たーくん。

小説、音楽、ゲームが好き。 色んなものを見て、聞いて、感じて、不思議な世界を作りたい。…

たーくん。

小説、音楽、ゲームが好き。 色んなものを見て、聞いて、感じて、不思議な世界を作りたい。 ショートショートガーデン、エブリスタでも活動してます。

記事一覧

黒幕甲子園

夢の舞台、甲子園。 バッターボックスに立ち、バットを構える。 俺達の高校は甲子園初出場。 なんとしても初勝利を納めたい。 だが、気掛かりなことがある。 ベンチに目を…

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鋭利なチクワ

炎が燃え盛る窯の前で、鍛冶屋のカジはハンマーで勇者のために剣を作っていた。 カンッ!カンッ!カンッ! 剣を叩くハンマーの音は、鍛冶屋の外へ漏れるほど大きい。 カン…

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非情怪談

来たくもなかった高校の修学旅行。 就寝前、怖い話で皆盛り上がっていた。 「お前もなんか話せよ」 頭を叩かれ、僕にも怖い話を話させようとする。 はぁ……仕方ないな。 …

たーくん。
2週間前
11

見たことがないスポーツその2:ジューッ!道

会場の中央には鉄板が置かれている。 コック帽を被った選手達は鉄板の左右端に立ち、お互い礼をした。 会場の客達、実況と解説もヘッドホンを着用している。 試合の音をよ…

たーくん。
3週間前
8

見たことがないスポーツ:未練投げ

元カレ、元カノから貰った思い出の品を砲丸代わりにして投げる未練投げ。 相手の名前を叫びながら投げ、未練を断ち切るのと同時に飛距離を競う競技だ。 「未練タラタラな選…

たーくん。
3週間前
11

2cmアパートメント

ようやく契約までありつけた。 契約者を連れ、やってきたのは人工無人島。 新たな試みとして、入居者を募集していたのだ。 「何もないが、どこにアパートメントがあるのか…

たーくん。
4週間前
4

リベンジトリートメント

今日の雲は黒くて厚い。 大雨が降っていて、最高の復讐日和だ。 メデューサの巣に行くと、奴がいた。 「貴様、何をしにきた?」 女メデューサは俺を睨みつけながら言った。…

たーくん。
4週間前
8

山のポ

毎日降り続ける止まない雨に、村人達は困っていた。 「長老、なんとかならないんですか」 不安が限界に達し、私に訴えてくる村人達。 こうなったら、あれをするしかない。 …

たーくん。
1か月前
5

海のピ

応募者の中から、俺が海のピに選ばれた。 これで水着ギャル達とキャッキャウフフ出来る。 雲一つない土曜日、ピの仕事をする為に海に来た。 浜辺に居たのは水着ギャル達で…

たーくん。
1か月前
7

織姫妖怪

七夕という行事は無くなった。 天の川は崩壊し、地上に星々が落ちて甚大な被害をもたらしたらしい。 彦星は天の川の崩壊を防ごうとしたが、星々と一緒に流されて行方不明に…

たーくん。
1か月前
5

彦星誘拐

七夕当日、天帝は彦星を更にいじめるために誘拐した。 突然誘拐された彦星は天帝に訴える。 「天帝様!なぜ僕を誘拐したのですか!」 「そう怒るな彦星。お前に頼みたいこ…

たーくん。
1か月前
5

一方通行風呂

一方通行と温泉マークが合体した標識。 道は途中で途切れ、湯気を出した長い川が果てしなく続いている。 「マスターの体臭レベルは9です。ここで洗い流すことを推奨します…

たーくん。
1か月前
9

天ぷら不眠 その2

衣が変わってから、眠れなくなってしまった。 てか、なんだこのビチャビチャの衣は。 「親父みたいに上手く揚げれないな……」 天ぷらを揚げていたのは店主ではなく、若造…

たーくん。
1か月前
4

天ぷら不眠 その1

フリマの天ぷらはビトビト油の衣に、ティッシュを噛んでいるような食感だ。 やはり天ぷらは揚げたての黄金の衣に、サクサクの食感じゃないと。 フリマで買ったのは間違いだ…

たーくん。
1か月前
6

復習Tシャツ

好きでもない勉強や習い事をやらされて、友達と遊ばせてくれないし毎日が楽しくない。 「竹内の名に恥じぬよう、これを着て沢山勉強しなさい」 お父さんからTシャツを貰っ…

