イヤープラグさざなみ

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最近の記事

【書評】『西洋美術史入門』/美術史的鑑賞【基礎教養部】

毎月の最終日が書評記事の締切である。そしてこれを書いている今はその締切日、2月29日の夕方である。先月と先々月は、チームのメンバーに紹介してもらった本を読んだ。今月は私の選書ターンである。選んだのは『西洋美術史入門』。美術史とは何か、そして実際の西洋美術の変遷が平易に解説されている。なんとなく絵画鑑賞には興味がある、だけど何から始めればいいのか分からない、という私にとってピッタリの一冊であった。 本書の内容を一言でまとめるなら、「絵画とは、メディアである(あった)」というこ

    • 【書評】『紀州のドン・ファン 美女4000人に30億円を貢いだ男』/書評【基礎教養部】

      上の本を読み、私が感じたことをこれから書く。 (けろたんさんの800字書評、note記事は準備中です。) 実はこれを書いている段階で本書の2割程度しか読み終えていないことをここに告白しておこう。だからこれから書くのは、私がこの本を読み終えて感じたことではなく、途中まで読んで、感じたことである。 いや、この本を読んで感じたことを書くと言ったら少し語弊があるかもしれない。というのも、これからここに書かれることが、純粋に今回の読書体験によるものとは言えないからである。私は本書

      • 【書評】『データ分析の力 因果関係に迫る思考法』/世界の仕組み【基礎教養部】

        上の本と下の2つの記事を読み終え、私が感じたことをこれから書く。 (ゆーろっぷさんの800字書評、note記事は準備中です。) 本書は因果関係の推定方法について書かれた、計量経済学の入門書である。数式による説明は巻末の付録にまとめられていて本文中に登場することはないし、章末毎に内容のまとめが載っている。とても読みやすかった。計量経済学というワードは本書を紹介してくれたゆーろっぷさんに教えてもらうまで知らなかった。ざっくり言うと、主に統計学を駆使して、実際に社会で起っている

        • 【書評】『悲しい曲の何が悲しいのか 音楽美学と心の哲学』/ひとに説明する【基礎教養部】

          上の本と下の2つの記事を読み終え、私が感じたことをこれから書く。 これから書く「書評」は、とあるコミュニティ内で課されている定期的な課題だ。課題ではあるが、私はそれを負担に感じているというよりも、むしろ楽しんでやっている。形式に縛りがなく、自分の好きなことを書けるからである。確かに、紹介された本に関連した内容を書くという制約はあるが、これも実質的には制約ではないのである。 例えば今回の場合、本のタイトルが「悲しい曲の何が悲しいのか」であるから、本に関係した内容というと「悲

        【書評】『西洋美術史入門』/美術史的鑑賞【基礎教養部】

          【書評】『世界はなぜ地獄になるのか』/面白い・楽しい【基礎教養部】

          上に挙げた本と、以下に紹介する2つの記事の内容を受けて私が考えたことを書く。 本書の主題は、社会のリベラル化と、それによって生じたキャンセルカルチャーである。キャンセルカルチャーという言葉は初めて聞いたが、要は特定の人物(主に芸能人などの有名人・著名人)に対する糾弾のことであった。もちろん私も過去にツイッターなどでキャンセルカルチャーの現場に遭遇したことはあるが、それはあくまで傍観者としてであって、当事者としてではない。 「『差別』『ステイタスゲーム』が蔓延るこの地獄」と

          【書評】『世界はなぜ地獄になるのか』/面白い・楽しい【基礎教養部】

          【書評】『君は君の人生の主役になれ』/自分語り【基礎教養部】

          「君は君の人生の主役になれ」というタイトルが気に入っている。私が好きなのは「主役」ではなくて「君は君の」の方である。他でもないこの私に言ってくれている気がして、身が締まるからだ。 本書のメッセージは二つあると思う。一つは、自分が「大人」から受ける(受けそうになっている)コントロールに自覚的になれということ。もう一つは、複雑なこの世界をそのまま複雑なものとして受け入れながら、自分独特の人生を切り拓いていけ、というものだ。後者の方が、より本質的である。 複雑なものを複雑なもの

          【書評】『君は君の人生の主役になれ』/自分語り【基礎教養部】

          【書評】『科学はなぜわかりにくいのか 現代科学の方法論を理解する』/科学とは方法論である【基礎教養部】

          上に挙げた本と下に載せる書評を読み、私が感じたことや考えたことをこれから書いていく。 本書の主題は「科学の分かりにくさ」ではなく、科学的方法論である。 まず、データありきだ。データかなければ科学は始まらない。科学者たちは、このデータを元にして、「仮説演繹法」によって議論を展開していく。仮説演繹法ではまず、与えられたデータを説明し得る仮説を考案する。次に、その仮説が正しいと仮定し、そこから出発して論理的な推論を重ねていく。最後に、推論によって得られた帰結と実際のデータを比較し

          【書評】『科学はなぜわかりにくいのか 現代科学の方法論を理解する』/科学とは方法論である【基礎教養部】

          【書評】『考えるとはどういうことか 0歳から100歳までの哲学入門』/考える・悩む【基礎教養部】

          上の本のテーマは「他者とともに考える」ことである。私はそれに対して、「一人で考えること」を考えてここに書こうと思う。上の本で主に書かれていることは、「哲学対話」についてである。自ら抱いた問いをもとに考え始め、その経過や結果を言葉にして他者と共有し合うことで世界を広げていこう、そして、世界が広がるその感覚は、それをやった者にしか分からない。そんな内容であった。私は人と話しながら考えるよりも、一人で考えることの方が多い。一人でいることが多いからである。もちろん人と一緒にいることで

