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冬色のカーテン|掌編小説(#シロクマ文芸部)

「冬色のカーテンです。大切にしてね」

 そう書いたメモと一緒に、白のレースカーテンが送られてきた。前に「カーテン、替えないとな―」と言ったのを、彼は覚えていたらしい。
 私が「白だから冬色なの? ちょっと安直じゃない?」とメッセージを送ると、「同じ景色が見られるかもよ?」と返事がきた。

 ――同じ景色、か。

 しばらく、設置したカーテンを見つめた。

 雪国に転勤になった彼は、最初の冬で「もう雪にはうんざり!」と文句ばかり言っていた。ただ、その割には毎日のように「今日も降ってるよ」とか「こんなに積もったよ」などのコメントと一緒に、雪景色の写真を送ってくる。
 雪かきは大変そうだけど、雪が降らないところに住んでいる身としては、やっぱり銀世界には憧れる。彼だって、本当は楽しんでいるに違いない。

 翌朝、目が覚めて何となく窓を見ると、カーテン越しではあるが、何かチラチラと空から降り注いでいるのが見えた。

 ――え? 雪?
 ――うそ! 雪の予報なんて出てなかったのに!

 飛び起きてカーテンを開けると……窓の外には雲一つない快晴の空が広がっていた。

 ――寝ぼけてた……のよね?

 ゆっくりとカーテンを閉めて、少し離れたところからカーテンを見つめると、またチラチラと雪が舞い降りてきた。指で少しだけカーテンを開けようとしたが、やめておいた。
 スマートフォンを取り出し、彼に電話をかける。

「あのさ、このカーテン……本当に冬色だった」
「え? 何言ってるの?」

 私は少しだけを置いて「いいの。素敵なカーテンをありがとう」と言った。

 ――本物の雪、見に行こうかな。

 思ったけど、口には出さなかった。

(了)


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