ミニチュアの笑撃
汗を拭きながら図書館に入ったカメは、ふとした違和感に目を留めた。よく見ると、検索機の前で深刻な顔をしたウサギが、ぎこちない動きで何かを一生懸命に探していた。
カメに気づいたウサギは、しょんぼりした顔でトボトボと歩いてきた。「端末の操作って本当に苦手。やっと検索できたと思ったら、読みたい本は貸出中。ついてないわ」
「こうなったら、展覧会に行くしかないわね」とウサギは言い、状況がよくわからないカメの手を引いて駅へと急いだ。
日本橋高島屋にたどり着くと、ウサギは掲示物を見て小さな声をあげた。「ここ、ここ。私が会いたいお寿司がいるところ!」
「見て!私が読みたかった絵本に出てくるお寿司はこれよ!」ウサギは展示物に駆け寄ると、小さな声をあげた。
「それにしても、なんて愉快なお寿司なのかしら。ネタを着替えるだなんて」
「ここはミニチュアの世界なんだね。発想がなんとも斬新で面白い。ブルーのハンガーが本当にビッグウェーブに見えるね」と、カメは食い入るように見つめた。
「私もこんな美味しそうな景色の中を走ってみたいな。でも、たぶん食べるのに夢中になって走れないかも」と、ウサギは笑いながら言った。
「ホチキスの針とクリップでジム用品って、笑えるわ。私も腹筋がしたくなってきた」
「私も、こんなふうにフワフワなパンの上で飛び跳ねてみたいわ」
「これはロコモコで作ったハワイ島かな」とカメが感傷に浸っていると、ウサギが隣にいないことにふと気づいた。
カメはあたりを見渡すと、ある展示物の前で固まっている彼女を見つけた。近寄って声をかけると、振り向いた彼女の瞳は、くっきりとハート型になっていた。
彼女の隣に立ってその展示を見たカメは、ゆっくりと回れ右をした。「ちょっと、逃げないでよ」無言で立ち去ろうとするカメを、ウサギは慌てて追いかけた。
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