山口徳誠

沖縄県で短歌を詠んでいます。note初心者です。 「かりんの会」所属。沖縄の短歌のこと…

山口徳誠

沖縄県で短歌を詠んでいます。note初心者です。 「かりんの会」所属。沖縄の短歌のことなど、気ままに書いていきます。

最近の記事

沖縄の短歌一首評⑤比嘉美智子

月桃の白き花びら口にふくみ感傷ありて君に逆らふ    比嘉美智子『月桃のしろき花びら』1974.7沖縄歌人叢書4 著者略歴によると、比嘉美智子は1935年(昭和10年)那覇市に生る。1955年「アララギ」(土屋文明選)入会、のち「地中海」「コスモス」「くぐい」を経て、1988年「未来」入会。1991年より沖縄タイムス「タイムス歌壇」選者。2018年選者を退任。花ゆうな短歌会主宰。 とあります。 第一歌集となる『月桃のしろき花びら』は、ほぼ編年体の体裁となります。高校時代から

    • 沖縄の短歌一首評④田島涼子

      残骸となりたる壷のかけらさえ水を溜めいて花を咲かしむ       『雨の匂い』 田島涼子歌集《短歌新聞社》平成15年3月刊行 田島涼子は沖縄県宮古島市平良出身の歌人です。『雨の匂い』は第一歌集となります。 反戦の人の輪に添うぼたんづる篠突く雨に執にからまり 一言を受けとめかねて秋雨に濡れゆく芙蓉の花を見ており 歌集中の短歌は平易で清澄な印象を与えます。 巻末の小山とき子氏の「跋」によれば、総歌数507首の内、草木167首、旅139首、肉親縁者58首、職場38首、などで、

      • 沖縄の短歌一首評③平山良明

        人の世の深き悲しみくり返すあけもどろの花咲いわたる島     平山良明『歌集 あけもどろの島』《第一歌集文庫》令和三年二月 現在は沖縄短歌の重鎮である平山良明の代表歌(と思われる)歌です。簡明で難解な語もなく口誦にのりやすい短歌ではないでしょうか。 『歌集 あけもどろの島』は初版が1972年1月に刊行されました。この年5月15日に沖縄の本土復帰があります。文庫版あとがきによれば「二十代の作品が多い」といいます。年代的には1954~1963年、ちょうど昭和30年代となります。

        • 沖縄の短歌一首評②屋部公子

          一房の葡萄を盛らむ銀の皿となりたる夜半の三日月          屋部公子『歌集 遠海鳴り』2020年砂子屋書房 歌集刊行時、作者は91歳でした。 父親の仕事の都合で6歳の時に上京し、戦中戦後を東京で過ごします。 雪降ると聞けば記憶の甦るとほき二月のとほき叛乱 巻頭歌には作者7歳のときの1936年、青年将校らによるクーデタ未遂事件ー「二・二六事件」の記憶が詠まれます。この事件ののち軍部独裁となり日本は戦争へと突入していきます。 歌集中には軍事訓練や、空襲に惑う夢、など戦

        沖縄の短歌一首評⑤比嘉美智子

          沖縄の短歌一首評①屋部公子

          人影に月桃の花をつと去りし喪章に似たる六月の蝶           屋部公子『歌集 遠海鳴り』2020年砂子屋書房 『遠海鳴り』は屋部公子の第二歌集です。沖縄の自然と風景、戦争の傷みと基地の島の現在が、やわらかな抒情的文体で綴られます。 掲出歌を初めて読む方のために少し語句の説明をします 六月=6月23日は沖縄においては慰霊の日になります。そのため    六月は慰霊の月となります。詳しいことは省きますが、学校    関係は休みになります。私的な余談ですが全国的には慰霊の

          沖縄の短歌一首評①屋部公子