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あなたの最後の言葉は何ですか?

「外に出る時には、靴を履きなさいっていつも言ってるでしょ!」

ナチス軍の強制収容所を生き延びたユダヤ人のご婦人が弟にかけた言葉です。

彼女のことを米国のラジオ番組が取り上げているのをドライブしながら聞いていました。

今から20年以上前のこと。カリフォルニアの高速道路を走りながら、たまたま耳にした話でした。

度々、この話を思い出しては、自分自身に言い聞かせていることがあります。

少々重い話しなのですが、自分自身が大切にしたいと思っている話しですので、共有させて頂きたいと思います。

強制収容所で生き延びたユダヤ人の決心

1933年から1945年にかけて、ナチス軍が「国家の敵」とみなすユダヤ人をはじめとする数百万人を数々の収容所に収監し、最終的には殺害するという「ホロコースト」と呼ばれる悲惨な出来事が起こりました。

この強制収容所から生還した人はわずかでした。

この女性は、そんなわずかな生存者の一人でした。

両親そして小学生の弟を強制収容所で亡くし、彼女一人だけが生き延びたのでした。

ドライブをしながらラジオで聞いた話でしたので、記録に留めることはできませんでした。お名前も覚えていません。

家族四人で暮らしている時に、まず両親が捕まります。

小さな弟と家に潜んで暮らしていたのですが、程なくしてナチス軍に見つかり、家の外に出て来る様に命じられたのでした。

彼女は自分の身にこれから何が起こるのか全く分からなかったのですが、恐れつつ弟二人と家の外にでます。

二人が家の外に出ると彼女は、弟が靴を履いていないことに気づきました。

弟は裸足で家の外にでるクセがあったようです。

そこで、彼女は弟にこう言います。

それが冒頭の言葉です。

「外に出る時には、靴を履きなさいっていつも言ってるでしょ!」

しかし、家に靴を取りに戻る事も許されず、ナチス軍の兵士は腕を掴んでトラックの後ろに弟を放り込んだのでした。

そして、彼女は別のトラックに乗せられ、きょうだいは別々の収容所に収監されてしまいます。

彼女は殺害される前に終戦を迎え生き延びたのですが、両親そして弟は収容所で命を落としたことを知ります。

彼女は3人の家族を亡くしたことを悲しんだのですが、強く後悔することがありました。

それは、自分の弟にかけた「最後のことば」でした。

愛する家族に向かって最後に発したことば、それが弟を注意することばだったのです。

その経験から、彼女は人に向かって言葉を発する時に、例えそれが最後の言葉になったとしても、後悔しない言葉をかけようと決心したそうです。


一期一会

私は座右の銘のようなものを意識して掲げないのですが、強いて言えばこのことばになります。

一期一会

お茶を頂く機会があれば喜んで頂くのですが、自分からお茶を点てることはありません。お抹茶を点てる技術もないのです。

16世紀の茶人である千利休の弟子が残した言葉です。

茶会の際には、亭主も客も二度と巡って来ない一生に一度の機会と心得て、互いに誠実にもてなし合いなさいという意味ですね。

まさしくこの一期一会の精神を、ユダヤ人女性は悲しい出来事を通して心に刻まれたのでした。

これがこの人と最後に言葉を交わすのだと知っていれば、誰でもかける言葉は自然と変わってくるでしょう。

しかし、例えそれが直接的に死別という形でなかったとしても、お別れが期せずしてやってくることがあります。

一期一会

ドライブをしながらでしたが、ユダヤ人女性のお話を聞いて、一生に一度だけという思いで人々と言葉を交わしたいと決心したのでした。


最後は感謝で

彼女の話を聞いてから、ラジオ番組を耳にしてから20数年経ちます。

その間、後悔しないような、一期一会のことばを発することができているだろうか。

未熟です。失敗ばかりです。

でも、心の中にある願いはこれです。

最後の言葉は「ありがとう」

感謝を表したいのです。


最後までお付き合い下さりありがとうございます。


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