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ビール傘|毎週ショートショートnote

雨が降っている。小雨ではなく、傘が必要な雨だ。

――よし!

二十歳になって、ずっと雨を待っていた。今日こそデビューの日にふさわしい。僕はビール傘を広げて外に出た。もちろん中ジョッキだ。

下校中の高校生たちとすれ違う。ウーロン茶傘、ジンジャーエール傘、コーラ傘……。そうそう。僕も今まではそうだった。思わず頬が緩んでしまい、慌てて元に戻す。

コーヒー傘や紅茶傘はちょっとお洒落な感じがするけど、二十歳になったんだから、やっぱりビール傘でなくちゃ。意気揚々と傘を掲げて歩く。

交差点の赤信号で止まると、「カチンッ」と、目の前のカシスオレンジ傘に当たってしまった。ビシッとスーツを着た若いOL風の女性だ。

「あ、すみませ――」

――カチンッ!

梅酒傘、焼酎傘、日本酒傘、ウィスキー傘を持った人たちが次々と僕の傘に乾杯のアタックをしてくる。

「一杯、やっていきますか」

鶏のから揚げ傘を持ったサラリーマン風の人がそう言ったのを合図に、みんなで向かいの居酒屋になだれ込んだ。

【了】(431字)


『本作品はamazon kindleで出版される410字の毎週ショートショート~一周年記念~ へ掲載される事についてたらはかにさんと合意済です』


たらはかにさんの「毎週ショートショートnote」参加用です。
今週のお題は「ビール傘」。

実は私、ビール飲めません。
ジンジャーエール傘でいいです。(;^_^A

前回の「ふりかえればよみがえる」は、悔しいくらい何も思い浮かばなかったんですが、今回はほとんど考えることなく、自然に手が動いた感じです。

「こんな時代だからこそ……」という意味も込めて。

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雨の日をたのしく

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