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暫定プロダクトオーナー見参!(前編)【SaaSビジネス経験談 #12】

シナジーマーケティングのプロダクト「Synergy!❐」に関わる様々な職種のメンバーが、自身の経験を元に、ビジネスに役立つ情報をお送りします。 今回の筆者は、Synergy!のプロダクトオーナーです。2005年のリリースから歴史を重ねるSaaSプロダクトをさらに進化させるために、何を考え、どんなことをしたのか。今回はそんな裏話の前編です。


 

こんにちは、Synergy!の前プロダクトオーナーの岡村です。

そもそも御社の舵取り役は誰やねん、のリクエストにお答えして、弊社のプロダクトオーナーについて書きたいと思います。

のっけからエクスキューズですが、タイトルにある「暫定」は自称です。
なんか釣りっぽくてすみません。私の在任期間としては2020〜2023年の約3年間、さまざまなことに取り組んできました。

順をおって、なぜ「暫定」なのか、このあたりも含めてお話していきます。

3年間、いろいろありましたので、前後半の2部構成にします。
興味があるところからお読みいただけると幸いです!

前半:背景
後半:やったこと(後編は
こちら


●  まずは定義から

まず「プロダクトオーナー(PO)」というポジションについて説明をします。このプロダクトなんとか……というロールは、企業、人によって(?)、求められる能力も多種多様、つかみどころがないのが特徴です。

ジョブタイトルから想起しやすいのは、スクラム開発におけるプロダクトオーナーですね🚀。

スクラム開発におけるPOは、プロダクトの方向性を示し、バックログを管理し、開発進捗を管理し、ユーザニーズを深堀りし、要件を整理し、ステークホルダーとの折衝、調整を行い、、、いわばプロダクト開発におけるプロフェッショナルです。企業によっては、この役割を複数人で行う場合もあります。

スクラム開発に限らず、半分ビジネスサイドのプロダクトの舵取り役、プロダクトマネージャーを同じ意味のポジションとして挙げることもあります。

それ故に、企業、サービス規模、事業ステージ、企業文化によって、ジョブディスクリプションも、呼び名もさまざま。PdM、PO、PMなどなど、もはやchaos(ケイオス)😉

さて、そんなPO、現時点で弊社ではどんなポジションなのか。それは、

事業責任者と並走するサービスとプロダクトの責任者

だと定義付けています(私が)。実は弊社におけるこのポジションは長い間、非常に曖昧でした。そこで、POとはステークホルダーとの折衝、調整はしつつ、信頼できるチームを作り、情報を集め、バランスの取れた意思決定を行うポジションとしました。
絵にするとこんな構図でしょうか。

(クリックすると大きくなります)

売上責任は厳密には持っていません。ただし、サービスとプロダクトの「品質」においては全責任を担っています。
品質とは「事業を推進する者が求める過不足無いサービスとプロダクトを提供し続けること」を指します。
事業を推進する者が求める過不足無い……とは、既存のお客様の満足度、利便性を向上させ、まだ利用前のお客様の課題を適切なROIで解決できるもの、そして事業成果として正しい経済性で続伸している状態を指します。

もう定義だけで息切れしてきました。なぜ暫定でこのポジションを改めてアサインしたのか、ここの説明に移っていきましょう💨

●  アサインの背景

私が担当しているのは、「Synergy!」というクラウドサービス&プロダクトです。本製品は2005年にリリースされました。昨今のBtoB SaaSの活況を見渡しても、18年経過してもARR17億円を稼ぎ出すという、化け物プロダクトだと言っても過言ではありません。

SaaSという言葉が一般的ではない時代、そう、ASP(Application Service Provider)と呼ばれた頃にSynergy!は産声をあげました。大手企業が自前でシステム構築を行い、デジタルマーケティング(主にデーターベース、メールマーケティング)のハシリを実現している状態です。
※今回は細かなサービス説明をしません。サービスサイトをご覧ください。

ウリ文句は、

A.システムリソースをサービス利用企業で共有をすることで、初期費用を抑え、成果を上げるほうに時間とコストが使えます!

B.集客や新規顧客獲得より、一度接点があった消費者に対してのコミュニケーションのほうが、ブランドとしても正しく、マーケティングROIの適正化が図れます!

 

といった具合です。とても本質的で正しいアピールであり、イケてる商いだと感じます。今となっては「1:5の法則」はよく知られたマーケティング用語ですね。
ただ、とてもとても正しいが故に、プロダクトの進化に枷を負うことになったのです。

●  脱皮できないジレンマ

ITの世界はドッグイヤーとよく言われますワン🐕。
長きに渡り生きていくためには、既存の強みを分解し、それをベースとして、別のサービス(または互換しあう製品群)にピボットさせる戦略がとても重要になってきます。

ご多分に漏れず、弊社もここで苦戦をしてきました。
初期ローンチ時に設定した価値が、論点がボヤけるほど大きすぎず、局所的な課題解決のように小さすぎず、普遍的に感じるほどに適切すぎたため、自分たちを否定することができずに十数年の時を過ごすことになります。
(ちなみに原始のプロダクトオーナーは創業者の谷井です。初期コンセプトを見返すと、彼の凄みを感じる瞬間でもあります。あのオジサン恐ろしいわ……。)

あらためて、当時設定した価値、強みと、経年による不都合を見てみましょう。

「A.システムリソースを……」

これは時代の技術革新とともに優位性が落ちてきます。シェアする思想は経済性も高く、ソフトウェアに限らずさまざまな分野で優れたビジネスモデルを確立しています。一方で、ソフトウェア開発においては、一定成熟したフレームワークやモダンな言語、利便性高くラップされた環境が、続々と世に放たれていきます。これによりコストを抑え、分業を行い、ゼロからモノを作るスピードが格段に上がりました。

