坂下奈々

音楽と本とお酒とごはんとホッキョクグマと建築物と街、何かをつくる人と誰かが作ったものが…

坂下奈々

音楽と本とお酒とごはんとホッキョクグマと建築物と街、何かをつくる人と誰かが作ったものが好きな30代。ふわふわ見失いがちな自分の輪郭を、文章にする事で繋ぎ止めているんだと思う

記事一覧

きみはわたしの友達_2022年総括

 お気に入りの紅茶をステンレスマグカップに淹れてテーブルに運び、一口含んでから、さて、とノートパソコンを立ち上げた。仕事納めをして三日目の朝だ。  冬季休暇に入…

坂下奈々
1年前
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先輩と話した普通の事と、わたしが創る未来のこと

はじめに  前にその話を書いたのははいつだったかな、とnoteの過去記事を見ると、ちょうど一年位前のことだった。前回も「坂下さん、奈良に行きたい!付き合ってくれる?…

坂下奈々
2年前
3

わたしらしくないこと

 ……とタイトルを書いて、私は部屋を見渡す。ああ、あまりにも私らし過ぎる。今日は12月31日大晦日。いつもと変わらないー否、下手に触った結果下手をすれば普段より片付…

坂下奈々
2年前
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悼む資格があるんだろうか

 曇ってて、少し風があって、そんなに暑くないからぺたんと地面に伏せるなら、お昼寝くらいはできる日だった。  午後の公園は騒がしい日もあるけれど、今日みたいな降っ…

坂下奈々
2年前
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「あんたはこれ好きやもんね」

 先日、久方ぶりに実家に寄った。このご時世、父母共に既往歴があるのであまり立ち寄らないようにはしているのだけど、用事があったのでやれる対策はやりながら。  いつ…

坂下奈々
3年前

私に何ができるのだろう

 我ながら本当に幼いというか単純というかなのですが、ここ数日とてもうかれていたのです。浮かれていたというか、何かふわふわしていて…今日は誕生日でした。  去年も…

坂下奈々
3年前
3

私にも、必死になるだけのものがあるってことなんだ

 薄々思っていたのだが、私は記憶力がない。  友人知人が過去のことを話す時、割と詳細に語られるそれはきちんと想像力を掻き立ててその場面をイメージさせ、私を笑わせ…

坂下奈々
3年前
3

"普通"が良いということ

 「月並みな表現で恐縮だけど、ホント良いお式だった」 あまりにもベタな表現だけど、もうその言葉しか出てこなかった。 「でも普通が1番いいのかもしれませんね」 しみじ…

坂下奈々
3年前
2

バズって嬉しく思ったいくつかのこと

 正直、あんまりこの話をするのもまるで浮かれてるみたいで恥ずかしいというか見苦しいような気もするのだけれど、そんなにない経験の中で思うところもあったので、noteに…

坂下奈々
3年前
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「自分をもてなす」

 これは私の言葉ではなくて、友人の座右の銘である。  昨日仕事を終えて帰り、理由のない高揚感から、革製品の手入れをした。家の扉を解錠し、玄関に入り、そのまま座り…

坂下奈々
3年前
1

爪先に紅

 少し持て余す時間が増えてから、ペディキュアを塗るようになった。足なら仕事の時に落とさなくてもいいし、素足のサンダルの先から出る爪に彩りがあってもいいなあという…

坂下奈々
3年前

「また」「いつか」が叶うこと

「チャッピーも最近見なくなったし、さびしいわ」  土曜日の公園で、顔馴染みのおじさんと再会した。4月から自宅待機に入ったから、かれこれ4か月くらい振りだった。お互…

坂下奈々
3年前
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先輩とした、普通の話

 これは以前Twitterに投稿したけれど、色々考えて消してしまった会話ログ。やっぱり残しておきたくなったので、こちらに纏めておこうと思う。一応他人が読む文章という意…

坂下奈々
3年前
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足音

ある日電話がかかってきた。 「そうそう、言っておかないとと思って。あのね、お母さん1週間ほど入院するの。1年半ほど様子見してた癌を取ろうってことになって。1週間ほど…

坂下奈々
4年前
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胸を占めたのは困惑と不安だった

「差別」。そのボーダーがどこにあり、今の自分が踏み越えていないかどうか、ずっと分からなくて困惑と不安を抱えていた。 ジョージ・フロイド氏が白人警官の暴行の末に亡…

坂下奈々
4年前
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私はどうしようもない人だけど

”誕生日は感謝の日”。毎年口の先に灯しては、しみじみと噛み締めている。 私の誕生日は5月30日。躑躅も薔薇も褪せ、紫陽花が色を増す夏の入り口。世界の状況が苛烈を…

