Episode2夜が怖いのは何故だろうか?

夜を怖がる人は何かと多い。僕もその中の1人だ。特に夜道を1人で歩くのが怖い。いや、正確には東京の夜道を1人で歩くのが怖い。僕は散歩をするのが何かと好きなので、地元であれば夏の暇な夜の時間などよく1人で散歩することがあった。面白いのは、夜に散歩したがるのは僕だけではなく他にもたくさんいたということだ。結構、土手などを歩いている人がいたりするのである。
と、こう考えると僕が怖いのは夜であるということよりも、顔も見えない誰かに話しかけられたりすることの方がよっぽど怖いようだ。
子どもの場合は、1人夜道を歩くのは怖くないのだろうか?そう考えていたら僕が働いていた保育園で、思い当たるエピソードがあった。4歳クラスのあるAくんの話である。
ある日僕は遅番でAくんと一緒にお迎えが来るのを待っていた。外がすっかり暗くなってしまった後、ようやくAくんのお母さんが迎えに来た。Aくんはお母さんを見るなりすぐに駆け寄って帰る支度をし始めた。その日クラスのみんなと一緒に作った紙飛行機を手に持って。
そしていよいよ帰るとなった時、Aくんは思わず、紙飛行機を間違って真っ暗なお部屋に飛ばしてしまったのである。Aくんは困ってしまった。怖くて取りに行けないのである。僕はそんなAくんを見て話しかけた。

「Aくん、どうしたの?」

Aくんは僕の顔を見てまた紙飛行機の方に目を戻しながらこう答えた。

「紙飛行機、取りに行けなくなっちゃった、、、」

このままだと帰ることができない。お母さんにも置いていかれてしまう。様々な思いが浮かぶであろうAくんに、僕がただ取りに行くのはあまりにも安直すぎるだろうと考えた。僕はAくんに紙飛行機を取らせてあげたかったのである。

「Aくん、じゃあ先生と一緒に取りに行こう?」

僕はそんな提案をAくんにしてみた。するとAくんは

「えっ、駄目!俺行けないから、、、」

Aくんにとって暗い部屋を歩くというのは、あまりにも刺激が強すぎるのである。

「じゃあ先生が抱っこして一緒に取りに行くのは?」

するとAくんは、

「それだったら行けるかもしれない」

どうやら決まったようだ。僕はAくんを抱っこし、真っ暗な部屋へと入っていった。Aくんはしっかりと僕の服を掴み、紙飛行機を見つけると片腕を伸ばして何とか紙飛行機を取り戻すことが出来た。Aくんはこれから5歳になる子どもである。

ここで「5歳になる子どもを抱っこするなんて、、、!」と思うか、「紙飛行機を先生と一緒に取りに行けて、良かったね!」と思うのは各々によって違ってくる。いずれにせよ、Aくんにとって暗い部屋に入れたことは何よりの体験であったに違いない。

この時のAくんに必要なことは何だったのだろうか?

紙飛行機だろうか?

母親に慰めてもらうことだったのだろうか?

自ら犯した過ちから、紙飛行機を諦めてもらうことだったのだろうか?

僕がさっさとAくんの代わりに紙飛行機を取りに行くことが、Aくんの為になっていたのだろうか?

Aくんに発破をかけて、無理矢理にでも1人で取りに行かせることがAくんのために果たしてなるのだろうか?

我々はこれと似たようなことをいつもどこか毎日繰り返しているかと思われる。子どもの話だろうが大人の話だろうが、実は対して変わらないことが多いのだ。

ところで話は変わるが、僕は子どもの頃非常に面白い体験をしたことがある。それはある日小学校の5年生くらい、夏のある日、野球の部活から終わって家に帰るまでの一本道での出来事だった。
いつものように僕は夜道を1人歩いていた。真っ暗な夜道を歩くとなるとさすがにおばけなんてものが存在するんじゃないかと、そんなことを頭に浮かべながらふと後ろを振り返ってみた。

すると、そこには
見知らぬ50代くらいのおじさんが
僕の背後に、いつのまにか立っていたのである。

その時の僕はというと、(誰だろう?この人)くらいにしか思わず、僕が家の前の玄関に入ろうとするところまでついてきていた覚えがあった。

今となっては「よく自分は驚かなかったなぁ」なんて思ったりするのだが、よくよく思い返してみると

その方の足音が全く聞こえなかった覚えがある。

何が怖くて何が怖くないかなど、実に人によって違うのだなぁと、つくづく思う僕だった。

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