新聞メタ書評報「汗牛充棟」

大手5紙(読売、朝日、毎日、産経、日経)朝刊の新刊書評本(文庫化含む)を紹介するツイッ…

新聞メタ書評報「汗牛充棟」

大手5紙(読売、朝日、毎日、産経、日経)朝刊の新刊書評本(文庫化含む)を紹介するツイッターアカウントを2017年から運用しています。5紙すべてに掲載された本は必ず読みます。noteでは書評データの分析を行います。

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  • 新聞書評の研究2023年

    新聞書評の研究2023年です

  • 新聞書評の研究2022年

    2017年11月にツイッターアカウント「新聞書評速報 汗牛充棟」を開設しました。全国紙5紙(読売、朝日、日経、毎日、産経)の書評に取り上げられた本を1冊ずつ、ひたすら呟いています。本稿では、2022年に新聞掲載されたた総計3158タイトルのデータを分析しています。

  • 新聞書評の研究2019-2021

    2017年11月にツイッターアカウント「新聞書評速報 汗牛充棟」を開設しました。全国紙5紙(読売、朝日、日経、毎日、産経)の書評に取り上げられた本を1冊ずつ、ひたすら呟いています。本稿では、2019年から2021年までに新聞掲載された総計約9300タイトルのデータを分析しています。

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『ハンチバック』

2023年上半期の芥川賞受賞作です。 2019年から2023年の5年間で、5紙(読売、朝日、毎日、産経、日経)のすべての書評欄に紹介された小説は計11タイトルありますが、このうち、芥川賞作品は宇佐見りん氏の『推し、燃ゆ』と本作の2タイトルのみです。 頭をハンマーで叩かれたような読後感読んでいる間も、声をあげそうになったり、次のページをめくりたくなくなったり、顔をそむけたくなったり、それでいて掌の隙間から読んでみたくなったりしました。 ホラー小説でもスプラッタ小説でもない

    • 『言語の本質』

      「新書大賞」受賞の知的興奮にあふれた本全国紙5紙(読売、朝日、毎日、産経、日経)のすべての書評欄に紹介された書籍は、2019年から2023年の5年間で20冊余りですが、2023年は「当たり年」で、この年だけで7タイトルにのぼります。その中でも、本書は読みごたえのある一冊でした。2024年の「新書大賞」に選ばれるにふさわしい本だと思います。 本書に収録されたテストの一部です。全部で10問ですので、さらに興味のある方は本書でみていただければと思います。 これ、多くの人が7割

      • 『街とその不確かな壁』

        すでにして伝説2019年以降で、主要全国紙(読売、朝日、毎日、産経、日経)のすべての書評欄に、複数の書籍が紹介された著者は村上春樹氏ただ一人です。もう一冊は2020年刊行の『一人称単数』です。全紙に書評が載った本は2023年までの5年で21タイトルしかありません。 秋のノーベル賞シーズンになると、「その瞬間」を待つハルキマニアと呼ばれる人たちがテレビニュースの風物詩になってずいぶん経ちます。私(以下、評者)がロンドンに住んでいたころ、現地の大型書店の入り口に『ノルウェイの

        • 『82年生まれ、キム・ジヨン』

          男尊女卑に彩られた個人ヒストリー2023年に5紙に掲載された本の2冊目は韓国の小説です。 キム・ジヨンはタイトル通り、1982年生まれの女性です。2023年現在、40代前半ということになります。 姉と5歳年が離れた弟がいます。母が3番目の子を身ごもった時、周囲は今度こそはと男の子を期待しました。しかし、3人目も女の子でした。 ここから先は書籍の引用です。 生まれてきた弟は、家庭で特別に大事に、わがままに育てられます。そうした社会の中で生き、社会人となっても男性中心社

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          『聞く技術 聞いてもらう技術』

          2023年で初めて5紙(読売、朝日、毎日、日経、産経)全紙に書評が掲載された本です。 著者は臨床心理学者、臨床心理士・公認心理師だそうで、心の専門家です。 文章がとても柔らかくて、優しく語りかけられているような心地よさがあります。お人柄なのか仕事柄なのか、「この先生にはなんでもお話できそうだ」、と思わせるような文章です。まずそこに感心しました。 章立てが独特です。 「はじめに」に続いて、「聞く技術 小手先編」が始まり、「第1章 なぜ聞けなくなるのか」、「第2章 孤立か

