スウェーデンの社会してテム・子どもたちの場合その3

日本とスウェーデンの子育て事情で大きく異なるのが「親権」です。日本では単独親権ですが、スウェーデンでは共同親権です。共同親権は離婚しても両親が平等に親権を持つため、双方で相談しながら子育てを続けます。相手への愛情がなくなって離婚しても、両親であることに変わりはありませんので、子どもが成人する18歳までは両親としての関わりが続くことになります。そのような事情もあり、顔も見たくないほどの泥沼になる前に離婚になるケースが多いようです。慰謝料のないスウェーデンでは、離婚の条件も日本とは異なりますが、このあたりの事情はまたいずれ。

スウェーデンでは、親が精神的に病んでいても犯罪者であっても、共同親権制度を貫き、子どもに会う権利を守っています。子どもに危害を与える心配がある親の場合は、福祉の担当者がつきそっての会見になります。子どもにとっては引き離した方がいいと思う親の場合でも、生物的親子の絆を大切にし、子どもと会う権利を守ります。もちろん子どもが会いたくない場合はその気持ちが尊重されます。

離婚した後に両親がそれぞれに新しいパートナーを見つけることも一般的で、そのパートナーは子どもたちの親というより、親のパートナーという位置付けになります。新しく再婚した親のパートナーをパパやママと呼ばせることはなく、パパとママはあくまでも生物学的両親に対する呼び名です。(もちろん養子やその他の事情で他人が両親になることもあります)

ここで感心するのは、離婚した後でも子どものお誕生日会などのイベントの際には、両親とそのパートナー、それぞれの子どもたちが総勢で集まることです。私の親戚がその典型で、両親が離婚した親戚の子どもたちのお誕生日会になると20人以上の人が集まります。別れた両親、両親の祖父母、両親それぞれの新しいパートナー、新しいパートナーとの子ども、パートナーの連れ子、が一堂に会します。パートナーの連れ子まで来ることに驚きましたが、スウェーデンでは連れ子のことを「ボーナスキッズ」と呼び、子どもは授かりものという考えがあります。

クリスマスなどの伝統行事では、それぞれの両親で別々に祝うため、父親の家族と母親の家族と二度祝うことも多いようです。そうなると、両親の離婚によって子どもには家族が倍に増えることになります。

子どもにとっては、両親にはいつでも会えますし、新しい家族も増えるため、共同親権は前向きの離婚の第一歩であると思います。両親をどちらかに決めなければならない単独親権は、子どもにとってとても残酷な法律です。離婚をすることは両親の勝手ですが、日本でも離婚による子どもへの影響を最小限に抑える社会になってほしいと願っています。

2016年執筆

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?