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★2023年★4紙に選ばれた37冊(新聞書評の研究2023)

はじめに

筆者は2017年11月にツイッターアカウント「新聞書評速報 汗牛充棟」を開設しました。全国紙5紙(読売、朝日、日経、毎日、産経=部数順)の書評に取り上げられた本を1冊ずつ、ひたすら呟いています。

https://twitter.com/syohyomachine

なんでそんなことを始めたのかは総論をご覧ください。

2023年に全5紙に掲載されたタイトルについてはこちらをご覧ください。


4紙紹介本は3020冊中の1.2% 

前回は、全国紙5紙全部に紹介された7冊の本を紹介しました。4紙に紹介されたのは37タイトルです。なお、ここで紹介されている本が、2023年以降に5紙目に紹介されるケースはあり得ます。

文芸作品は女性が圧倒していますね。また、

グレー地の部分

は、版元による紹介文です。ご参考に。

『励起 上下』

1930年代、理化学研究所・仁科研究室は規模を増し、宇宙線観測で海外の研究者と競りながら成果を上げ始める。国内の研究者ネットワークを拡充し、海外との情報交換も活性化 させていく。下巻ではさらに、湯川秀樹の中間子論の登場、巨大実験の時代の幕開けとサイクロトロンの建設、そして、仁科の名を永久に原爆に結び付けた軍事研究(二号研究)を経 て、敗戦・占領期の破壊と混乱を見る。そこから日本学術会議や種々の研究インフラを再建して科学界を国際的な研究コミュニティーに復帰させるために、仁科は文字通り粉骨砕身し た。本書は朝永振一郎をして「超人的」と言わしめた仁科の仕事の全容を浮かび上がらせるものである。そのために著者は、自身が発見した新資料も含め、仁科関係文献・書簡やGH Q関連文書などを渉猟し、この時期の歴史的事象を精細に再構築している。20世紀の日本の科学史を語るうえで避けて通れない書になると同時に、国内の科学者に関する“科学史的伝記”の文化を切り拓く意味でも、画期的な著作である。


『第三の大国 インドの思考 激突する「一帯一路」と「インド太平洋」』

2023年中に人口世界第1位に躍り出て、経済、軍事でも米中に次ぐ大国として存在感を増すインド。今まさに世界各地で覇権争いを繰り広げる二大経済圏構想のキープレイヤーで あるインドは、独自の論理で何を考え、どこへ向かうのか。


『インドの正体』

「人口世界一」「IT大国」として注目され、西側と価値観を共有する「最大の民主主義国」とも礼賛されるインド。実は、事情通ほど「これほど食えない国はない」と不信感が強い 。ロシアと西側との間でふらつき、カーストなど人権を侵害し、自由を弾圧する国を本当に信用していいのか?あまり報じられない陰の部分にメスを入れつつ、キレイ事抜きの実像を 検証する。この「厄介な国」とどう付き合うべきか、専門家が前提から問い直す労作。

関連本を以下に挙げておきます。


『ムラブリ 文字も暦も持たない狩猟採集民から言語学者が教わったこと』

あなたの「ふつう」をひっくり返す、異端の言語学ノンフィクション。

言語学もブームですね。いくつか関連本を挙げておきます。


『創造性はどこからやってくるか』

何も閃かない、ネタ切れ、考えが浮かばない、アタマが硬い、センスに自信がない…。悩んでいてもいいアイデアは湧いてこない。それはふいに降りてくるものだ。従来の科学モデルでは説明できない想定外で不気味なものを思いつき、作り出そうとする、計算不可能な人間の創造力。それはどこからやってくるのだろうか。生命科学、哲学、文学から芸術理論までを 自在に横断し、著者みずからも制作を実践することでみえてきた、想像もつかない世界の“外部”を召喚するための方法。


『ウクライナ動乱』

冷戦終了後、ユーラシア世界はいったん安定したというイメージは誤りだ。ソ連末期以来の社会変動が続いてきた結果としていまのウクライナ情勢がある。世界的に有名なウクライナ 研究者が、命がけの現地調査と一〇〇人を超える政治家・活動家へのインタビューに基づき、ウクライナ、クリミア、ドンバスの現代史を深層分析。ユーロマイダン革命、ロシアのク リミア併合、ドンバスの分離政権と戦争、ロシアの対ウクライナ開戦準備など、その知られざる実態を内側から徹底解明する。

