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数学ダージリン|毎週ショートショートnote
――47点。
点数を見て絶望的な気分になった。中間テストは数学の点数だけが低い。苦手教科だからこそ、一番勉強したのに……。
僕は数学の吉野先生に相談することにした。
「先生、一体どうすれば数学が得意になるんでしょうか」
「そうですねぇ。とりあえず、ダージリンティーでも飲みましょうか」
吉野先生はこじゃれたティーカップに紅茶を注ぎ、僕の前に置いた。花のような、いい香りがする。
「ダージリンの名付け親である、インドのアールシュ・ミル・ダージリンは、実は非常に優れた数学者として有名です」
「はぁ……そうなんですか」
「しかし、幼少の頃の彼の家は貧しく、ほとんど学校に通うことができなかったため、10歳になっても足し算や引き算でさえ、満足にできないくらいでした」
「ええ!? そんな人がどうやって数学者になったんですか?」
先生は右手の人差し指をピッと立てた。
「それは、彼の名前に関係しています」
「名前……ですか?」
「ダージリンの英語の綴りは『Darjeeling』です。ここから『jee』を除くと、『Darling』になります」
「ダーリン……。恋人とか、夫って意味ですよね?」
「その通り。アールシュの父親は、いつも『全てを慈しみ、愛しなさい』と言い聞かせていました。どんなに辛い状況でも、それを受け入れ、周りにいる人達に感謝し、愛しなさいと。そして、彼は愚直なまでに勉学に励み、世界的に認められる数学者になりました」
「全てを慈しみ、愛する……」
「あなたは今、数学が苦手で、勉強するのも嫌ですよね?」
「ええ、まぁ……」
「まずは数学を好きになってみることから始めてみませんか?」
「なんか……できそうな気がしてきました!」
期末テスト。
(きっと80点は超えたぞ!)
――32点。
とりあえず、吉野先生を殴りに行こうか。
職員室に向かう僕の頭の中には、CHAGE and ASKAの往年の名曲、「YAH YAH YAH」のイントロが流れていた。
(了)
たらはかにさんの企画「毎週ショートショートnote」、今週のお題は「数学ダージリン」でした。
今回の話はもちろんぜーんぶ作り話です。
吉野先生は、テレビドラマ「相棒」の杉下右京(役:水谷豊)をイメージしました。
先週のお題は「スベり高等学校」でした。
ありがとうございます!(・∀・) 大切に使わせて頂きます!