当然、弊社も恩恵を受けているのですが、これはBtoB ソフトウェア自体の参入障壁が下がり続けること、製造コスト的に優位な競合他社が増えることを意味します。日本の99%を占める中小企業※をターゲットにシステムシェアを打ち出していく我々は、レッドオーシャンに突入していくのです
※出典:独立行政法人 中小企業基盤整備機構

「B.集客や新規顧客獲得より……」

効果的なデジタルマーケティング施策は、すでに多くの顧客リストを保有している企業が対象です。ほどほどの集客力がないとコミュニケーション対象が限定的になります。少し極端にいうと、ある程度の顧客の新規流入がないと成立しないのです。

一般的に売上とは、顧客 × 単価 × 購入回数 です。
(SaaSでは利用期間、解約率が大切ですね)
LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を上げるための手段が我々だとします。顧客満足度を向上させれば長期的なお付き合いになり、ブランドの良さが伝わりエンゲージメントが上がれば、売上貢献も甚大なものに……!となりたいところですが……。

年々複雑化するマーケティング手法において、CRMはその中の1つの施策としての期待効果であり、すべてのデジタルマーケティングを網羅するソリューションにはなり得ません。新規顧客、特にWebからの流入をどうスムーズに扱うか、ここが欠かせないピースとなってきています。

プロダクトの価値を変えずにいると、帯に短し襷に長し。ターゲットとなる企業やブランドが限定的になっていきます。課題を解決するために生み出したサービスは、いつの間にか売れる所を求めてそぞろ歩くことになるのです。

これが時を経て、自ら設定した強みが枷となるという実態です。
昔から事業を営んでいたことにより、システムの保守コストが膨れあがっていきます。新しい価値を作る動きが遅くなり、機能、価格競争に巻き込まれて、競合の後塵を拝することになります。
それだけでは収まりません。組織に影響が及びます。売りたいが故に個社対応を迫られ、背に腹は代えられない状態が生じます。
正しいプロダクトマネジメントサイクルは壊され、部分最適による職能組織間の対立が起こり、もはや諦めが蔓延することになります
(あ、別に弊社の組織が崩壊してるとかではないですよ……汗。苦しんだということです。)

●  変革が必要だ

そんな苦しみを抱えつつ、2019年当時、職能別で組成された3つの組織がクラウドビジネスを担っていました。職能組織は、ある程度の人数でビジネスを回すためには必要なことです。
ビジネス系、マーケ系、そして開発系の3つ。それぞれの長がオーナーシップを発揮し、物事がスムーズに……進むには、いくつものハードルがありました。なにが起きたかというと、三竦み状態が起こります。
当時の私は口が悪く、この状況をこう表現していました。

「他責的保守迷走」

もちろん、保守的に積み上げてきた実績は強みとも言えます。
個人情報をお預かりするビジネスである以上、お客様の資産を危険に晒すことはできません。その考えのもと、堅牢なシステムの構築はできていました。セールスをはじめとするビジネス側では、いまある機能を使い倒し、機能実装を待たずにオリジナルソリューションを産み出して、お客様のビジネスに伴走するスタイルも確立していっていました。

そう、社内にそれぞれの立場でプロダクト愛が溢れていました。ただし、お互いの立場をわきまえつつ…、ここが大きな課題でした。

この状況を打破するために、変革を担うオーナーシップを持つポジションが必要となったのです。

ちなみに、その時の私の社歴は、

・ SI×CRM案件のSI側のPM
・ 大手メディアデータビジネスのプリセールス、事業開発
・ 広告販売における事業開発、組織化
・ 協業アライアンス推進

と、ほぼ弊社のクラウドビジネスには関与をしていません。
ただ社内で唯一、ビジネス × 開発 × 変態 の製販一体組織を率いたため、本店(大阪)の会議で白羽の矢が立った(飛んできた?)のでは?と思っています。

●  なぜ暫定?

残る謎は「暫定」という部分ですね。

事業責任者と並走するサービスとプロダクトの責任者
だと定義付けています(私が)

↑ここ気になった方、鋭いですね。頭脳明晰なみなさん、ぜひ弊社で一緒に働きましょう!We are hiring!❐ 

前述の通り、必要なポジションだったのは明白です。しかし、白羽の矢に括り付けられていた矢文には、「POを任せた」ではなく、「なんとかしてくれ」と書いてあったのです。実はこれが私に課せられたミッションでした。

2020年、アレヨアレヨと言う間に、プロモーションすることになり、取締役 兼 事業責任者として、この枷を外す作業に着手します。

クラウドサービスを提供するためにマストであると認識をしていた、いくつかのポジションのアサインを先に行いました。
そして、私自身も3つ目の兼務、兼プロダクトオーナーが爆誕する運びとなったのです。

当然、1人ですべてを完璧にこなすことはできません。
でも、自らやるべきだ…!という自身の想いもありましたので、最適解を探す間、一旦「暫定」という形をコッソリ取っていたのでした。

さて、前段の紹介だけで十分長くなってきました。
具体的に何をやってきたのかは後半に

一端を弊社CTOの記事で予習も可能です 👀


【SaaSビジネス経験談】では、今後、下記の記事を公開予定です!気になる記事がございましたら、ぜひ「シナマケのプロダクト」をフォローして、公開通知をお受け取りください


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