坂下奈々
4年前
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きみはわたしの友達_2022年総括

きみはわたしの友達_2022年総括

 お気に入りの紅茶をステンレスマグカップに淹れてテーブルに運び、一口含んでから、さて、とノートパソコンを立ち上げた。仕事納めをして三日目の朝だ。
 冬季休暇に入る前には年末だからあれもやってこれもやって…と、あんなに意気込んでいたのが嘘のように、二日間のほぼほぼをベッドの上で過ごした。まあ、忘年会でお酒をしたたかに飲み、連れられたカラオケから逃げるように出た時には最寄りまでの終電は10分前に駅を出

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先輩と話した普通の事と、わたしが創る未来のこと

先輩と話した普通の事と、わたしが創る未来のこと

はじめに

 前にその話を書いたのははいつだったかな、とnoteの過去記事を見ると、ちょうど一年位前のことだった。前回も「坂下さん、奈良に行きたい!付き合ってくれる?」と声をかけられ、今回も「また奈良に行きたい!行こうよ!」と声をかけられた。不思議だけれど、そういう周期なのかもしれない。行きましょ!と二つ返事でOKして、現地で待ち合わせた。

 今回のこのnoteも、奈良で美味しいものを食べながら

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わたしらしくないこと

わたしらしくないこと

 ……とタイトルを書いて、私は部屋を見渡す。ああ、あまりにも私らし過ぎる。今日は12月31日大晦日。いつもと変わらないー否、下手に触った結果下手をすれば普段より片付いてない部屋、まだ家にある年賀状……。帰郷して母に「家片づいたん?」と訊かれ、「いや……」と言葉を濁し、「またあんたは……普段からやってないから云々」と小言を言われるまでまあ見事な様式美だ。

 そんなことはさておき、せめて頭の中くらい

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悼む資格があるんだろうか

悼む資格があるんだろうか

 曇ってて、少し風があって、そんなに暑くないからぺたんと地面に伏せるなら、お昼寝くらいはできる日だった。

 午後の公園は騒がしい日もあるけれど、今日みたいな降ったり止んだりの日は、子どもも煙草を吸いにくる人も少ない。木陰でぼんやりしていると、顔馴染みのおじさんが公園にやってきた。
 こんにちは、と声をかけると、いつもなら少しはにかんで通り過ぎるのに、はにかんだ後私の前で止まった。

「ちびがおら

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「あんたはこれ好きやもんね」

「あんたはこれ好きやもんね」

 先日、久方ぶりに実家に寄った。このご時世、父母共に既往歴があるのであまり立ち寄らないようにはしているのだけど、用事があったのでやれる対策はやりながら。

 いついつ家に帰るよー、と声を掛けると大体母はご飯の話をする。「帰ってきたら食べるのか」とか「これがあるから帰ってきたら出してあげる」とか「食べたいものはないか」とか。私にとっては心底何でも嬉しいからこそなんだけど、母にとっては嬉しくない、お決

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私に何ができるのだろう

私に何ができるのだろう

 我ながら本当に幼いというか単純というかなのですが、ここ数日とてもうかれていたのです。浮かれていたというか、何かふわふわしていて…今日は誕生日でした。

 去年も似たようなことを書いたのですが、誰かからおめでとうと祝われることがとても嬉しいのに、それを望んでしまう、欲してしまう私は浅ましいなと思うのです。決して誤解されたくないのは、私以外の人が誕生日を祝って欲しい!と思っている分には全くそんなこと

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私にも、必死になるだけのものがあるってことなんだ

私にも、必死になるだけのものがあるってことなんだ

 薄々思っていたのだが、私は記憶力がない。

 友人知人が過去のことを話す時、割と詳細に語られるそれはきちんと想像力を掻き立ててその場面をイメージさせ、私を笑わせたり泣かせたりする。笑ったり泣いたりしながら頭の隅で「相変わらず話がうまいな」と思ったりしている(ちゃんと聞いてるよ。念の為)。
 それだけなら、その友人知人の話がうまいだけだという可能性もある。だけど、私と共通の記憶に関してもそうなのだ

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"普通"が良いということ

"普通"が良いということ

 「月並みな表現で恐縮だけど、ホント良いお式だった」
あまりにもベタな表現だけど、もうその言葉しか出てこなかった。
「でも普通が1番いいのかもしれませんね」
しみじみと、小さい頃から変わらない柔らかい笑顔で、上の従姉妹が言った。そうだね、と返しながらもうそれだけでまた泣きそうになっていた。

