たーくん。

小説、音楽、ゲームが好き。 色んなものを見て、聞いて、感じて、不思議な世界を作りたい。…

たーくん。

小説、音楽、ゲームが好き。 色んなものを見て、聞いて、感じて、不思議な世界を作りたい。 ショートショートガーデン、エブリスタでも活動してます。

最近の記事

ひらめき膝

『うーん』と頭を悩ませながら、次の発明品を考えている研究員達。 ここは、数々の発明品を世に送り出している研究所。 中心となっている人物が、閃博士。 ある日、博士は病気を患って足が不自由になり、車椅子生活になった。 「私は素晴らしい頭脳を持っているから、足が代償になったのだよ。ハッハッハッ!」 研究員達の心配をよそに、博士は悲しむことなく、笑顔で笑い飛ばす。 博士は発明品のアイデアが閃くと、膝が光るように自分で改造した。 動かなくなった足に、少しでも役目を与えたかったのだろう。

    • ときめきビザ

      静を保ち、自分の世界に浸れる図書室。 大学受験に向けて勉強していると、足音が近づいてきた。 「やっほ~!眼鏡っち~!」 ……眼鏡っちって、俺のことか? 視線を上げた先に居たのは、ポニテ女子。 確か、同じクラスだった気がする。 「今勉強中だから邪魔しないでくれ。てか、図書室では静かに」 「眼鏡っち以外誰もいないよ」 「えっ」 「皆キラキラしながらキュンキュンしに行ったよ」 キラキラ?キュンキュン? 「眼鏡っちにもビザ渡しておくね。高校生だけが使えるんだって。じゃあ私達も行こっか

      • タンバリン湿原

        少し肌寒く、足場が悪そうな湿原。 こんな所で魔物と戦いたくない。 前に立ち寄った町で、魔物避け笛を買っておいて正解だった。 これを吹きながら進めば、魔物と戦わなくて済む。 笛を吹きながら湿原に足を踏み入れると、タンッ♪と音が出た。 「勇者さん、ここは歩くたびに音が出るタンバリン湿原と呼ばれています」 仲間の魔法使いが湿原の説明をしてくれた。 魔物に気付かれたら厄介だ、急いで湿原を抜けよう。 ピュ~~~♪ピュ~~~♪ タンッ♪タンッ♪タンッ♪ 笛の音とタンバリンの音が湿原中に鳴

        • モンブラン失言

          空気が食べれそうなほど、甘い匂いがする開店前の店内。 先輩が作った色とりどりのモンブランがショーケースの中に並び、私は思わず目移りしてしまう。 私が作るケーキは先輩に遠く及ばない。 もっとケーキ作りを頑張らないと……。 「モンブランは白い山って意味なのに、こんなのモンブランじゃないよ!」 突然大きい声をあげたのは、同じケーキ屋で働いている白山さん。 「先輩!これが本当のモンブランです!私が作りました!」 白山さんはショーケースに指を指す。 端に、真っ白なモンブランが並んでいた

          入浴委譲

          夏に季節を奪われそうになっている秋。 まだ暑い日が続き、じわじわと汗が出てくる。 日本の人口が昔より百倍近くになり、政府は水不足にならないよう、年に六回しか入浴出来ない法律を作った。 入浴する場所は決まっていて、年始めに入浴チケットが配布される。 とはいえ、銭湯で十万円払えばいつでも入浴可能。 高額過ぎて、金持ちしか銭湯に行っていない。 銭湯へ向かっていると、子供達が外で遊んでいた。 子供達はあまり元気がなく、少し臭う。 俺は子供達に声を掛け、銭湯に連れていくことにした。 銭

          誘惑銀杏

          深夜でも輝いている黄金色の銀杏並木。 時折吹く秋風が、人肌を恋しくさせる。 残業続きで、毎日帰りが遅い。 俺が勤める会社は、いわゆるブラック企業。 長時間労働が原因で精神と身体が壊れる社員が多く、去年は女性社員が自ら命を絶ったと聞く。 会社は職場環境を見直し改善すると言っていたが、何も変わっていない。 人が減る一方で、逃げ遅れた俺達に負荷が増えるばかりだ。 遅くまで仕事の平日、疲労で動けずに終わる休日。 こんな毎日、なにが楽しいのだろうか? いっそのこと、俺も楽に……ん? 一

          ひと夏の人間離れ

          木々が枝を揺らしながら、俺のことを笑っている。 夏の長期連休中、登山に挑戦していたが、帰り道が分からず遭難してしまった。 電波がなく、スマホで位置情報を確認出来ない。 唯一、涼しいのが救いだ。 山で見る四度目の夕日。 とっくに食料と飲み物は尽き、川の水で凌いできたが、腹が減りすぎて力が入らなくなってきた。 このままでは飢え死にしてしまう。 何かないか食べ物を探すと、木の周りに真っ赤なトゲトゲしいキノコが生えていた。 いかにも毒キノコな見た目。 だが、背に腹は代えられない。 覚

          ひと夏の人間離れ

          黒幕甲子園

          夢の舞台、甲子園。 バッターボックスに立ち、バットを構える。 俺達の高校は甲子園初出場。 なんとしても初勝利を納めたい。 だが、気掛かりなことがある。 ベンチに目をやると、監督と女マネージャーがイチャついていた。 それを見ているチームメイトの顔は、怒りに満ちている。 昨日、監督から言われたことを思い出す。 「キャプテンのお前だけに言っておく。実は、マネージャーはチームメイト全員と関係を持っている。チームメイトはマネージャーに良い所を見せようと気合が入り、普段より力を発揮するこ

