未来についてだろう。 実は4月にボルネオ

note26 : シェムリアップ(2011.5.23)

【連載小説 26/100】 昨日、シェムリアップから北東に約40kmの場所にあるバンテアイ・スレイを訪ねた。 外壁が赤い砂岩で作られた美しい遺跡で、「東洋のモナリザ」と呼ばれるデヴァター(女神)像で有名な場所だ。 そして、このデヴァターこそがアンドレ・マルローが自らの盗掘経験をもとに小説『王道』を書いたとされる彫像なのである。 クメール王国の軌跡をプノンペンからシェムリアップを目指す“川の旅”で追った「SUGO6」のオプションツアーは、『王道』の主人公であるフランス人考

note27 : バンコク(2011.5.25)

【連載小説 27/100】 昨日バンコクへ到着して、カオサン通りのゲストハウスに宿をとった。 20年以上前にはじめてタイを訪れた際「カオサン通りへ行けば何でも揃う」と聞いて訪れ、長く滞在したのが昨日のことのようである。 安宿はもちろん、屋台レストラン、カフェ、両替商、旅行代理店…と、今も昔も変わらず何でも入手可能なカオサン通りに滞在し、今回はミャンマー入国のビザを手に入れようとしているからおもしろい。 日本でミャンマーのビザを取得しようとすると手間がかかるようだが、こ

note28: ヤンゴン(2011.5.29)

【連載小説 28/100】 Uncle Tomいわく「見ると聞くとは大違い」を感じるのがミャンマーの旅になるとのことだった。 人の話やメディアから入手する情報と実際に現地を見ての体験では大きな相違があるということだが、ヤンゴンに到着してからは驚きの連続である。 まずはヤンゴン国際空港。 途上国に見られる混沌とした雰囲気を予想して入国したが、ガラス張りのモダンな空港はすっきりしていて、観光客は少ないといいながらホスピタリティ度の高い観光立国を思わせる玄関口だった。 次に

note29: ヤンゴン(2011.5.31)

【連載小説 29/100】 青空を背景にして最も映える色は何か? と問われたら、今の僕は迷うことなくいう「ゴールド」と答える ヤンゴン市街の北、丘の上に輝く聖なる黄金の仏塔群シュエダゴォン・パヤーは紀元前585年が起源と伝わる。 中心にそびえ立つ仏塔は高さが99.4mで約9000枚の金箔が使われ、最頂部にはダイヤやルビー、ヒスイなどの宝石がちりばめられている。 そして、これら全てが信仰心の強いミャンマー仏教徒の善意の寄進によるもというからすごい。 ちょうど金箔の張り替