たーくん。
2か月前
7

友情の総重量

大好きな子とお揃いの服で、外に出るのは気持ちいい。 土曜日ということもあって、遊園地は大勢の人で賑わっていた。 「藍!あれに乗ってみようよ!」 朋子が指を指した先…

たーくん。
2か月前
9

黒幕甲子園

夢の舞台、甲子園。
バッターボックスに立ち、バットを構える。
俺達の高校は甲子園初出場。
なんとしても初勝利を納めたい。
だが、気掛かりなことがある。
ベンチに目をやると、監督と女マネージャーがイチャついていた。
それを見ているチームメイトの顔は、怒りに満ちている。
昨日、監督から言われたことを思い出す。
「キャプテンのお前だけに言っておく。実は、マネージャーはチームメイト全員と関係を持っている。

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鋭利なチクワ

炎が燃え盛る窯の前で、鍛冶屋のカジはハンマーで勇者のために剣を作っていた。
カンッ!カンッ!カンッ!
剣を叩くハンマーの音は、鍛冶屋の外へ漏れるほど大きい。
カンッッッ!!!
そして遂に、カジは今までで最高の剣を作り上げ、すぐに勇者を鍛冶屋に呼んだ。
「勇者よ。遂に剣が完成したぞ。さぁ、持っていくがいい!」
「いやこれ……ちくわだけど」
剣を受け取った勇者は苦笑いしている。
「ちくわではなくチクワ

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非情怪談

来たくもなかった高校の修学旅行。
就寝前、怖い話で皆盛り上がっていた。
「お前もなんか話せよ」
頭を叩かれ、僕にも怖い話を話させようとする。
はぁ……仕方ないな。
「最近の話だけど、夜の小学校で幽霊が出ると噂を聞いて、友達を誘って見に行ったんだ」
「ふーん、で?」
何人かつまらなそうな顔で、僕の話を聞いている。
「廊下を歩いている途中、前を歩いてる友達に指を指して、こいつか?って妹に聞いたら、うん

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見たことがないスポーツその2:ジューッ!道

会場の中央には鉄板が置かれている。
コック帽を被った選手達は鉄板の左右端に立ち、お互い礼をした。
会場の客達、実況と解説もヘッドホンを着用している。
試合の音をよく聞くためらしい。
右側の選手が鉄板に乗せたのは、ステーキ。
ジューッ!
その音を聞いた審判は手を挙げた。
「ステーキ選手一本です!」
「肉が素晴らしい音を奏でてますねぇ!」
実況と解説のコメントに違和感を感じた。
コック帽を被ったのが選

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見たことがないスポーツ:未練投げ

元カレ、元カノから貰った思い出の品を砲丸代わりにして投げる未練投げ。
相手の名前を叫びながら投げ、未練を断ち切るのと同時に飛距離を競う競技だ。
「未練タラタラな選手達は、果たして断ち切ることが出来るのでしょうか!」
なんともいえない実況で競技が始まった。
「ゆいーーー!!!」
男性選手が投げたのは手編みのマフラー。
全く飛ばず、選手の足元に落ちる。
「愛が消えたマフラーでは距離が伸びず!マフラーは

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2cmアパートメント

ようやく契約までありつけた。
契約者を連れ、やってきたのは人工無人島。
新たな試みとして、入居者を募集していたのだ。
「何もないが、どこにアパートメントがあるのかね?」
スーツに高そうな腕時計をつけた小太りの男性。
いかにも、ザ・金持ちって感じだ。
「おっと!足元に気をつけて下さい!踏んでしまいますよ!ここをよーーーーく見て下さい」
俺は地面に向かって指を指す。
契約者は這いつくばりながら地面を見

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リベンジトリートメント

今日の雲は黒くて厚い。
大雨が降っていて、最高の復讐日和だ。
メデューサの巣に行くと、奴がいた。
「貴様、何をしにきた?」
女メデューサは俺を睨みつけながら言った。
「復讐に来た。町の人達や家族を石にした報いを受けてもらう」
「私を倒しても魔王の血を使わない限り、元には戻らないぞ」
「魔王なら先日倒して、血で特効薬を作り皆を元に戻した」
「……勇者ではないお前がか?」
メデューサは目を丸くしながら

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山のポ

毎日降り続ける止まない雨に、村人達は困っていた。
「長老、なんとかならないんですか」
不安が限界に達し、私に訴えてくる村人達。
こうなったら、あれをするしかない。
「この雨は我々人間に対する神の怒りだ。怒りを沈めるために山頂でポをするしかない」
「ポ?なんですかそれは?」
「ポとは文字ではなく、記号だ」
「はい?」
紙にポと書き、村人達に見せて説明する。
「ポの下の部分が焚き火、上が空に向けて腕を