          『聞く技術 聞いてもらう技術』

          『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』をAI生成画像で楽しんでみた

          『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』(川内有緒著)は、私(以下評者)の周囲ではとても評判がいいです。 全盲にもかかわらず、かたっぱしから美術館に電話をかけて、鑑賞を申し込んだという白鳥さんの発想力、行動力、キャラクターが突き出てますし、著者の川内さんをはじめとした白鳥さんを取り巻く仲間は双方向に刺激をし合う素晴らしい関係です。共生・包括社会のあり方に示唆を与えてくれます。美術品・美術展の見方を再認識したという友人もいます。 多方面から光を当てると、その方向にちゃんと

          『目の見えない白鳥さんとアートを見にいく』をAI生成画像で楽しんでみた

          掲載数ベスト①講談社②新潮社③中央公論新社④文藝春秋⑤岩波書店 の3紙以上に掲載された67冊(新聞書評の研究2022)

          はじめに筆者は2017年11月にツイッターアカウント「新聞書評速報 汗牛充棟」を開設しました。全国紙5紙(読売、朝日、日経、毎日、産経=部数順)の書評に取り上げられた本を1冊ずつ、ひたすら呟いています。 なんでそんなことを始めたのかは総論をご覧ください。 過去の連載はこちらをご覧ください。 書評に強い出版社2022今回は書評に登場した書籍の、版元別の頻度を調べました。過去の連載では、2019年から2021年までのデータについて以下の結果を得ています。 では、2022

          掲載数ベスト①講談社②新潮社③中央公論新社④文藝春秋⑤岩波書店 の3紙以上に掲載された67冊(新聞書評の研究2022)

          『ハレム』

          王朝の存続のための”合理的”システム2022年に全国5紙(読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、日経新聞、産経新聞)すべてに書評が掲載された書籍2冊のうちの1冊です。(もう1冊は『だまされ屋さん』☜クリックすると書評ページに飛べます)。 ハレムはハーレムという方がよく聞く名称かもしれません。著者の小笠原氏がいうように、多くの人が、 と思っていて、私(以下評者)もそうでした。本稿のタイトルに使っている書影の一部(数多くの裸体の女性が侍っているイメージ)を思い浮かべた人も多いかもしれ

          2022年の新聞書評キラー10人による34冊(新聞書評の研究2022)

          はじめに筆者は2017年11月にツイッターアカウント「新聞書評速報 汗牛充棟」を開設しました。全国紙5紙(読売、朝日、日経、毎日、産経=部数順)の書評に取り上げられた本を1冊ずつ、ひたすら呟いています。本稿では、2022年に新聞掲載された総計3158タイトルのデータを分析しています。 なんでそんなことを始めたのかは総論をご覧ください。 全紙に紹介された書籍やタイトルの分析など、過去の連載はこちらをご覧ください。 多くの書籍が紹介された著者今回は、2022年に書評に取り上

          2022年の新聞書評キラー10人による34冊(新聞書評の研究2022)

          「コロナ」を含む53冊の書評本(新聞書評の研究2019-2021)

          はじめに筆者は2017年11月にツイッターアカウント「新聞書評速報 汗牛充棟」を開設しました。現在は「新聞メタ書評報 汗牛充棟」という名前です。 全国紙5紙(読売、朝日、日経、毎日、産経=部数順)の書評に取り上げられた本を1冊ずつ、ひたすら呟いています。 なお、2019年~2021年のデータ分析は以下のマガジンにまとめています。 前回の連載では、書評で紹介された本のタイトルの分析から、大河ドラマと朝ドラが出版界に与える影響が大きそうなことを示しました。2020年と202

          「コロナ」を含む53冊の書評本(新聞書評の研究2019-2021)

          「大河ドラマ」と「朝ドラ」が与えるインパクト(新聞書評の研究2019-2021)

