見出し画像

僕の中の銀河|掌編小説(#シロクマ文芸部)

「銀河売り、昔はたくさんいたんだ」

 透明な小瓶に入っているビー玉を見て、じいちゃんはぼそっと言った。

「銀河売りって……何?」
「このビー玉の中に銀河を詰めて売っていたんだよ。銀河の輝きには2つとして同じものがないから、みんな自分好みの銀河を集めていてなぁ」

 僕はじいちゃんの言っていることがイマイチ分からず、「ふーん」と曖昧な返事をした。それを察したのか、じいちゃんは「いやすまん。年寄りの戯言ざれごとだ」と頭を掻く。

「今はいないの? その……銀河売りの人」
「誰かが言い出したんだよ。『銀河は売り物じゃないし、こんなビー玉に閉じ込めるものでもない。広い宇宙で、自由であるべきだ』って」
「へぇ」
「それに、本当の銀河はみんなの中にあるもんさ」
「僕の中にもある?」
「もちろんだ。大事にしろよ」

 じいちゃんは僕の左胸をトントンと軽く叩いた。自分の中に銀河があるなんて、なんか誇らしくなる。

「もしかして、じいちゃんは宇宙人なの?」
「何を言ってる。お前もそうだよ。わっはっは!」

 やっぱりじいちゃんの言ってることはよく分からないけど、とりあえず僕も「わっはっは!」と笑った。

 それでいいような気がした。

(了)


小牧幸助さんの「シロクマ文芸部」、参加用です。


こちらもどうぞ。

この記事が参加している募集

私の作品紹介

ありがとうございます!(・∀・) 大切に使わせて頂きます!