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「アウトプット」と「アウトカム」の違いを理解してないことはないですよね?

(写真は3月でも雪深い群馬県水上温泉:2022年3月撮影)

米国に移住して仕事をしていた頃、部署は違ったのですが年配の白人男性にお世話になりました。

私が日本に帰国した後も、時々FaceBookでやり取りをしていました。

2021年6月に病気で入院していると聞きましたので、8月に渡米するのでお見舞いにいくから待っていて下さいとチャットで話しました。

8月に渡米して直ぐにお見舞いにと思いましたが、タッチの差で私がロサンゼルス空港に降り立つ2日前に旅立ってしまわれました。

彼からの最後のメッセージは、病院の部屋番号と「早く来いよ」の一言でした。残念ながら私の「早く」は遅すぎたのでした。

彼は、ジム・ホフナーさん。1970年代にダグラス社からスペース・シャトルプロジェクトを立ち上げるために動員された「プロジェクト・マネージャー」でした。

現在はスペース・シャトルプロジェクト打ち切られ、ダグラス社も存在しませんが、スペースシャトルという再利用可能な有人宇宙船で宇宙にでるプロジェクトです。

近くのバーガー屋さんでランチを一緒に食べながら、こう聞いてきました。

「アウトプットとアウトカムの違いが分かってないってことはないよな?」

彼からロジック・モデルを何度も仕事をする中で教えて頂きました。

ロジック・モデルとは?

(インプット)→(アクティビティー)→(アウトプット)→(アウトカム)

仕事やプロジェクト、事業など様々な流れを4つ(アクティビティーをプロセスとしたり省略するものもある)の段階に分けて流れを考えるモデルです。

一つずつの仕事というレベルでも、事業レベルや組織全体でも事業を行う要素を分けて「ロジック=論理」的にまとめることを通して効果的な成果をあげるためのものです。

日本では社会活動を行う団体や官公庁の政策評価などで用いられいるようです。アメリカではビジネスシーンで一般的に用いられているものです。

日本財団がロジックモデルについて説明しています。


ジム・ホフナーさんはロジック・モデルを用いて、有人宇宙船を製造、発射して地球に戻り、次に備えるまでの工程を設計しました。

最初の設計会議で出来上がったロジック・モデルは数多くのロジック・モデルが複雑に絡み合いながらスパゲティのようにごちゃごちゃしたものでした。

しかし、そこからひとつひとつの工程の設計に入り、ロジックモデルを用いてスペース・シャトルプロジェクトを成功に導いたのでした。

プロジェクトの立ち上げを終えて彼は退き、後にこのプロジェクトは残念ながらリスクマネジメントを誤り、最終的に大事故を起こし中止になってしまったのでした。

ロジック(論理)をどのように働かせるのか?

4つの段階をさらに細かく分解する方法もあるのですが、ここでは簡単に4つの段階を「夕飯を作る」というテーマで考えてみましょう。

ロジック・モデル作成では、いつも「アウトカム」から始めます。

(1)アウトカム

これは組織や事業が、得よう、生みだそうと考える「成果」のことです。

家族が「健康的な食事」を「おいしい」といって「一緒」に食べる。

得ようと思っている成果のことです。

社会の変化であるかもしれません。顧客の問題解決ということかもしれません。

(2)アウトプット

これは組織や事業が、提供する「サービスや商品」のことです。

夕飯のメニュー「野菜たっぷりの鍋」。暖かい鍋を囲みながら一緒に食べるためにです。

成果を得るために自らが提供するものです。

(3)アクティビティー

活動のことです。サービスや商品を提供するための「活動」の全てです。

夕飯のために行う活動。食材の買い物や下ごしらえ、出汁とりや卓上ガスコンロの準備、一緒にたべるための食卓の準備などですね。

最適なアウトプットするための活動やそのプロセスです。

(4)インプット

アウトカムを生み出すアウトプットのための活動に必要な「ヒト・モノ・カネ・コト」。必要な資源のことです。

みんなが大好きな食材リスト、時間、食材や替えガスボンベなど購入のお金、などなど。

このひとつひとつの因果関係を考えながら、最適化を図るのです。

アウトカムとアウトプットの違い?

こうやってみると、家族が健康でおいしいものを一緒に食べているというアウトプットと「野菜たっぷりの鍋」というアウトカムが違うものであることは一目瞭然です。

それではなぜジムさんは、こんな当り前のことを私に聞いたのでしょう。

それにはいくつもの理由があったのですが、ここでは2つのことだけ紹介します。

(1)アウトプットが目的ではない

求めている成果はアウトカムです。

顧客のニーズがみたされること。問題が解決すること。顧客がロイヤル化すること。などなど。

そのためにアウトプット、商品やサービスが存在するのです。

商品をつくったらそれで終わりとなってしまう。売りさえすれば、よいとなっている時には、アウトカムが見失われていることがあります。

とにかく毎日noteを書く。何でも良いから毎日書く。それを目的にnoteを書いているのでしょうか?

noteを書くためにnoteを書いている人はいないでしょう。

ところが、時に何のために書いているのかわからなくなってしまうことがあるのです。

アウトプット(noteの記事)とアウトカム(より多くの人々への価値提供)の関係がおかしくなってしまい、目的を見失うことがあるのです。

だから、違いを理解しているのか?と聞く意味があるのです。

(2)アウトカムはコントロールしない

目標設定の際にアウトプットを目標にして管理する必要があるのにもかかわらず、アウトカムを目標にしてしまうことがあります。

「夕飯」の例に戻ると、一旦「野菜たっぷりの鍋」を作ることにしたら、「野菜たっぷりの鍋」を作るという目標に対して責任を負うわけです。

もちろん、「健康的で」「おいしくて」「みんな一緒」に食べられるように準備するのですが、「おいしい」と言ってくれるか、誰一人食卓に欠けている人がいない状態を目標にしても、コントロールすることはできません。

目的はアウトカム。
目標はアウトプット。

目的を達成するために最適の目標を設定する必要があります。

ここでもアウトプットとアウトカムがごっちゃになってしまうことがあるのです。

自分ができること、自分がコントロールできるものに集中しないために、資源を無駄にしてしまうことがあるのです。


ジム・ホフナーさんがニッコリと笑みを浮かべながら、「アウトプットとアウトカムの違いが分かってないってことはないよな?」と問いかけてくる姿が目に浮かびます。

自らの仕事、事業、ビジネスをロジック・モデルで整理し直してみることをオススメします。



長くなりましたが最後までお付き合い頂きありがとうございます。



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