ウクライナ関連本は数多いわけですが、いくつか関連本を紹介しておきます。


『正倉院のしごと』

奈良時代、光明皇后が聖武天皇遺愛の品々を東大寺大仏に献納したことに始まる正倉院宝物。落雷や台風、源平合戦や戦国時代の兵火、織田信長やGHQなど時の権力者による開扉要 求といった、数多くの危機を乗り越えてきた。古墳など土中から出土したのではなく、人々の手で保管されてきた伝世品は世界的にも珍しい。千三百年近くにわたり宝物を守り伝えて きた正倉院の営みを、保存・修理・調査・模造・公開に分けて紹介する。


『師匠はつらいよ 藤井聡太のいる日常』

週刊文春 連載エッセー100手収録。最強すぎる弟子と将棋の喜びをユーモラスに綴る!


『マザーツリー』

30年以上にわたり樹木たちのコミュニケーションを可能にする「地中の菌根ネットワーク」を研究してきた森林生態学者が明かす! 木々をつなぐハブとなる「マザーツリー」の驚くべき機能とは? 気候変動が注目されるいま、自然のなかに秘められた「知性」に耳を傾けよう。誰かとの「つながり」を大切にしたくなる、樹木と菌類の感動ストーリー!!


『千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話』

日本どころか千葉の実家の子供部屋からもほとんど出ない引きこもりの映画オタクの下に差し込んだ一筋の光、それはルーマニア語ールーマニア人3000人に友達リクエストをして ルーマニアメタバースを作り猛勉強、現地の文芸誌に短編小説を送りつけ、『BLEACH』の詩へのリスペクトと辞書への愛憎を抱きながらルーマニア語詩に挑戦する。受験コンプ レックス、鬱、クローン病。八方塞がりの苦しみから、ルーマニア語が救ってくれた。暑苦しくって切実で、好奇心みなぎるノンフィクションエッセイ。千葉の片隅から、魂の故郷・ ルーマニアへの愛を叫ぶー。本、映画、音楽…ルーマニアックのための巻末資料も収録!


『体はゆく できるを科学する〈テクノロジー×身体〉』

「できなかったことができる」って何だろう?技能習得のメカニズムからリハビリへの応用までー「できる」をめぐる体の“奔放な”可能性を追う。日々、未知へとジャンプする“体の冒険”がここに。


『きしむ政治と科学 コロナ禍、尾身茂氏との対話』

福島第一原発事故、さかのぼれば薬害エイズ、水俣病…。専門家による政府への科学的助言はいつも空回りした。このコロナ禍でもまた、政治と科学(専門家)は幾度も衝突した。専門家はその責任感から自らの役割を越えて「前のめり」に提言したこともあった。専門家たちは何を考え、新型コロナに向き合ったのか。政治と科学の間には、どのようなせめぎ合いが あったのか。そして、コロナの教訓を新たな感染症の脅威にどう生かすのか…。尾身茂・新型コロナウイルス感染症対策分科会長への計12回、24時間以上にわたるインタビューを通じ、政治と科学のあるべき関係を模索する。


『リベラリズムへの不満』

『歴史の終わり』から30年、自由と民主主義への最終回答。左右両派からの攻撃によって、私たちを守る「大きな傘」が深刻な脅威にさらされている。その真の価値を原点に遡って 解き明かし、再生への道を提示する。


『焼き芋とドーナツ 日米シスターフッド交流秘史』

「胃袋」から近現代史を描き直す歴史地理学者が、「なかったこと」にされてきた日常茶飯の世界と、実は主体的だった女性労働者の実像を蘇らせる。間食から紐解く人間交流史。


『化け込み婦人記者奮闘記』

下山京子(大阪時事新報)婦人行商日記 中京の家庭ー雑貨の行商人に変装し、富裕な家庭の荒んだ私生活を暴露。中平文子(中央新聞)化込行脚ヤトナの秘密と正体ー違法営業の「 雇仲居」に潜入、客として来た男性記者と鉢合わせ。小川好子(読売新聞)貞操のS・O・S-婦人記者の誘惑戦線突破記ー上司から命を受け、ナンパ危険地帯の上野公園に送り込まれる。日本の新聞黎明期。女だからと侮られ、回ってくるのは雑用ばかり。婦人記者たちは己の体一つで、変装潜入ルポ“化け込み記事”へと向かっていったー。


