「哲学的な何か、あと数学とか」を読んだ感想(みたいなもの)[後編]
こちらは、「哲学的な何か、あと数学とか」を読んだ感想(みたいなもの)の”後編”です。
前編はこちら
前編と同様に、飲茶著「哲学的な何か、あと数学とか」を読んで思ったことをまとめていこうと思う。
異なる分野は相乗効果で発展
電磁気学の成立
本書の中でも書いてあるのだが、電磁気学は「異なる分野の学問をひとつの学問に統合しようとする流れ」で生まれたものだ。
「電気、磁気、光」はそれぞれ全く別の現象だと思われていたものだが、それぞれに相互関係があると分かった。
そこで、これらは「電磁気学」として統合された。
漫才と能
オードリー若林さんは、古典芸能である「能」から学ぶことも多いそう。以前、インスタで「すらすら読める風姿花伝」という本を紹介していた。
本のリンクはこちら
本書では、能の大成者「世阿弥」が著した芸能論「風姿花伝」を現代語訳し、その解釈を記している。
若林さんが感じた「漫才と能の関係」はインスタの投稿に詳しく書いてあるので、そちらを参照してほしい。
漫才と能では、テンポや間など全く異なるイメージだが、「舞台上で芸を披露する」という点で通ずるところがあるのだろう。時代は変わっても、舞台の上で表現することの土台は変わってないのかもしれない。
能に学ぶ身体感覚
ちなみに能で思い出したので、余談ですが。
齋藤孝 著「『何から読めばいいか』がわかる全方位読書案内」という本の中で、日本文化観を知るというテーマで「能」を扱っていた一節に引用されていた。
これを意識すると、身体の感覚が安定するらしい。人前で発表する機会があるとき役立つな~と思いつつ、すっかり忘れていた。
定期的に思い出さないとダメだな。
ちなみに、この本を起点として感じたことを書いたnoteはこちら
5年もの時間何の成果も出ない
冷静に見る目
ワイルズという数学者は、”岩澤理論”という理論を用いて、フェルマーの最終定理に挑戦したが、そのアプローチはことごとく失敗。5年もの歳月を捧げたにもかかわらず、何の成果をあげることもできなかったそう。
このレベルの年月スパンで、成果が出ないのは芸人も一緒だなと感じた。錦鯉・まさのりさんが50歳で2021年のM-1王者になったことも記憶に新しい。
同じくM-1グランプリ2021の決勝に出ていた真空ジェシカは、売れるまでの時期を冷静に捉えていたらしい。
ニューヨークがMCを務めるTwitterの配信番組「ニューヨークジャック」にゲストとして真空ジェシカが呼ばれた回があった。
川北さんによれば、「芸歴5年くらいまではウケないだろ」と思っていたそう。「先輩たちは面白い上に、ライブの出順も後ろだからウケる」からだ。ライブでは場が温まってきた後半の方が、お客さんも笑いやすい雰囲気になる。となると、出順が先になる若手は必然的に不利になるということだ。
お笑いに根付いている構造を冷静に見れていたからこそ、焦らず自分たちの笑いをじっくり構築していくことができたのだと思う。
サンクコスト(埋没費用)との折り合い
前回紹介したサンクコストと矛盾する部分もあるが、モノになるまで待てるかも大事だと感じた。
つまり、どの程度の時間をかけて”モノ”になるのかを冷静に見定める必要がある。
あとがきが好き
本書に限らず、あとがきには著者の「今回執筆するに至った想い」が文章に乗っかってくるから好きだ。
この本のあとがきには、本書を書くに至った経緯が書いてある。
「一見、無機的に見える数学の公式にも、実は人間の情熱が隠されていたんだ」
という”感動”を本にしたそうだ。
僕は、この本一冊を通じて描かれてきた”人間の情熱”に深く共感した。
やっぱり自分は人間を知りたいんだと再認識した。
まとめ
分かるとより楽しめる
著者の飲茶さんはおそらく、ネットやサブカルに造詣が深い人なのだろう。
文章の端々にそのエッセンスが散りばめられている。
それを感じ取るのも楽しかった。
「分からなくても十分楽しいけど、分かるとより楽しめる」を体感することができた。
残った疑問
最後に僕が疑問に思ったことを提示して締めたいと思う。
フェルマーは本当に「フェルマーの最終定理」を解けていたのだろうか?
本書を読んでもらうと分かるが、フェルマーの最終定理の証明は、フェルマーの死後に証明された定理を基に成り立っている。
ということは、フェルマーは死ぬ前に、後世で証明される定理までも全て証明が完了させたうえで、「フェルマーの最終定理」まで証明していたということなのだろうか。
それとも、実際に証明された方法とは全く違うアプローチで証明したのだろうか。
あるいは、どこかに論理の綻びがあり、実際には証明出来てなかったという可能性もある。
どれが本当か分からない。
どれが本当か知るすべもないが、実際にはどうだったのか想像を膨らませてみるのも面白い。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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