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海のピ

応募者の中から、俺が海のピに選ばれた。
これで水着ギャル達とキャッキャウフフ出来る。
雲一つない土曜日、ピの仕事をする為に海に来た。
浜辺に居たのは水着ギャル達ではなく、爺さん一人。
「あれ?水着ギャル達は?」
「何を言っとるんじゃ。ここの海をPRする為に来たんじゃろ」
「ピってプロデューサーの意味じゃ……」
「違う違う。PRのピじゃ。若者言葉でよく一文字で表現するじゃろ?あれを真似たのじゃよ」

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織姫妖怪

七夕という行事は無くなった。
天の川は崩壊し、地上に星々が落ちて甚大な被害をもたらしたらしい。
彦星は天の川の崩壊を防ごうとしたが、星々と一緒に流されて行方不明になったと聞く。
二百年経った現在、彦星はまだ発見されていない。
こうなった原因は織姫だ。
織姫は天帝を倒すために数百年掛けて魔力を蓄えていた。
彦星と一年に一度だけでなく、ずっと一緒に居るために。
魔力で妖怪に化けた織姫は天帝を倒すことが

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彦星誘拐

七夕当日、天帝は彦星を更にいじめるために誘拐した。
突然誘拐された彦星は天帝に訴える。
「天帝様!なぜ僕を誘拐したのですか!」
「そう怒るな彦星。お前に頼みたいことがあるのだ」
天帝が彦星を連れていった場所は、天界の農場。
雲の芝生と数え切れない程の牛で埋め尽くされている。
「ここの牛の世話を彦星一人でやってもらいたい」
「今日は織姫と会うのに……でも、やらせてください!」
「さすがドMの彦星だ。

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一方通行風呂

一方通行と温泉マークが合体した標識。
道は途中で途切れ、湯気を出した長い川が果てしなく続いている。
「マスターの体臭レベルは9です。ここで洗い流すことを推奨します」
「……入ってくるからここで待ってろ」
口うるさいバイクから降り、川へ向かう途中でロボットに声をかけられる。
「おや、人間じゃないですか」
「この川は温泉なのか?」
「はい、数十年前の大地震で出来た温泉です。とはいっても客はいませんけど

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天ぷら不眠 その2

衣が変わってから、眠れなくなってしまった。
てか、なんだこのビチャビチャの衣は。
「親父みたいに上手く揚げれないな……」
天ぷらを揚げていたのは店主ではなく、若造だった。
店主はどこにいるんだ?
「死んだ親父の為にも頑張らないと……」
最近店主を見ないと思ったらそういうことか。
店はいつも大勢の客がいたが、今では俺だけ。
まぁ、こんな天ぷらじゃ当然か。
ポケットから紙を取り出し、若造に渡す。
「若

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天ぷら不眠 その1

フリマの天ぷらはビトビト油の衣に、ティッシュを噛んでいるような食感だ。
やはり天ぷらは揚げたての黄金の衣に、サクサクの食感じゃないと。
フリマで買ったのは間違いだった。
世間は今、天ぷらが大ブーム。
おかげでスーパーや店では全く買えない。
天ぷらは普段あまり食べないが、テレビで天ぷら特集を見てから毎日食べるようになった。
なんというか、天ぷらに魅了されたというか……。
今思えば、この日から天ぷらブ

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復習Tシャツ

好きでもない勉強や習い事をやらされて、友達と遊ばせてくれないし毎日が楽しくない。
「竹内の名に恥じぬよう、これを着て沢山勉強しなさい」
お父さんからTシャツを貰った。
勉強嫌いのぼくのために作った物らしい。
「高い金を払って作らせたんだ。必ず着るんだぞ」
そう言ってお父さんは部屋から出ていった。
Tシャツを着て勉強や習い事をしていると、嫌でも頭の中に残る。
学校のテストでは全教科百点、習い事のコン

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友情の総重量

大好きな子とお揃いの服で、外に出るのは気持ちいい。
土曜日ということもあって、遊園地は大勢の人で賑わっていた。
「藍!あれに乗ってみようよ!」
朋子が指を指した先には、友情量りと書かれた大きい台。
係員の説明によると、友達と台に乗れば友情を量ることが出来るらしい。
「面白そうだね。乗ってみよっ」
朋子の手を握り、乗ろうとした瞬間、朋子の手にぎゅっと力が入る。
「藍、私達、親友だよね?」
朋子が不安

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