 従姉妹の結婚式だった。三姉妹で、昔からとても仲良くしてもらっていて、その両親であるところの叔父と叔母には

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バズって嬉しく思ったいくつかのこと

バズって嬉しく思ったいくつかのこと

 正直、あんまりこの話をするのもまるで浮かれてるみたいで恥ずかしいというか見苦しいような気もするのだけれど、そんなにない経験の中で思うところもあったので、noteに纏めることにした。
 先週の金曜の夜、ふと思い出して撮っておいた写真を添えてツイートした。ほぼほぼ平時くらいに落ち着いたが、1週間を過ぎた今日でも通知が来る。

https://twitter.com/tweetssb/status/1

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「自分をもてなす」

「自分をもてなす」

 これは私の言葉ではなくて、友人の座右の銘である。

 昨日仕事を終えて帰り、理由のない高揚感から、革製品の手入れをした。家の扉を解錠し、玄関に入り、そのまま座り込み、目についたシューズにブラシをかけ、蜜蝋を塗り込み始めた。この3足はならまちにある「NAOT」という革靴の専門店で購入したもので、それぞれサボは「IRIS」、紐靴は「KEDMA」、サンダルは「BERNICE」という名前が冠されている。

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爪先に紅

爪先に紅

 少し持て余す時間が増えてから、ペディキュアを塗るようになった。足なら仕事の時に落とさなくてもいいし、素足のサンダルの先から出る爪に彩りがあってもいいなあという、積極的なような怠惰なような理由だった。
 ライブを観に行くのに合わせて勢いで買ったネイルは、トーンこそ暗めだけど主張が強くてどれも私らしいというには気後れしてしまう色(ライブなら誰もこっちを見ちゃいないという変な安心材料がある)。まあこの

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「また」「いつか」が叶うこと

「また」「いつか」が叶うこと

「チャッピーも最近見なくなったし、さびしいわ」

 土曜日の公園で、顔馴染みのおじさんと再会した。4月から自宅待機に入ったから、かれこれ4か月くらい振りだった。お互いマスク顔のままお久しぶりですね、と挨拶した後、世間話のように聞かされた。

 チャッピーは、会社の近くの公園に住み着いている地域猫だ。
 毎日顔馴染みのにんげんを見つけると撫でろと強請ったり、一瞥して近くに取り敢えず座ったり、「今日は

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先輩とした、普通の話

先輩とした、普通の話

 これは以前Twitterに投稿したけれど、色々考えて消してしまった会話ログ。やっぱり残しておきたくなったので、こちらに纏めておこうと思う。一応他人が読む文章という意識はあるけれど、メモ程度と承知頂けたら幸いです。

 先輩とこの話をしたいと思ったのは、先輩が長期の休暇を取ったことがきっかけだった。休暇中の行き先は台湾、先輩の故郷。選挙があるから投票する為に帰るという。地元に住民票を置きながら転々

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足音

足音

ある日電話がかかってきた。
「そうそう、言っておかないとと思って。あのね、お母さん1週間ほど入院するの。1年半ほど様子見してた癌を取ろうってことになって。1週間ほど家開けるから」

母は明るい調子でそう言った。いや待って、癌?手術?私は動揺しながらも、母の気丈さに"過度の心配をさせまい"という圧を感じて「そうなんだ。そっか、分かった。教えてくれてありがとう」と間抜けな返しをしてしまう。

家を出て

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胸を占めたのは困惑と不安だった

胸を占めたのは困惑と不安だった

「差別」。そのボーダーがどこにあり、今の自分が踏み越えていないかどうか、ずっと分からなくて困惑と不安を抱えていた。

ジョージ・フロイド氏が白人警官の暴行の末に亡くなったことをきっかけに、現地ミネアポリスに留まらず、全米で抗議活動が行われている。Twitterのタイムラインには、この一件の痛ましい、或いは暴徒と化した一部の、或いはあくまで意思を伝えることを一貫し真摯に訴えかける、それらの映像が流れ

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私はどうしようもない人だけど

私はどうしようもない人だけど

”誕生日は感謝の日”。毎年口の先に灯しては、しみじみと噛み締めている。

私の誕生日は5月30日。躑躅も薔薇も褪せ、紫陽花が色を増す夏の入り口。世界の状況が苛烈を極める中、幸いにも無事に歳を重ねることができた。

しかしながら、この数日の私ときたら本当に情けないばかりだった。

昨日は1週間ほど前に衝動的にネットショッピングで購入した洋服が届いたけれど、開けてみるとサイズは合わないし、どうにも素材

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