見出し画像

あまいアマイ

ポストを開けたら

ひらりと葉書が舞い落ちた

遠くにいる ぼくのともだちからの絵はがきで

美味しそうなあんみつの絵が書いてある


ともだちの想い出話を読んでいたら

ぼくも何だか そわそわしちゃって

あんみつが食べたくなってしまった


雲がすっぽり蓋をして ぼくは蒸し焼き

ジリジリ焼かれて 霧雨の蒸気もあがる

もう前髪が言うことを聞かないので

散歩がてら 新しいお店を探す計画は諦め

なかば適当な気持ちで

絶対にあんみつがあると知っている

その昔 母に連れられてきたお店に入って

メニューを見るのもそこそこに

「あんみつください。」と注文した


椅子に座って見渡すと

お客さんはみな

かぐや姫でも見つけたかのように

こっそり手元で輝く

涼しげな『あんみつ』を見つめている

美人さえ頬を赤らめるほど

慎ましやかに 魅力的なようだ


ぼくも早く

あんみつ姫を迎えたくて

そわそわ落ち着かない手を

太ももの下に挟んだ


輝く寒天を連れて

姫は行儀良く お盆の上で

三つ指をついて お出ましになった

画像1

口に運ぶ時 少し唇が震えるくらい

彼女は気品があって

そして 驚くほど 甘美だった

昔は気づかなかった 年上の古風な魅力に

圧倒されたような気分で

ぼくは食べ終わるまで ドキマギした

(適当に選んだことは…いつまでも秘密)



あまいアマイ 逢瀬は終わり

気付けば汗はひいていた

なんだか あの一口の余韻で

うん 明日も頑張れそう


“月に帰る前に また会いたいな”






































葉書をくれた ともだちの

心をふいに きゅっと掴まれるみたいな

ナチュラルで素敵な文章と

ぼくのこんなグズグズ話では

ちょっと温度差がありすぎるけど

へへっと鼻で笑ってくれるだろうか

いや、気持ち悪がられるかな

この記事が参加している募集

至福のスイーツ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?