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新聞社と出版社の相性を探る①(新聞書評の研究2019-2021)

はじめに

筆者は2017年11月にツイッターアカウント「新聞書評速報 汗牛充棟」を開設しました。全国紙5紙(読売、朝日、日経、毎日、産経)の書評に取り上げられた本を1冊ずつ、ひたすら呟いています。本稿では、2019年から2021年までに新聞掲載された総計約9300タイトルのデータを分析しています

なんでそんなことを始めたのかは総論をご覧ください。

過去の連載はこちらをご覧ください。

出版社を書評頻度ごとに並べてみる

前回は、書評に関する新聞社間の「相性」を調べました。

今回は各新聞社と出版社との相性を探ります。まずは、書評された書籍が多かった出版社の50位までを表にしてみます。

読売新聞が一番多く紹介したのは新潮社の本で、211タイトルを紹介しています。これは読売新聞の全書評数の6.86%に当たります。
同様に、朝日新聞は講談社で165タイトル(5.16%)、日本経済新聞は中央公論新社で167タイトル(6.07%)、毎日新聞は岩波書店で130タイトル(6.85%)、産経新聞は文藝春秋で123タイトル(7.91%)でした。

頻出20位までの出版社を調べてみる

次に、新聞ごとに、上位20位までをまとめてみます。

おおむね各紙とも似たようなラインナップになっています。ただ、仔細に眺めれば、差異も読み取れます。いくつか目に付くところをピックアップしましょう。

小学館がない日経新聞

小学館は日経だけが上位20位に入っていません。

みすず書房、白水社がない産経新聞

産経新聞だけに、みすず書房と白水社が入っていません。

青土社は朝日新聞だけに

青土社は朝日新聞だけにランクインしています。

日経系列出版社は日経新聞だけに

日経の系列出版社は、日本経済新聞出版社、日経BPと日経BP日本経済出版本部です。実は、日本経済新聞出版社と日経BP社は、この連載が分析対象としている期間中の2020年4月に経営統合し、統合後の表記が「日経BP日本経済出版本部」ですので、実態としてはこの3つは同じ出版社です。3つをあわせると196タイトルとなり、トップの中央公論新社を大きく上回ります。

毎日新聞出版と藤原書店は毎日新聞だけに

毎日新聞出版は毎日新聞だけランク入り。藤原書店も毎日だけが顔を出しています。

産経新聞出版、扶桑社、PHP研究所は産経新聞だけに

産経新聞出版と扶桑社は産経系列です。産経新聞のベスト20にだけ入っています。日経系列に対する日経新聞、毎日新聞出版社に対する毎日新聞と同じですね。

なかなか味わい深い新聞と出版社の関係

頻出20位までのリストを見て思うのは、第一に、どの新聞社もだいたいは同じ顔触れの出版社を扱っているということです。第二に、新聞社ごとの差異が生まれる大きな要因は、系列出版社の扱いにありそうです。次回はもう少し詳しく調べてみます。


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