          はじめに筆者は2017年11月にツイッターアカウント「新聞書評速報 汗牛充棟」を開設しました。現在は「新聞メタ書評報 汗牛充棟」という名前です。 全国紙5紙(読売、朝日、日経、毎日、産経=部数順)の書評に取り上げられた本を1冊ずつ、ひたすら呟いています。 なお、本稿を含む2019年~2021年のデータ分析は以下のマガジンにまとめています。 前回の連載では、2022年の新聞書評面に紹介された本の特徴を示すキーワードが、「ウクライナ」と「ワクチン」であると分析しました。

          「大河ドラマ」と「朝ドラ」が与えるインパクト(新聞書評の研究2019-2021)

          2022年のキーワードは「ウクライナ」と「ワクチン」(新聞書評の研究2022)

          はじめに筆者は2017年11月にツイッターアカウント「新聞書評速報 汗牛充棟」を開設しました。現在は「新聞メタ書評報 汗牛充棟」という名前です。 全国紙5紙(読売、朝日、日経、毎日、産経=部数順)の書評に取り上げられた本を1冊ずつ、ひたすら呟いています。本稿では、2022年に新聞掲載された総計3158タイトルのデータを分析しています。 なお、2019年~2021年のデータ分析は以下のマガジンにまとめています。 今回は、2022年の新聞書評面に紹介された本の特徴をタイトル

          2022年のキーワードは「ウクライナ」と「ワクチン」(新聞書評の研究2022)

          ★2022年★4紙に選ばれた33冊(新聞書評の研究2022)

          はじめに筆者は2017年11月にツイッターアカウント「新聞書評速報 汗牛充棟」を開設しました。全国紙5紙(読売、朝日、日経、毎日、産経=部数順)の書評に取り上げられた本を1冊ずつ、ひたすら呟いています。本稿では、2022年に新聞掲載された総計3158タイトルのデータを分析しています。 #推薦図書 なんでそんなことを始めたのかは総論をご覧ください。 全5紙に掲載されたタイトルについてはこちらをご覧ください。 4紙紹介本は1%・33冊前回は、全国紙5紙全部に紹介された2冊

          ★2022年★4紙に選ばれた33冊(新聞書評の研究2022)

          『だまされ屋さん』

          2022年の5紙制覇本2022年に全国5紙(読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、日経新聞、産経新聞)すべてに書評が掲載された書籍2冊のうちの1冊です。もう1冊は『ハレム』。 <正しさ>をめぐる家族の群像・相克劇「アイデンティティー・ポリティクス」や「トライバリズム」(部族主義)という言葉が、社会に相互理解よりも分断をもたらすという文脈で、欧米社会では語られることが多くなりました。 同じ国民、同じ市民、同じ住民という共通する部分への対応よりも、性別や肌の色や性愛の指向や出身国な

          ★2022年★全国紙5紙に選ばれた2冊(新聞書評の研究2022)

          はじめに筆者は2017年11月にツイッターアカウント「新聞書評速報 汗牛充棟」を開設しました。全国紙5紙(読売、朝日、日経、毎日、産経=部数順)の書評に取り上げられた本を1冊ずつ、ひたすら呟いています。 なんでそんなことを始めたのかは総論をご覧ください。 全紙に掲載された2タイトル本稿で取り上げるのは、新聞掲載日ベースで2022年の書評データです。2020年以降に刊行された書籍を「新刊」と定めて対象にしています。既刊本の文庫化や復刊本、新訳版も新刊扱いしています。 同じ

          ★2022年★全国紙5紙に選ばれた2冊(新聞書評の研究2022)

          空爆の首謀者はアイヒマンとどう違うのか/『日本大空襲「 実行犯」の告白』を読んで

          はじめに筆者は2017年11月にツイッターアカウント「新聞書評速報 汗牛充棟」を開設しました。全国紙5紙(読売、朝日、日経、毎日、産経=部数順)の書評に取り上げられた本を1冊ずつ、ひたすら呟いています。本連載では、2019年から2021年までに新聞掲載された総計約9300タイトルのデータを分析しています。 今回は新聞書評と関係なく、お勧めの本を紹介したいと思います。 一昨年の夏に刊行された本ですが、今こそ広く読まれるべきだと考え、3月10日の東京大空襲の日を前に、感想めいた

          空爆の首謀者はアイヒマンとどう違うのか/『日本大空襲「 実行犯」の告白』を読んで