          【書評】『考えるとはどういうことか 0歳から100歳までの哲学入門』/考える・悩む【基礎教養部】

          【書評】『99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方』/会話と仮説【基礎教養部】

          Amazon.co.jp: 99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方 (光文社新書) : 竹内 薫: 本 上に挙げた本と、以下に紹介する2つの記事の内容を受けて私が考えたことを書く。 99.9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方 を読んで報告という行為について考える。|シト (note.com) 99・9%は仮説~思いこみで判断しないための考え方~ | 基礎教|ジェイラボ公式部ログ (j-lectures.org) 人と話したり、本を読んだり、わたした

          【書評】『99・9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方』/会話と仮説【基礎教養部】

          岡本太郎『孤独がきみを強くする』[20230124]

          孤独がきみを強くする | 岡本 太郎 |本 | 通販 | Amazon 辛いことや面倒くさいことは全部放り出して、ただただ飯を食って寝るだけ。外は寒そうだから、とりあえずもう少しの間は毛布にくるまって横になっていよう。あ~暖かい。これでいいんだ。楽な方へ楽な方へ…。 そんな僕の尻をひっぱたくような内容の本である。着火剤のような本である。瞬間的に気分をアゲるという点では、この本を読むことは音楽を聴くことと似ている。 最近は勉学も程々に、もっぱら筋トレと楽器の練習に励んでい

          岡本太郎『孤独がきみを強くする』[20230124]

          丸山圭三郎『言葉とは何か』[20221108]

          https://www.amazon.co.jp/dp/4480091459/ 本書は言語学研究の第一人者である著者によって書かれた、ソシュールの入門本である。ラング、パロール、ランガージュ、連辞関係、連合関係、シニフィアン、シニフィエ・・・といった、聞いたことはあるけれどよく分かっていないような用語たちが、豊富な例とともに平易に、そして簡潔に説明されている。 話は全く変わる。読書でも運動でもなんでもいい。何かをする際に、「それ」を意識するかしないかで得られる効果が全く変

          丸山圭三郎『言葉とは何か』[20221108]

          若松英輔『本を読めなくなった人のための読書論』[20220913]

          本を読めなくなった人のための読書論 | 若松 英輔 |本 | 通販 | Amazon お腹が空いていないときは無理に食べなくていい。食べたいと思えるようになるまでゆっくり待てばいい。 僕はだいたいの本をAmazonで購入する。似たようなジャンルの本を買っているとおすすめに表示される本も似たようなものばかりで、それをまた買うから・・・ このあいだ、人におすすめされた本を買って読むということを(多分)初めてした。その人に教えてもらわなかったら一生読むことのない本だったと思う

          若松英輔『本を読めなくなった人のための読書論』[20220913]

          鷲田清一『じぶん・この不思議な存在 』[20220628]

          https://www.amazon.co.jp/じぶん・この不思議な存在-講談社現代新書-鷲田-清一/dp/4061493159 問いが生まれるのは自分が異常事態に直面しているときである。生活が順調で正常に進んでいるならば、そこに問いを見出すことはないだろう。 「自分とは何か」という問いを立てるときは自分が弱っているときである。「自分」というものはまだよく分かっていないけれど、そのよく分かっていない何かが弱っているのである。『じぶん・この不思議な存在』で主張されているの

          鷲田清一『じぶん・この不思議な存在 』[20220628]

          橋爪大三郎『はじめての構造主義』[20220220]

          読み終わって気づいたが、1988年に書かれた本だった。確かにフランスでの構造主義最盛期は1950~60年代だし、ポスト構造主義の登場も1970年代であることを考えると、そんなもんか。構造主義は現代思想を語る上でのキーワードであることは間違いないけれども、まあ古い。著者が大学生になった時期、ちょうど1960年代に入った頃に日本では構造主義ブームだったらしい。現代思想が日本に入ってくるときはいつもフランスからの直輸入と相場が決まっていたようで、構造主義もそれに漏れない。 本書は

          橋爪大三郎『はじめての構造主義』[20220220]

          高橋和巳『アーユルヴェーダの知恵—蘇るインド伝承医学』[20211205]

          人間にとっての真の健康を追求するのがアーユルヴェーダである。ここで言う健康の定義とは何か。アーユルヴェーダの古典『スシュルタ・サムヒタ(外科医スシュルタ本集の意)』にはこう書かれている。 ①ドーシャのバランスがとれていて、                ②健康な食欲をもち、                      ③ダーツゥが正常にし、                     ④マラのバランスが整い、                    ⑤意識、こころ、五感が至福

          高橋和巳『アーユルヴェーダの知恵—蘇るインド伝承医学』[20211205]

          山鳥重『「わかる」とはどういうことか -認識の脳科学』[20210905]

          書評を書くにあたって今回始めて通読した。浪人時代に気になって買って積んでいた本の内の一冊である。Twitterかなんかで予備校の現代文講師がおすすめしていたのを見て、アマゾンで中古で買ったような気がする。 最近はブックレビューや「本を紹介する本」との付き合い方について少し考えている。世界中には一生をかけても読みきれないほどの書物がある。世間で言われているところの「名著」に絞ってみてもその数は膨大である。そういう「名著」を一通り読破してやろうと考えていた時期もあった。というか

          山鳥重『「わかる」とはどういうことか -認識の脳科学』[20210905]