          鋭利なチクワ

          炎が燃え盛る窯の前で、鍛冶屋のカジはハンマーで勇者のために剣を作っていた。 カンッ!カンッ!カンッ! 剣を叩くハンマーの音は、鍛冶屋の外へ漏れるほど大きい。 カンッッッ!!! そして遂に、カジは今までで最高の剣を作り上げ、すぐに勇者を鍛冶屋に呼んだ。 「勇者よ。遂に剣が完成したぞ。さぁ、持っていくがいい!」 「いやこれ……ちくわだけど」 剣を受け取った勇者は苦笑いしている。 「ちくわではなくチクワだ。見た目とは違い、剣より数十倍の切れ味だぞ。試し斬りしてみてくれ」 「あ、ああ

          鋭利なチクワ

          非情怪談

          来たくもなかった高校の修学旅行。 就寝前、怖い話で皆盛り上がっていた。 「お前もなんか話せよ」 頭を叩かれ、僕にも怖い話を話させようとする。 はぁ……仕方ないな。 「最近の話だけど、夜の小学校で幽霊が出ると噂を聞いて、友達を誘って見に行ったんだ」 「ふーん、で?」 何人かつまらなそうな顔で、僕の話を聞いている。 「廊下を歩いている途中、前を歩いてる友達に指を指して、こいつか?って妹に聞いたら、うんって答えた。友達は「誰と喋ってるんだ?」って聞いてきて……」 「なんで突然妹が出

          見たことがないスポーツその2:ジューッ!道

          会場の中央には鉄板が置かれている。 コック帽を被った選手達は鉄板の左右端に立ち、お互い礼をした。 会場の客達、実況と解説もヘッドホンを着用している。 試合の音をよく聞くためらしい。 右側の選手が鉄板に乗せたのは、ステーキ。 ジューッ! その音を聞いた審判は手を挙げた。 「ステーキ選手一本です!」 「肉が素晴らしい音を奏でてますねぇ!」 実況と解説のコメントに違和感を感じた。 コック帽を被ったのが選手じゃないのかよ!? 続いて左側のコックが鉄板に乗せたのは、ハンバーグ。 ジュー

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          見たことがないスポーツ:未練投げ

          元カレ、元カノから貰った思い出の品を砲丸代わりにして投げる未練投げ。 相手の名前を叫びながら投げ、未練を断ち切るのと同時に飛距離を競う競技だ。 「未練タラタラな選手達は、果たして断ち切ることが出来るのでしょうか!」 なんともいえない実況で競技が始まった。 「ゆいーーー!!!」 男性選手が投げたのは手編みのマフラー。 全く飛ばず、選手の足元に落ちる。 「愛が消えたマフラーでは距離が伸びず!マフラーは虚しく風になびかれてます!」 実況はノリノリである。 男性選手はマフラーを拾い、

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          2cmアパートメント

          ようやく契約までありつけた。 契約者を連れ、やってきたのは人工無人島。 新たな試みとして、入居者を募集していたのだ。 「何もないが、どこにアパートメントがあるのかね?」 スーツに高そうな腕時計をつけた小太りの男性。 いかにも、ザ・金持ちって感じだ。 「おっと!足元に気をつけて下さい!踏んでしまいますよ!ここをよーーーーく見て下さい」 俺は地面に向かって指を指す。 契約者は這いつくばりながら地面を見た。 そこにあったのは、1円サイズのアパートメント。 「このちっこいのがアパート

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          リベンジトリートメント

          今日の雲は黒くて厚い。 大雨が降っていて、最高の復讐日和だ。 メデューサの巣に行くと、奴がいた。 「貴様、何をしにきた?」 女メデューサは俺を睨みつけながら言った。 「復讐に来た。町の人達や家族を石にした報いを受けてもらう」 「私を倒しても魔王の血を使わない限り、元には戻らないぞ」 「魔王なら先日倒して、血で特効薬を作り皆を元に戻した」 「……勇者ではないお前がか?」 メデューサは目を丸くしながら俺を見ている。 「ああ、全てはお前の髪をさらツヤにするためだ。これが魔王の血で作

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          山のポ

          毎日降り続ける止まない雨に、村人達は困っていた。 「長老、なんとかならないんですか」 不安が限界に達し、私に訴えてくる村人達。 こうなったら、あれをするしかない。 「この雨は我々人間に対する神の怒りだ。怒りを沈めるために山頂でポをするしかない」 「ポ?なんですかそれは?」 「ポとは文字ではなく、記号だ」 「はい?」 紙にポと書き、村人達に見せて説明する。 「ポの下の部分が焚き火、上が空に向けて腕を縛られている人。○部分が頭だ」 「そう言われると……見えますね」 私の説明で村人

          海のピ

          応募者の中から、俺が海のピに選ばれた。 これで水着ギャル達とキャッキャウフフ出来る。 雲一つない土曜日、ピの仕事をする為に海に来た。 浜辺に居たのは水着ギャル達ではなく、爺さん一人。 「あれ?水着ギャル達は?」 「何を言っとるんじゃ。ここの海をPRする為に来たんじゃろ」 「ピってプロデューサーの意味じゃ……」 「違う違う。PRのピじゃ。若者言葉でよく一文字で表現するじゃろ?あれを真似たのじゃよ」 「マ?」 思わず若者言葉が出た。 スマホで求人情報を確認すると、海を背景に水着ギ