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フェーズ6.LGBTを特別視しなくなる

さて、LGBTが複数いる組織がどんな風に変わっていくのか、というと、フェーズ1の「LGBTって何?」というフェーズはもう過去のこととなり、「なんか、LGBTもそうでない人も、結局、人は人だね」というシンプルな気づきが定着します。

そう、そうなんです。LGBTは別に特別な存在ではないのです。

逆にいえば、LGBTが特別な存在で、配慮を要する人材ならば、LGBTでない人たちだって皆、特別な存在で、配慮を求めている点では同じです。

■自分の属性を全ての現象・出来事に紐づけなくても良いのでは?

勿論、LGBTがカミングアウトをしていく組織の中では、新たな様々な課題が生まれるかもしれません。LGBTにも様々な人がいるので、LGBTであることに悩んでいる人もいます。そういう方への対応は労力を伴うこともあるし、LGBTの中では「この組織では自分はやっていけない…」と壁に直面する方もいるでしょう。

でも、一方で、LGBTであることについて、あっけらかんとしている人もいます(私はこちら側かな。少なくとも今は)。

すべての出来事を「自分はLGBTだから…」と紐づけて考える人もいれば、そうではなく、「私、元来、こういう性格の持ち主でさ。長男だしね」なんていう具合で、セクシャリティとは紐づけずに考える人もいます。

でも、これって、LGBTでない男性も女性も同じですよね。「私が男だから…」「私が女だから…」「私が40代だから…」「私が新入社員だから…」と、自身の属性に紐づけて全ての現象をとらえる人もいれば、「全然関係なくない?」とバッサリ切り捨てる人もいます。「障害者だから」「外国人だから」といった切り口も同じかなと思います。

■LGBTのような一部の属性を特別扱いしすぎると、組織のバランスが崩れる

皆、何かしらの属性を持っていて、それを互いに認識し合って活動するのが、「組織」や「企業」というものではないかと思うのです。

LGBTに必要以上に配慮を示そうとすると、組織のバランスが崩れます。皆、それぞれに事情がある中で、LGBTを特別視することは、むしろLGBTを優遇してしまうことにもなりかねません。そうすると、LGBTでない人たちの不満が募ります。これはおかしな話です。だからこそ、LGBTへの過度な特別扱いは不要だと、私は思っています。

■仕事は能力やセンスでするもの。セクシャリティでするものではない(ことが多い)

私は立場上(?)、LGBTの人に話をすることもありますが(最近は減ったかもしれない)、キャリアや働き方に悩む人に対しては、結構ドライかもしれません。

LGBTを支援する団体や、ダイバーシティ推進をメイン事業としている企業でない限り、おそらく多くの組織の関係者は、LGBTの従業員を「LGBTだから」と言って評価したり、仕事をアサインしたりしているわけではないと思うんです。

勿論、「LGBTの新入社員が入社するから、面倒を見てやってね」という依頼は来るかもしれませんが、本担当業務が営業ならば、営業力・プレゼンテーション能力・資料作成能力・商談力を評価するわけであって、セクシャリティがどうかは大した話ではないことが多いものです。

プログラマーならば、プログラミングの能力とセンスがあればOK。美容師ならば、美的センスやカット技術があればOK(接遇力もかな)。LGBTであろうとなかろうと、能力とセンスと実績があれば、一人の人として、ちゃんと組織・クライアント・世の中からは必要とされます。LGBTは、当事者として、この現実に早い段階で気づいておくことが大切かなとも思います。

■「皆、同じ。だから、協力し合っていこう」を大切にしよう

繰り返しになりますが、「これは少し辛口なアドバイスなのかも?」と自分でも思いながらも、LGBTの人にも、この現実と事実を伝えるよう、私は意識しています。

生きていくうえで辛いことや大変なことは沢山ある。でも、それはLGBTでない人も同じ。子供を育てるために必死にお金を稼がなければいけない人もいれば、持病と付き合っていかないといけない人もいる。国籍や見た目がハードルになる人もいる。自分の面倒くさい性格と折り合いをつけていかなければいけない人もいる。そんな多様な人がともに生きる時代においては、必要以上に自分を特別な存在だと認識しなくてOKなんです。

あるいはむしろ一周まわって、「人は皆、特別だ。それは自分もあの人も変わらない」と理解し、自分を卑下することをせず、「皆、同じ。だから、協力し合っていこう」というスタンスを持つことが大事じゃないかな、と思います。

■LGBTに伝えなければいけないと思っていること

こんなことを考えたのは、こういった経験があったからです。

採用活動・就活支援活動をしている時に、LGBTであることをカミングアウトして泣き出しそうになった(泣き出したんだったかな)学生がいました。

「色々と大変な思いをしてきた」「マイノリティだから障壁が多い」「LGBTとして生きていくのが不安」…

そんな言葉を聴きながら、私は冷静に「泣く場所を間違えているな」と思いました。会社や職場は働く場所であり、成果を出す場所。そして面接の場は、働く機会を得る場所。ならば、泣いちゃダメなんです。私と個人的にプライベートで会っているならば、いくらでも話は聴くけど、人事担当者・面接官としての私は、企業・組織にふさわしい人材かを評価しなければいけない。個人の身の上話に付き合うわけにはいかないんです。

…そんなことを、誠意をもって伝えたことを覚えています。その話を聞いた関係者から、「お前は冷たいな」と言われましたが、そうでしょうか…?(笑)

ちなみにその方は、「マーケティングに興味がある」と言い始めたので、「ならば、うちの会社じゃなくて、その分野の会社に応募しなさいね」と伝えたのだったと思います。

■性別で人を区分けすることに、大した意味がない

女性活躍推進を担当していた時も思いましたが、「女性」も多様。同じ性別でも、キャリアの考え方、生き方、働き方は皆、異なります。

そしてダイバーシティの流れの中では、つい見落とされてしまいがちですが、男性も一人ひとり違う個性や特性や事情を持つ意味では多様です。

LGBTだって多様。色んなレズビアンがいるし、色んなゲイがいるし、色んなバイセクシャルがいて、色んなトランスジェンダーがいます。その他のセクシャリティも沢山います。

複数のLGBTが働き始めると、そんな当たり前のことが見えてきます。性別で人を区分けすることに、大した意味がないことが見えてきます。

いよいよダイバーシティ、多様性が実現されるフェーズがすぐそこまで訪れています。

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