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意味があるか ないかより、面白がって じぶんの人生の『穴』から世界をのぞいてみる。


谷川俊太郎展へ行ってきました。

もう、、、最高でした。

谷川俊太郎さんは詩人で、300冊を越える絵本を出版されています。
デビュー作『二十億光年の孤独』や、『朝のリレー』は教科書で習いますし、『スイミー』や『スヌーピー』の翻訳は優しく、心に残っています。


🌱🌱🌱


▪️詩は耳で聞く音声メディアである


この展示会、入った瞬間からリズムに溢れてました。

詩『かっぱ』
ケンケンパしながら読んでみる。


谷川さんの朗読や、オノマトペ、自然と自分でも声に出して読みたくなる……!

『おならうた』
いも くって ぶ

(そういえば、以前、新聞で『おならうた』はAIが作れない詩と書かれていたな…)

谷川さんは、絵本作りで意識されていることをこのように説明されていました。

詩は耳で聞く音声メディアであると考える。言葉は意味を伝えるだけでなく、もともと「おん」があり、音には力や存在感がある。

『ぴよぴよ』の説明文より


♪♪♪


そして、今回の展示会は絵本がテーマ。
たくさんの美しい絵本の原画が見られました。


やっぱり、絵本って、絵が大事だなと。


まったくもって、
当たり前のことを再認識しました。



撮影全てOKだったので、ぜひご覧下さい。


▪️絵のプロ×言葉のプロ『ここは おうち』

今、絵本界で人気のjunaidaさんの原画が生で見られました〜!

『ここは おうち』

この絵本は、谷川さんが書いたテキストに、junaidaさんが絵をつけ、その絵を見た谷川さんが、次の言葉を繋げて……と、物語を作っていったとか。

「(junaidaさんは)緻密な絵を描く人でしょう。あまりつき合ったことがないタイプの人だったから、自分でもどんな言葉が出てくるか楽しみでもあったんです」
「ぼくの中でいちばん大事なのは『コンセプト』なんですよね」
「決定稿を渡してずいぶん経ってから完成したカラーの絵を見たんだけど、想像以上に素晴らしかった」

谷川俊太郎が語る、『ここは おうち』

そんな絵本の作り方あるんだ💡


展示の仕方も可愛い🏠

いないひとが いる ないものが ある

この哲学的な言葉から、出てきたこの絵。


プロ同士のラリー、迫力があります。

全部載せたいほど可愛いけど、ギュッと絞って、一部だけ。


▪️白の表現が美しい『かないくん』

ほぼ日の糸井重里さんの企画でできた、【死】をテーマにした松本大洋さんとのコラボ絵本。

きょう となりの かないくんが いない

『かないくん』

松本さんの描く白には、表情がある。
切なくて、温かい。

こんな繊細な白を、よく印刷できたなとびっくりします。(写真に映らない)

谷川さんが一晩で詩を書き、
松本さんが2年かけて絵を描いたとか。


こんな贅沢な絵本ある?
大人のための絵本だよね?


そんな、気持ちになります。

▪️シンプルだから伝わる『へいわと せんそう』

平和と戦争。


noritaneさんのシンプルな絵が、
谷川さんのシンプルな言葉と共に、
そのまま届く。

ちがうもの。
おなじもの。



最後に紹介するのは、


この展示会で、1番好きになった本。


多分、わたしの人生で、これから何度も思い出すことになると思う言葉。


▪️noterさんに届けたい『あな』

日曜日の あさ、
なにも することが なかったので、
ひろしは 穴を 掘りはじめた。

おかあさんがきた。「なに やってるの?」
ひろしはこたえた。「穴 掘ってるのさ」
そうして 穴を 掘りつづけた。

となりの しゅうじくんが きた。
「なにに するんだい この穴」
ひろしは こたえた。「さあね」
そうして 穴を 掘りつづけた。

おとうさんがきた。
「あせるなよ、あせっちゃだめだ」
ひろしはこたえた。「まあね」
そうして 穴を 掘りつづけた。

てのひらの まめがいたい。
あせが 耳のうしろを 流れおちる。
「もっと掘るんだ。もっと深く」と、
ひろしは おもった。

そのとき おおきな いもむしが
穴の底から はいだしてきた。
「こんにちは」と、ひろしはいった。

いもむしは、だまって また 土の中へ かえっていった。

ふっと 肩から ちからが ぬけた。
ひろしは 掘るのを やめて 座りこんだ。

穴の中は しずかだった。
土は いいにおいがした。

ひろしは 穴のかべの シャベルのあとに さわってみた。
「これは ぼくの 穴だ」ひろしは おもった。

おかあさんがきた。「なにやってるの?」
ひろしはこたえた。「穴の中に 座っているのさ」
そうして 穴に 座りつづけた。

妹のゆきこがきた。「お池にしようよ」
ひろしはこたえた。「だめ」
そうして 穴に 座りつづけた。

しゅうじくんがきた。「落とし穴にするのかい」
ひろしはこたえた。「さあね」
そうして 穴に 座りつづけた。

おとうさんがきた。「なかなかいい穴ができたな」
ひろしはこたえた。「まあね」
そうして 穴に 座りつづけた。

ひろしは 上を みあげた。
穴の 中から 見る空は、いつもより もっと 青く もっと 高く おもえた。
その空を いっぴきの ちょうちょうが ひらひらと 横切っていった。

ひろしは立ち上がり、はずみをつけて穴からあがった。そして 穴を のぞきこんだ。
穴は 深くて 暗かった……


「これは ぼくの 穴だ」
もういちど ひろしは おもった。


そうして ゆっくり 穴を うめはじめた。

※原文は全てひらがなです。

『あな』の説明で、谷川さんが、 

「和田さんの絵の加わったこの絵本そのものは、作者の解釈以上の多義的なひろがりをもっていると思うので、自由に読んでもらえるといいな」

とおっしゃっていましたので……自由に解釈してみます。



「穴を掘る」ということに対して、


「何でそれをやるのか」「何になるのか」「どんな意味があるのか」「何に使うのか」何度も、何度も聞かれて……


最終的に その穴が どうなるのかと見てくと、


結局、ただの穴のまま、何かになる事なく、穴の中から外の世界を見て、一人で埋めて終わる、というのが、衝撃で。


胸に刺さった。もう、グサーーーっと。


「穴を掘る」を、「絵を描く」とか「教える」とか、自分がやっていることに変換したら……リアルに心に迫ってくる。


もし自分なら、執着しちゃう。やっぱり。
誰の手も借りず、一人で作ったのなら尚更。


もっと、もっと、頑張らなきゃ!
何か、意味のあるものにしなきゃ!

って、思っちゃう。


そんなとき、立ち止まれるかな?
他人からの評価や、存在意味ではなく、
やってる事を、自分自身でオッケー出せるかな?

すっごく、眩しく思える。



頑張ったことが、ただの「穴」ではなく、「池」でも「落とし穴」でも……何らかの意味を持ってカタチに残って欲しいと思っちゃう。


そんな感想を話すと、母が「穴は、人生だね。そんなもんだよ、ほとんどの事は何にもならないし、何の意味もない。」と言った。

そんなふうにも読めるねと……『穴』の絵本の“深さ”にズブズブとハマってしまった。


帰りにショップで詩のトイレットペーパーを購入(笑)トイレが詩を味わう時間に……と思ったけど、もったいなくて使いにくいな🤣

今回の美術館も、良い刺激を貰いましたー❣️



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