『戦争とデーター死者はいかに数値となったか』

戦場での死者数は、第2次世界大戦後、内戦やゲリラ戦が主流となり、国家による把握が難しくなった。異なる数字が発表され、国連が機能不全に陥る中、法医学や統計学を取り入れ た国際的な人道ネットワークが台頭してきている。本書は、特にベトナム戦争からウクライナ戦争までの死者数、とりわけ文民死者数の算出に注目。国家や武装勢力の軋轢や戦乱の中 、実態把握のために「ファクト」がいかに求められるのか、苦闘の軌跡を描く。


『トランスジェンダー入門』

トランスジェンダーとはどのような人たちなのか。性別を変えるには何をしなければならないのか。トランスの人たちはどのような差別に苦しめられているのか。そして、この社会に は何が求められているのか。これまで「LGBT」と一括りにされることが多かった「T=トランスジェンダー」について、さまざまなデータを用いて現状を明らかにすると共に、医 療や法律をはじめその全体像をつかむことのできる、本邦初の入門書となる。トランスジェンダーについて知りたい当事者およびその力になりたい人が、最初に手にしたい一冊。


『京都』

なぜ日本の中心都市から脱落したのかーー異色の京都論! 「空襲がなかったから古い町並みが残る」「京料理は伝統的和食の代表」「職住一致が空洞化を防いだ」「魅力的景観は厳しい保護策のおかげ」--これらの印象論は本当に正しいのか? 地元の「洛中」礼賛一辺倒に疑問を持つ京大出身の経済学者が、「千年の都」が辿った特異な近現代の軌跡を、統計データを駆使して分析する。


『戦国日本を見た中国人 海の物語』

一六世紀なかば、日中関係は緊迫していた。荒ぶる倭寇と密貿易に苦しむ明朝皇帝の命を奉じて、無位無冠の侠士・鄭舜功は広州を出航し、日本へ向かう。その見聞記『日本一鑑』で 鄭舜功は、庶民の生活習慣から、大量に輸出される日本刀の精神性、切腹の作法、男女の人口比まで、公平な目で日本人を観察している。そして、詳細な航路の記録は、当時の混乱す る政治と軍事状況を反映し、「海の戦国時代」を描き出す。


『基地国家の誕生』

1953年1月31日当時、日本国内733ヵ所に米軍基地が展開していた。朝鮮戦争の「前線基地」であり「生産基地」や「後方基地」としても戦争に参画した日本。日本政府、旧 軍人、右翼、左翼、学者、ジャーナリスト、マスコミ、そして大衆は、米軍基地とどう向き合ったのか?


『吉右衛門』

歌舞伎の世界に現代にも通じる「人間」を発見し、先人からの型を身体化すると同時に、現代的な意味を付与した吉右衛門。近代から現代へと歌舞伎の歴史的な転換を体現した。細部 にこそ神が宿る吉右衛門の舞台の景色を描いて、その芸を後世に伝える。


『気候崩壊後の人類大移動』

東京は亜熱帯化し、サハラ砂漠はヨーロッパまで拡大し、ニューヨークは水没する…10億人規模の移住を迫られる近未来。


『おれに聞くの?』

芥川賞作家がソファーで猫と考えた「生き方」「書くこと」「人間関係」。


『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』

「何もしなければ余命は半年ですね」ガンの転移が発覚し、医師からそう告げられたのは、2020年12月のこと。だが、その日が来る前に言葉にしておくべきことがある。創作や 社会運動を支える哲学、坂本家の歴史と家族に対する想い、そして自分が去ったあとの世界についてー。幼少期から57歳までの人生を振り返った『音楽は自由にする』を継ぎ、最晩 年までの足跡を未来に遺す、決定的自伝。著者の最期の日々を綴った、盟友・鈴木正文による書き下ろし原稿を収録。


『絵画の素』

こんな絵があったのか!絵をみることは、そのたびに絵を新たに発見すること。何かを生み出すことは、よりよく思い出すことー作家みずから“創作の秘密”を語る魅惑的なエッセイは 、古今東西、煌めく星座のような作品群の宇宙をめぐり、思いもよらなかった繋がりを解いてゆく。今まで知らなかった傑作を、著名な歴史的名作を、新たに発見する驚きと悦び。未 知の傑作に出会う至福。もうあなたはこの絵を、忘れることができない。


『文学は地球を想像する』

環境問題を考える手がかりは文学にある。ソロー、石牟礼道子、梨木香歩、アレクシエーヴィチ、カズオ・イシグロらの作品に、環境をめぐる文学研究=エコクリティシズムの手法で 分け入ろう。人間に宿る野性、都市と絡み合う自然、惑星を隅々まで学習するAI-地球と向き合う想像力を掘り起こし、未来を切り開く実践の書。


『香港陥落』

1941年11月、日本軍政前夜の香港。暗い過去を秘めた日英中の男3人がペニンシュラ・ホテルに集い、飲み、食らい、語り合う。やがて夜は更け、歴史が動き始めるー。守るべ きは祖国か、個人の矜持か。時代の狂風に翻弄される男たちの愛と友情と苦悩を、哀切を込めて描きあげる、新たな傑作!


