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【学び㉗冊目】プロフェッショナル・サービス・ファーム~知識創造企業のマネジメント~(日本語訳)

学び①権限委譲の問題

ジュニアメンバーでも出来るような現場の仕事を、シニアメンバーが抱え、彼らが本当にするべき付加価値の高い仕事ができていない、という状況がよく起こりえますが、権限移譲が正常に行われていないことにより発生する典型的な例です。

権限移譲が正常になされないことによって及ぼされる、会社への害の例として、生産性の低下、モラル、士気の低下などが挙げられていますが、私は、一番の悪影響は、サービスが属人化してしまうことだと考えます。

優秀な人材ほど、自分の技術に誇りを持っているため、ポジションが上がっても中々部下に仕事を譲らないということが起こってしまうと思います。それでは、その人材が会社を離れれば、何も残りません。サービスは「再現性」を持たせなければ意味がないのです。

ですが、この状況が発生するのは、ただその上司が悪いともいい切れません。会社の教育制度にも十分問題があり得るのです。マネージャーへの教育制度が何も無ければ、今まで現場で一生懸命働いてきた人材が自分の技術に誇りを持ち、昇格した後も自分自身で仕事を抱えてしまっても当然のことです。

教育者を教育する制度が充実しているのか否かを、会社は再確認するべきだと感じました。


学び②サービスそのものの重要性

コンサルタントが、クライアントが求めるものを知っていなければいけない、というのは言うまでもありません。ですが、コンサルタントが忘れてはいけないのは、クライアントが重視する部分は、サービスを提供する立場であるコンサルタントとの人間関係の部分だということです。プロフェッショナルは、職人ではないので、自分の技術や成果に重きを置き、クライアントの満足に目をやらない、なんてことは起きてはならないのです。

技術鍛錬の傾向により、似たようなコンサルタントが今後市場でますます増えていく中、どうすれば、選ばれるコンサルになることができるのかを、今一度考えるべきだと思いました。


学び③狩猟民族型、農耕民族型

ファームのシステムは、運営のスタイルにより、狩猟民族型農耕民族型の2種類に分かれます。

まず、農耕民族型は、参入する市場と、提供する専門性を厳選し、選定したエリアに労働力を全て投資するというスタイルです。なので、このタイプのファームのモメンタムは、決して個人主義から来るものでなく、チームワークから来るものなのです。しかし、この農耕民族型の一点投資は、最大の強みでありながら、最大の弱点でもあるのです。投資を集中させることによる、機会の喪失や、顧客のニーズの変化への対応の遅れの危険性を常にはらんでいるからです。農耕民族型が持つ弱みが、そのまま強みとなるのが狩猟民族型です。速効性を持ったこのシステムの特徴は、マーケティング活動が組織ではなく、個人の責任から来るという点です。

この2つのシステムが同じ会社内で混在している場合が多くありますが、筆者は、この混在した状態を良しとしていません。なぜなら、それぞれのアプローチ間には矛盾があるため、一貫性が取りにくいためです。

私も、この2つのシステムの特徴の多くが相反するものになっているため、同時に存在する状態は好ましくないと考える一方で、会社の売上規模、社員数の成長段階に応じてシステムを入れ替えることは悪くないのではないかと感じました。例えば、成長期には農耕民族型を採用し、収益源となる事業を作りに行く運営の仕方をしていき、成熟期には事業を色々な箇所散らばらせ、リスクヘッジに取り組むということなどが考えられます。

まとめ

一人のコンサルタント向けのスキル本は非常に多く出回っておりますが、この本のように組織としてのコンサルファームを成功に導く経営書のようなものは、あまり無いように感じられます。また、コンサルや会計士のように、知恵を売るビジネスの場合、消費財を売るビジネスとはまた違ったマーケティングをしていかなくてはいけませんが、そんな知恵のマーケティングの仕方にも焦点を当てている数少ない本です。プロフェッショナルサービス・ファームの経営者視点のアプローチで書かれていますが、逆に会社で働く従業員側の人材が読むことで、経営者思考に触れることができ、業界、会社で上に上がっていくためのインサイトを得ることができる1冊です。学びが盛り沢山なこの本ですが、直訳をしたような不自然な部分が多少あり、読みにくい箇所もいくつかあります。英語が読める方でしたら、原書も合わせて読むことによって、より理解が深まるのではないかと感じました。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!




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