見出し画像

お笑い好きの僕が独断で選んだ芸人のエッセイおすすめ7選

芸人が書くエッセイが好きだ。

書店とかに並んでるのを見るとつい気になって買ってしまったり…
お笑いナタリーで芸人が書くエッセイの新刊が出るという記事を見ると、なんとなく発売日までソワソワしてしまう。

テレビやライブで活躍する芸人たちの内面や違った一面に近づける感覚があって、その苦悩や思慮の深さにグッと来てしまう。

芸人が普段見せない「人間」としての側面を垣間見ることができるから、僕はエッセイに心惹かれるんだと思う。

そんな芸人エッセイ好きの僕が今まで読んできた中で、特に好きな本7冊をお薦めする。



1. 完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込 (角川文庫) 若林正恭

中学時代に初めて読んで感動した

まさに僕の中で「原点にして頂点」。それまでエッセイなんて読んだことすらなかったけど、これをきっかけに、芸人が書いたエッセイを読むようになった。

自分の悩みを同じように感じている人がここにもいて、そのうえ自分なりの答えにたどり着いている人がいるなんて!

M-1グランプリで売れたあと、”社会人”としての一歩を踏み出した若林さんが「社会」で感じた憤りや困惑をつづったエッセイ。ページが進むごとに、”自意識”に苦しみながらも社会との折り合いをつけながら、”大人”に成長していくさまに感動する。

その後出版された「表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬」も「ナナメの夕暮れ」ももちろん好きなんだけど、この本は特に好きだ。

本の前半で伝わって来る「若さゆえの荒々しさ」から、本の後半で伝わってくる「社会への一種の諦念」という大人へのグラデーションが見て取れるからだ。

僕が共感できるものもあれば、そうでないものもあったけど、
そうでないものは今後自分にとって悩みになることなんだろうなって直感で思った。

もし仮に今後僕が、その悩みにぶつかったとしても、若林さんなりのヒントがそこに書いてあるから僕は安心して生きていられる。若林さんが先回りして、道しるべを示してくれているからだ。

悩んだとき、いつも読み返すのはこの本だし、そういう意味で僕のバイブルである。自意識過剰や人見知りの僕を受容してくれる。ちなみに、個人的に一番好きなエピソードは「大丈夫だよ」。

2. 東京百景 (角川文庫) 又吉直樹

現実とフィクションを行き来するエッセイ。

その境界線が曖昧で、読んでいて不思議な感じがする。嘘みたいな本当の話本当みたいな嘘の話が入り交じっていて、どれが本当か見分けがつかない(笑)

吹き出してしまうほど面白いやり取りがあったかと思えば、つい泣いてしまう話もあって、感情が振り回される。

だけど、それが心地良い。ずーっとつかみどころがないのに、「なんか良かったな」という読後感がある。

エピソード自体が面白いのはもちろん、一文一文もしっかり刺さってくる。

例えば、この一節。

手の平に大切そうにハトを乗せている女性の像なのだが、頭部に本物のハトの糞が付いていた。愛するハトに真っ向から裏切られている状態だ。世界はこんなことばかりだと思った。

確かにそんな世界なんだけど、それでも生きていく又吉さんの思いが文章全体から伝わってくる。

「東京百景」という題名の通り、東京のあらゆる場所と関連した又吉さんのエピソードが語られている。東京住みの方は、その情景を思い浮かべたり、実際の場所を巡ることも出来るはず。

ぜひ、本書を片手に東京の地を巡ってみては。

3. 「松本」の「遺書」 (朝日文庫)  松本人志

”松っちゃん”とはいえ、ここまで大口叩くのか~!!と驚いた(良い意味で)。

たぶん今これ書いたら、各テーマほぼ全部炎上するレベルだと思う。
昔の時代の芸人は皆「尖ってた」とか言うけど、にしても尖りすぎだって!

時代の影響も当然あるし、それだけの実力がお笑い芸人”松本人志”にはあったんだと感じた。このエッセイは1993年から2年間「週刊朝日」で連載されたものがまとめられており、当時30歳の松本さんの考え方を知れるのは貴重。

この本に影響されて、芸人を目指し、実際今活躍している人も多いと聞く(スピードワゴン小沢さん、野田クリスタルさんなど)。それだけの影響力を誇っていた人が、今も現役でトップに君臨しているのスゴいとか超えて、もはや異常ですけどね(笑)

また、当時の言っていることと現在やっていることが全く違うのも興味深い。タバコは止めるわ、結婚はするわ、もはや何を信じたらいいか分からないレベル(笑)。

でも、つい最近、当時の松本さんの片鱗を見る機会があった

2021年の5月に放送された「ボクらの時代」で話していたのだが、松本さんの娘さんがバレエの発表会でスタッフを軽視するような態度をとったことがあったらしい。

そのとき、娘に対し母親は「軽視するような態度をとるべきではない」というスタンスで怒ったが、それを見た父親である松本さんは娘に「横柄であれ」という真逆のスタンスで話したそうだ。

「もちろんスタッフへの感謝は必要だけど、それは後々身に付ければいいことで、幼い時から周りに萎縮して気を遣っていたらトップにはなれない」とのこと。

確かにそれも一種の真理だと思うし、番組に共に出演していたさだまさしさんも「いろんな考えを受けたほうがいい、両親から全く違う考えを聞けたのは良い経験」との立場を示していた。