『成瀬は天下を取りにいく』

「島崎、わたしはこの夏を西武に捧げようと思う」中2の夏休み、幼馴染の成瀬がまた変なことを言い出したー。新潮社主催新人賞で史上初の三冠に輝いた、圧巻のデビュー作!


『恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ』

小説家のわたし、離婚と手術を経たアン、そして作詞家のカズ。カリフォルニアのアパートメンツで子ども時代を過ごした友人たちは半世紀ほど後の東京で再会した。積み重なった時
間、経験、恋の思い出ー「年とるのって、いいじゃん」じわり、たゆたうように心に届く大人の愛の物語。


『台湾漫遊鉄道のふたり』

昭和十三年、五月の台湾。作家・青山千鶴子は講演旅行に招かれ、台湾人通訳・王千鶴と出会う。現地の食文化や歴史に通じるのみならず、料理の腕まで天才的な千鶴と台湾縦貫鉄道 に乗りこみ、つぎつぎ台湾の味に魅了されていく。ただ、いつまでも心の奥を見せない千鶴に、千鶴子の焦燥感は募り…国家の争い、女性への抑圧、植民地をめぐる立場の差。あらゆる壁に阻まれ、近づいては離れるふたりの旅の終点はー。


『黄色い家』

2020年春、惣菜店に勤める花は、ニュース記事に黄美子の名前を見つける。60歳になった彼女は、若い女性の監禁・傷害の罪に問われていた。長らく忘却していた20年前の記 憶ー黄美子と、少女たち2人と疑似家族のように暮らした日々。まっとうに稼ぐすべを持たない花たちは、必死に働くがその金は無情にも奪われ、よりリスキーな“シノギ”に手を出す 。歪んだ共同生活は、ある女性の死をきっかけに瓦解へ向かい…。善と悪の境界に肉薄する、今世紀最大の問題作!


『白鶴亮翅』

ベルリンで一人暮らしをする美砂は、隣人Mさんに誘われて太極拳学校へ。さまざまな文化的背景の人びととの出会い、第二次大戦前後のドイツと日本の歴史に引き込まれ、名作を女 性の視点で読み直す。


『ケチる貴方』

「冷え性」と「脂肪吸引」。いま文学界が最も注目する才能が放つ身体性に根差した問題作!第44回野間文芸新人賞候補となった表題作と第38回大阪女性文芸賞受賞作を同時収録


『世界でいちばん透きとおった物語』

大御所ミステリ作家の宮内彰吾が死去した。宮内は妻帯者ながら多くの女性と交際し、そのうちの一人と子供までつくっていた。それが僕だ。「親父が『世界でいちばん透きとおった 物語』という小説を死ぬ間際に書いていたらしい。何か知らないか」宮内の長男からの連絡をきっかけに始まった遺稿探し。編集者の霧子さんの助言をもとに調べるのだがー。予測不 能の結末が待つ、衝撃の物語。


『流れる島と海の怪物』

きっかけはファウルフライ。いったいなんの因果で、何事も起らない筈の世界にこうも様々な面倒が次から次に生れるのか。母に連れられていったお屋敷で、朱音と朱里という二人の 神秘的な姉妹に出会った。母はなぜ「俺」を姉妹に会わせたのか。それは、母の姉である福子から聞いた、自分の出生にまつわる信じられないような秘密と、朱音たちの母の故郷であ る「流れる島」にまつわる悲しい神話に結びついていたー。


『いなくなっていない父』

時に不気味に、時に息苦しく、時にユーモラスに目の前に現れる親子の姿をファインダーとテキストを通して描く、ドキュメンタリーノベル。


『腹を空かせた勇者ども』


私ら人生で一番エネルギー要る時期なのに。ハードモードな日常ちょっとえぐすぎん?ーー陽キャ中学生レナレナが、「公然不倫」中の母と共に未来をひらく、知恵と勇気の爽快青春長篇。


以上でした。ここまで読んだ方はお疲れさまでした。


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