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往復500kmドイツ語営業記~ドイツ語はビジネスで本当に役に立たないのか?

「ドイツ語を勉強してもビジネスには何の役にも立たない」

ドイツ語を勉強していると言うと、結構な確率で言われる言葉です。これは実際にこちらで生活していても、その通りだと思います。なぜなら仕事でドイツ語を使う機会はほぼ皆無だから。厳密にはペラペラだったら現地スタッフとドイツ語でコミュニケーションを取ったり、活用余地はあるのでしょうが、来て1年そこそこのペーペーが仕事で使えるようになるほど語学、及びビジネスの世界は甘くありません。


仕事で付き合いのあるドイツ人には「仕事生活あらゆる場面で日本語と英語を捨ててドイツ語だけ使い続ければ、仕事でも使えるようになる。ただ、それだけやっても3年でマスターできれば早い方だ」と言われたことがあります。


そんな状況においても、私がドイツ語をあえて勉強する理由は大きく2つあります。
1つは、「好きだから」。一言で言えば、勉強すること自体が楽しくて、苦にならない。半分趣味みたいになっているので、仕事で使えなくても、まあいいっかと割り切っているのです。頭では、その時間を英語に使うべきでしょと分かっていながら、ドイツ語との二刀流を目指してしまうのはこの理由が大きいです。
それでも、このnoteでも再三お伝えしてきたゲーテインスティテュートのドイツ語講座を通っているときは正直、嫌いになりかけました・・
蛇足ですが、この「崖っぷちドイツ語体験記」は、自分の投稿の中でも地味に閲覧数が多くて、未だに少しずつじわじわ伸び続けております。正直、これ需要あるのかな・・なんて心配していたので、本当にありがたい限りです。


もう1つは、ちょっと感覚的な話なのですが、「外国で暮らす人間としてその国の言葉を勉強して使うのは一つのリスペクトを示すあり方」と思っているから。もちろん、これはただの個人的な信条であって、勉強していない=リスペクトがない、という意味ではありません。私の場合は、仕事上、ドイツ人やドイツ企業との関わりが多いので、どうせ使わないから一切勉強しません!と開き直るよりは、ここにいる限りは最大限トライしてみようと思っています。


そんなこんなで前置きが長くなりましたが、今回のテーマは、崖っぷちドイツ語体験記の続編、です。ただし、今回はゲーテインスティテュートは一切関係なく、「仕事でドイツ語を使う場面に遭遇した」というお話です。


最近、私の仕事の多くは新規顧客の開拓で占められているのですが、やっとの思いで面談のアポを取得した時の話です。

4月某日、気合を入れて、車を走らせること250km(遠)。
会社のインターホンを鳴らすと、ドイツ語で案内されます。ここまでは想定内、よくあることなのですが、打ち合わせが開始しても、いつまでたってもドイツ語→英語にスイッチされる気配はなく、先方の会社紹介などがどんどん進んでいきます。


流石にこれはやばいと思い、タイミングをみて、「英語でも大丈夫ですか?」と聞くも、「いやー、英語は全くダメなんだ、片言でも構わないからドイツ語で頼む。」と堂々と押し切られてしまいました。

ここまでくると私に残された道は一つ。気合で話し切って、気合で相手の質問をリスニングしきる、しかありません。文字通り崖っぷちドイツ語です。

幸い、私はあなたと話がしたい!提案がしたいことがあるんだ!という出発点でアポを取っているので、伝えたいことが明確に自分の中で決まっていた、というのは唯一の救いでした。


結果どんな打ち合わせになったかというと、
・ 会社紹介や製品紹介は、片言ながら伝えきることができた。
・ 質疑応答も質問さえきちんと理解できれば、答えを返すことはできた。
・ 一方で、リスニングは全体的にかなり難易度が高い。相手はこちらに合わせて平易かつゆっくり話してくれていた気がするけど、それでもちんぷんかんぷんになることもしばしば。

つまり、話す&伝える方は力業でなんとかなっても(当たり前ですが、それでも改善の余地は大いにある)、リスニングは防戦一方の失点しまくりであえなく敗戦・・という感じ、反省の多い商談ではありました。例えるなら、サッカーの日本代表がブラジル代表相手にちょっと善戦するシーンもあったけど、結果だけ見れば1-5で完敗、みたいな感じが近いと思います。
ただ、自分でも少し意外だったのは、もうドイツ語で乗り切るしかないと気づいたときに、「よし!じゃあ頑張ってみるか」と頭は冷静だったことです。来て半年くらいだったらこう上手く切り替えはできていなかったように思います。


もう一つ、気づきでいうと、難易度だけで言えば、ゲーテの方が難しかったということでした。やっぱり自分が専門とするテーマで会話が進むので、ある程度予測できたり、何とかなる部分はあるんですよね。
対して、プレッシャーの強さはゲーテの比ではありませんでした。極端な話、ゲーテはお金を払って受けている”授業”。どれだけ出来が悪くても、払ったお金が無駄になるだけでお客様である自分にとって失うものはありません。一方で、仕事で使うということは何らかの価値を提供して、ビジネスを動かさなければならない訳で、生きるか死ぬか、「必死度」が違います。そういう意味で、今回の打ち合わせで使用した単語たちは恐らく死ぬまで忘れることはないと思います。笑
一応、商談として成立させることができたのは、この点が大きかったと思います。その証拠に後日、ドイツ語しか話せない床屋さんに行ったときは話している内容が一切、理解できませんでした。やっぱり語学ってメンタルがとても大きな要素としてあるのでしょうね。


商談後は、普段よりもどっと疲れて半ば放心状態ではありましたが、そそくさと250kmまた来た道を戻って帰りました。流石に限界だったのか、家に帰ったら熱を出して寝込みました。笑


まさか崖っぷちドイツ語体験記の続きを書くなんて夢にも思っていなかったのですが、そんなこんなで今回も新たな気づきと学びの多い旅だったので書かせていただきました。


それでは!
Glückauf!






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