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#海外文学のススメ

『平原の町』を読んだ

『平原の町』を読んだ

 『平原の町』を読み終えた。これで、コーマック・マッカーシーが手掛けるいわゆる「国境三部作」をすべて読み終えたことになる。前作の『越境』が人間の心根を探るような難しい物語であったので、最後はさらに難しい者仕上がるのだろうかと身構えていたが、そんなことはなくストレートなラブ・ストーリーに仕上がっていた。それ故に読みやすく一貫して楽しめるものであった。
 何度かマッカーシーの作品に付き合って朧気ながら

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『越境』は何を超えたのか

『越境』は何を超えたのか

 コーマック・マッカーシーの『越境』を読んだ。大変素晴らしい完成度で感嘆の声が漏れるばかりであった。しかし、この『越境』は以前に読んだマッカーシーのどの作品よりもかなり難解で、意図がつかみにくい場面に何度か出会った。はじめに読んだ『ノー・カントリー・フォー・オールド・メン』では、引用符を用いない会話の緊張感のことを書いた。『ブラッド・メリディアン』では、風景描写の美しさのことを書いた。『すべての美

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『兵士の報酬』の感想を当時の感性で済ませるな

『兵士の報酬』の感想を当時の感性で済ませるな

なにか本を読んだあとに自身の考えをまとめ今こうやっているように文章を拵えたりしているのだが、他人の感想というのを全く目にすることがない。それもそのはずで、他人の感想により自身が考えた感想に何かしら影響を与えるのではないかと、一抹の不安を抱えている。僕の僕による僕のためだけに考え抜いた感想が、他人の秀逸な言葉遣いにより上塗りされてしまっては目も当てられない。極端な言い方をすると感想を凌辱されてい

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コロ助は『ロマン』を読んだ。

コロ助は『ロマン』を読んだ。

ウラジーミル・ソローキンは自身の著である『ロマン』を「よく書けたテクスト」と評している。この『ロマン』という作品を読んだ後に、彼の言うところのテクストは一体何のかについて考えている。
本作ははっきり言ってかなり退屈な作品である。これは作品自体がつまらないというわけではなく、自身の勉強不足によるものだ。なので、ロシア文学の有識者であれば、十九世紀ロシア文学の隙のない文体模写や精密な内面描写や人

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