こんな風に今の”松本人志”と昔の”松本人志”の共通点や相違点を探しながら、読んでいくのも面白いかもしれない。

4. 天才はあきらめた (朝日文庫) 山里亮太

冒頭のピザの話がめちゃくちゃ好き。

テレビの現場で結果を残せずにいた山ちゃんは、「食事をしている間は仕事のことを考えなくていい」という自分ルールを作った。すると、食べた記憶は全くないのに身に覚えのないデリバリーのピザの空き箱が置いてあることが時々あった、という話。

この話は、それほどまで自分を追い詰める山ちゃんのストイックさを象徴している。

そして、そんなどん底の時代から復活する話ももちろん好き。それは、本書を読んで確かめてほしい。芸人同士の熱い関係っていいなって思える。

山ちゃんのストイックさに言及した記事も書いているので、こちらもお願いします!


5. 復活力 (幻冬舎文庫) サンドウィッチマン

この本を読むと、サンドウィッチマンくらい面白い芸人でもなかなか売れることはできないんだと痛感する。

本書に書いてある中学・高校のエピソードを読んでみると、その当時からしっかり面白い。

だけど、それでも売れるのに時間がかかったのは、いくら本人たちが面白くても、その伝え方や魅せ方の技術はまた別で鍛える必要があったのだろう。

また、僕が興味を持ったのが、
「あとがきにかえて」で出てきた伊達さんの言葉。

オードリーとかウーマンラッシュアワーとか、予想できないすごいスタイルの漫才師が続々と出てきた。芥川賞受賞で社会現象になった、ピースの又吉直樹君とかさ。

この文に出てくるのが、全員2000年デビューの同期なのが興味深い。

この他にも、

今や絵本作家とYoutuberのコンビのキングコングも、

ツッコミ主流の漫才の流れの先駆けとなった南海キャンディーズも、

「ヤホー漫才」で有名になったナイツも、

筋肉芸人の道を切り拓いた、なかやまきんに君も、

このように独自路線を行く芸人たちがみんな同期なのだ。

とんねるずやダウンタウンに憧れて芸人の世界に入ったものの、その憧れの存在にはなれないという挫折の中で、自分たちのスタイルを確立していったのだろう(と勝手に思っている)。

上の世代やお笑い第7世代にはない”屈折した卑屈さ”みたいなものに僕は惹かれてしまう。(きんに君に卑屈さはないけど、めちゃくちゃ好き)

サンドウィッチマンの話に戻すと、この本は
「諦めなきゃいけないほど、本気でやったのか?」

と考えさせてくれる本です。

M-1の裏話とかも知れるので是非。

6. 僕の人生には事件が起きない 岩井勇気

「何も起きない日常を面白く」がコンセプトの一冊。

この本に書いてあることはあんかけスープ飲んだり、現代アートのペンギンを見ている”だけ”なのである。

それなのに、ここまで面白い(興味深い)文章書くことってできるんだ!と思った。

この本は、僕たちの生活も見方次第で、いくらでも面白くなることを示唆してくれている。


サンドウィッチマンからのハライチの流れで思い出したけど、
バナナサンド」というテレビ番組にハライチが出たときのことで、

ハライチが若手の頃から売れていたことに対して、岩井さんが

「若い時は苦労した方がいいと言うけど、苦労なんかしない方がいいんだから」

と発言した後、伊達さんが

「そうですよ、僕たちは苦労するしかなかったけど、苦労しなくていいならしないほうがいい」

といった趣旨の発言をしていた。

早くして売れたハライチ売れるのに時間がかかったサンドウィッチマンの対比が印象的だった。

話が脱線したが、伝えたかったことはこの本が

日常の見方を変えてくれるきっかけを与えてくれるエッセイだということである。

7. 笑いのカイブツ ツチヤタカユキ

趣向を変えて芸人ではないが、ハガキ職人(投稿がよく読まれるラジオリスナーの通称)の方の自伝的エッセイを紹介したいと思う。

この人にとって唯一の光がお笑いであり、大喜利だった。

笑いに対する熱量がハンパじゃない。

「才能がない人間でも、努力すれば面白くなれる」と己に課していた所業が常人の域を超えており、その努力はもはや才能だ

「もう本当にそれが好きで好きで、どうしようもなく好きでたまらない」というのも才能の一種だと思う。結局、どんな天才も「好き」という狂気には勝てない。

この本の文章全体に漂う哀愁と激情、

読んでいてその刺激や過激な表現に痛くなることもあるけど、それでも読み進めてしまう。

ハガキ職人が、絶望の中で追い求めた「お笑い」という希望を描いた一冊です。

この本はKindle Unlimited対象本なので「Kindle Unlimited」メンバーなら無料で読めますので是非。

「Kindle Unlimited」の登録は下の画像リンクから飛べます。

画像1


終わりに

芸人が書いたエッセイは、芸人の思いが直で届く感覚がある。

不特定多数の人が見るテレビと違って、自分の思いを少し強めに吐き出せる場所。

映像がない分、テレビよりも情報量は少ないはずなのに、心理的距離は近く、その人をより深く理解できた気がする。

それがエッセイの醍醐味であると思う。

ここで紹介できなかったエッセイにも、良いエッセイはまだまだあります!

テレビで見ていた芸人たちの違った一面を知れる「エッセイ」を是非読んでみてはいかがでしょうか?


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?