山口徳誠

沖縄県で短歌を詠んでいます。note初心者です。 「かりんの会」所属。沖縄の短歌のこと…

山口徳誠

沖縄県で短歌を詠んでいます。note初心者です。 「かりんの会」所属。沖縄の短歌のことなど、気ままに書いていきます。

記事一覧

沖縄の短歌一首評⑥喜納勝代

喜納勝代は糸満町(現糸満市)出身、歌集『ゆうとい』は著者26歳のときの第一歌集になります。「あとがき」によると、十代から二十代前半の歌が中心になるようです。 代…

山口徳誠
3週間前
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沖縄の短歌一首評⑤比嘉美智子

月桃の白き花びら口にふくみ感傷ありて君に逆らふ    比嘉美智子『月桃のしろき花びら』1974.7沖縄歌人叢書4 著者略歴によると、比嘉美智子は1935年(昭和10年)…

山口徳誠
3か月前
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沖縄の短歌一首評④田島涼子

残骸となりたる壷のかけらさえ水を溜めいて花を咲かしむ       『雨の匂い』 田島涼子歌集《短歌新聞社》平成15年3月刊行 田島涼子は沖縄県宮古島市平良出身の歌…

山口徳誠
5か月前
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沖縄の短歌一首評③平山良明

人の世の深き悲しみくり返すあけもどろの花咲いわたる島     平山良明『歌集 あけもどろの島』《第一歌集文庫》令和三年二月 現在は沖縄短歌の重鎮である平山良明の…

山口徳誠
8か月前
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沖縄の短歌一首評②屋部公子

一房の葡萄を盛らむ銀の皿となりたる夜半の三日月          屋部公子『歌集 遠海鳴り』2020年砂子屋書房 歌集刊行時、作者は91歳でした。 父親の仕事の都…

山口徳誠
9か月前
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沖縄の短歌一首評①屋部公子

人影に月桃の花をつと去りし喪章に似たる六月の蝶           屋部公子『歌集 遠海鳴り』2020年砂子屋書房 『遠海鳴り』は屋部公子の第二歌集です。沖縄の…

山口徳誠
10か月前
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沖縄の短歌一首評⑥喜納勝代

沖縄の短歌一首評⑥喜納勝代

喜納勝代は糸満町(現糸満市)出身、歌集『ゆうとい』は著者26歳のときの第一歌集になります。「あとがき」によると、十代から二十代前半の歌が中心になるようです。
代表作としては次の短歌がよく知られています。

海を恋う無口な男迎えんと素足でかける浜の妊婦は
                 「海の孤独」

この一首が今夏, 糸満市に建立されるという歌碑に刻まれるということです.
歌集には海の町で知られ

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沖縄の短歌一首評⑤比嘉美智子

沖縄の短歌一首評⑤比嘉美智子

月桃の白き花びら口にふくみ感傷ありて君に逆らふ
   比嘉美智子『月桃のしろき花びら』1974.7沖縄歌人叢書4

著者略歴によると、比嘉美智子は1935年(昭和10年)那覇市に生る。1955年「アララギ」(土屋文明選)入会、のち「地中海」「コスモス」「くぐい」を経て、1988年「未来」入会。1991年より沖縄タイムス「タイムス歌壇」選者。2018年選者を退任。花ゆうな短歌会主宰。
とあります。

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沖縄の短歌一首評④田島涼子

沖縄の短歌一首評④田島涼子

残骸となりたる壷のかけらさえ水を溜めいて花を咲かしむ
      『雨の匂い』 田島涼子歌集《短歌新聞社》平成15年3月刊行

田島涼子は沖縄県宮古島市平良出身の歌人です。『雨の匂い』は第一歌集となります。

反戦の人の輪に添うぼたんづる篠突く雨に執にからまり
一言を受けとめかねて秋雨に濡れゆく芙蓉の花を見ており

歌集中の短歌は平易で清澄な印象を与えます。
巻末の小山とき子氏の「跋」によれば、総

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沖縄の短歌一首評③平山良明

沖縄の短歌一首評③平山良明

人の世の深き悲しみくり返すあけもどろの花咲いわたる島
    平山良明『歌集 あけもどろの島』《第一歌集文庫》令和三年二月

現在は沖縄短歌の重鎮である平山良明の代表歌(と思われる)歌です。簡明で難解な語もなく口誦にのりやすい短歌ではないでしょうか。
『歌集 あけもどろの島』は初版が1972年1月に刊行されました。この年5月15日に沖縄の本土復帰があります。文庫版あとがきによれば「二十代の作品が多

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沖縄の短歌一首評②屋部公子

沖縄の短歌一首評②屋部公子

一房の葡萄を盛らむ銀の皿となりたる夜半の三日月
         屋部公子『歌集 遠海鳴り』2020年砂子屋書房

歌集刊行時、作者は91歳でした。
父親の仕事の都合で6歳の時に上京し、戦中戦後を東京で過ごします。

雪降ると聞けば記憶の甦るとほき二月のとほき叛乱

巻頭歌には作者7歳のときの1936年、青年将校らによるクーデタ未遂事件ー「二・二六事件」の記憶が詠まれます。この事件ののち軍部独裁と

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沖縄の短歌一首評①屋部公子

人影に月桃の花をつと去りし喪章に似たる六月の蝶
          屋部公子『歌集 遠海鳴り』2020年砂子屋書房

『遠海鳴り』は屋部公子の第二歌集です。沖縄の自然と風景、戦争の傷みと基地の島の現在が、やわらかな抒情的文体で綴られます。

掲出歌を初めて読む方のために少し語句の説明をします
六月=6月23日は沖縄においては慰霊の日になります。そのため
   六月は慰霊の月となります。詳しいことは

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