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「パーパス」を今さら明確にする「パーパス」は何なのか?(その1)

(写真は都庁から眺める都心:2015年1月撮影)

「パーパス」という用語がビジネスシーンで頻繁に使われるようになっています。

企業の「パーパス」・個人の「パーパス」
「パーパス経営」
「パーパス・ドリブン」
「パーパス・ブランディング」
「パーパス思考」
「パーパス・ステイトメント」

などなど

ネット上でも「パーパス」について取り扱った記事が増加しています。

有名なコンサルタントが2021年に出版した「パーパス経営」が火付け役になっていることもあるでしょうか。

約30年位前に企業の「パーパス」について耳にして以来、米国の大学院や米国の組織との関わりの中で、「パーパス」について直接、間接的に取り扱ってきました。

そこで今回は日本における「パーパス」の適用について考えてみます。

「パーパス」とは?

改めて説明を必要としないのかもしれませんが、ざっくりとおさらいをしましょう。

「パーパス」これは英単語そのままです。

Purpose:目的、意図、ねらい、理由、趣旨

日本語に訳しにくい英語が、そのまま用いられるケースとは異なりますね。

それでは、なぜ「目的」という日本語に訳されずに、そのまま英単語が用いられているのでしょうか?

それは単に「目的」という言葉で表現される以上の意味を含ませているからでしょう。

「パーパス」:存在意義

企業で言えば「なぜ、自社は存在しているのか?」「自社はどんな意義を持って存在しているのか?」という問いに対する答えです。

個人に当てはめれば、「自分は何のために存在しているのか?」「存在理由はなにか?」という問いになるでしょう。

「ミッション(使命)」や「ビジョン」や「バリュー(価値基準)」等も英単語がそのまま用いられていますが、「パーパス」もこれらの言葉と同じように組織の経営理念を明確にしたり、経営指針として掲げる際に用いられています。

どこから来たの?

私は1993年に米国の組織で初めてVP(Vice President)という役職に就任しましたが、その時には既に「Purpose Statement(パーパス説明文)」なるものが、「ミッション」「ビジョン」「バリュー」と共に経営戦略計画の中に組み込まれていました。

その当時は、以下のような使い方をしていました。

パーパス:社会における存在意義 <We exist … で始まる目的説明文>
ビジョン:望む自らや社会の将来像 <To see…で始まる将来像説明文>
ミッション:自らの使命 <To do ….で始まる使命説明文>
バリュー:価値基準 <We value….で始まる価値基準の箇条書き>

年次の事業目標設定と事業計画立案のプロセスに、これらの項目を確認することが組み込まれていました。

しかし、21世紀に入り「Purpose Driven(パーパス・ドリブン:目的主導)」という言葉で「パーパス」が一気に脚光を浴びるようになります。

米国カリフォルニア州のメガチャーチと呼ばれるサドルバック教会の牧師リック・ウォーレンが2002年に出版した「Purpose Driven Life(邦題:人生を導く5つの目的」)」という本が始まりでした。

メガチャーチとは、1990年代にピーター・ドラッカーが米国の社会現象として説明しましたが、郊外の広い敷地につくられた数千人から数万人規模の巨大なキリスト教会のことです。

同書は世界137カ国語に訳され、これまでに5,000万部発行されているそうです。(https://www.simonandschuster.com/authors/Rick-Warren/39904606

このキリスト教の牧師が書いた人生の指南書を一躍有名にした事件が2005年に起こります。

自らの裁判のために出廷した裁判所で裁判官ほか数名を殺害して逃亡した殺人犯の自首事件です。

殺人犯ブライアン・ニコルズは、裁判官らを殺害した後、近くのアパートに逃げ込み住人の女性を人質にしたのです。

ところが、人質の女性が「Purpose Driven Life」を彼に朗読させてほしいと申し出ます。彼女の朗読を聞きながら、殺人犯ニコルズは自分の人生の目的について考えはじめ、最終的に自首するに至ったというのです。

ウォレン牧師は、TEDでも講演していますので、動画はこちら↓


また、オリンピック通算獲得メダル歴代1位で28個(金が23個)を持つマイケル・フェルプスが燃え尽き症候群から復活した時にもきっかけになったことで同書はさらに有名になりました。

ESPNのインタビュー(英語のみ)


このような出来事の中で、新聞、雑誌、テレビなどのメディアで取り上げられるようになり、「パーパス」「パーパス・ドリブン」という言葉が米国社会に浸透していったように思います。

きっかけとなった本は、個人のための人生の指南書だったのですが、米国において非営利団体や企業などの組織にも「パーパス・ドリブン(目的主導)」「パーパス」が頻繁に使用されるようになったと言えます。

ある言葉やコンセプトが流行る時には、ただ闇雲に言葉やコンセプトを取り入れるのではなく、文脈となっている背景や社会にも目を向けておくことは大変有益です。

また、取り入れようと考えている自らの組織の文脈、土壌についても考えませんと、熱帯植物を雪国に地植えすることと同じことになってしまいます。


(つづく)

文章が長くなってしまいましたので、今回はここまでにさせて頂きます。

次回は「なぜ今パーパスなのか」から後半部分を投稿します。



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