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「地震保険」の闇

「堀江貴文「何千万も借金してマイホームを購入するなんて狂気の沙汰」持ち家派に苦言を呈する理由」
(DIAMOND/堀江貴文)


 日本において得られる情報の質が低い。
 それは大手メディアだけに止まらず、自らを知識人と勘違いした個人の発するものも同様である。
 さて、本投稿で言う「低質な情報」とは何を指すかだが、引用した記事で堀江氏は次の様に述べている。

 それに日本は地震大国だ。東北では、新築したばかりのマイホームが地震や津波で破壊される事例が続出した。
 「そんなときのために地震保険に入っているのだ」と反論する人もいるだろうが、もし首都直下型地震が起きれば、保険会社はデフォルト(債務不履行)に陥って保険金なんて払えなくなる。そうなれば莫大なローンだけが残る。

出典:引用した記事より

 これは間違いである。どれ程大規模な地震が発生しても、保険会社が債務不履行に陥る事は無い。
 何故か。
 それは、政府が介入するからである。
 いわゆる地震保険とは、民間保険会社が負う地震保険責任の一定額以上の巨額な地震損害を、政府が再保険することによって成り立つものである。
 引用した記事はバカ者による「事実に基づかない妄想」に過ぎず、そのバカ者が垂れ流す“感想”をきちんと調べもせずに「知識人の提言」みたく報道するのがバカメディアである。


※補足①:地震保険と民間保険会社

 もしも政府の介入が唐突に断たれ、次の瞬間に首都直下型地震が起きたらどうなるか。
 その場合は堀江氏の指摘した通りになるであろう。

※補足②:政府の介入がなかったら

 最初から政府の介入が無く、地震保険は民間の保険会社が全責任を負うという形だったとするとどうか。
 この場合、地震保険はもっとずっと高額な商品になっている筈である。立地条件によっては月々の住宅ローンと同額を毎月取られてもおかしくない様に思う。
 もっと言うと、例えばハザードマップ上で安全な地域の保険料は安価に、真っ赤っかの地域は上述した様な価格感になるのではないか。
 ハザードマップ的には安全そうでも、隣接してオンボロの木造住宅が建っていたら査定は厳しくなるかもしれない。なんだか、火事で燃えて延焼してくるリスクが高そうではないか?
 要するに政府の介入が無いなら無いで、民間の保険会社は例え首都直下型地震が発生しても、自社が債務不履行に陥る様な商品は用意しないという事である。

※補足③:政府が介入すると

 政府が介入する事によって、地震保険は一見すると激安である。
 激安に思える内はまだ良い。現実は、多くの人が安いとすら思っていない。しまいには「首都直下型地震が発生したら保険会社がデフォルト」みたいに頓珍漢なことを言うバカが湧いてくる。
 一方で、保険会社は政府が補填してくれる訳だから、競合他社との競争もあるのでそれをアテにした価格設定にする。
 その結果どうなるかというと、幕張の様な液状化と津波のリスク満点みたいな地域にまで、「政府の補填する地震保険を活用した住宅」が立ち並ぶ訳である。

※補足④:政府がカネを出すと却って高く付く

 さて、「一見すると激安」と書いた訳だが、実際に安くなっているのかと言うと、そうではない。そんなオイシイ話はこの世の何処にも存在しない。
 なにも「性は日本!名は政府!」という個人が自腹を切って補填してくれる訳ではない。財源は我々の納める税金である。既に増税されている分と、事が起こってから増税される分と、何方に重きを置くかは知らないが、必要以上に取られる事には変わり無い。
 いまだに「復興庁」などという金食い虫が生存していることから、容易に想像出来るであろう。

※補足⑤:価格とは何か

 地震保険は商品である。
 価格というものは商品の需要量と供給量に従って変動する。地震保険を購入する者が増えれば原資が増える。それを上手く運用出来れば商品の価格を抑制でき、更なる需要を喚起出来る。
 また、リスクの高い地域と低い地域でどのくらいの価格差を設けるか。この様な査定も今よりも緻密に、真剣にやる筈である。
 この様な企業努力を麻痺させるのが「政府の介入」である。

※補足⑥:地震保険の購入者

 一生に一度の買い物で得たマイホームが地震で倒壊したら悲惨である。多分、マイホームを購入する人の殆どが地震保険に入るだろう。
 もしも地震保険料が今みたいな誤差レベルでは無く、災害に対するリスクの大小によって、月々の費用負担額に数万円単位の差がつくとすればどうか。
 必然的に、液状化や津波のリスクが高い地域に家を購入する人は減る筈である。
 翻って現実はどうかと言うと、地震保険料の高い安いなど、住宅本体の価格感からすれば微々たるものである。「地震保険料の支払額が高過ぎるので別の候補を当たった」というケースは極めて稀であろう。
 この様に、「政府の介入」は災害リスクの高い住宅を購入“してしまう”人を増やす要因になっている。

※補足⑦:ハウスメーカ

 もしも災害リスクの高い地域における地震保険料が(本来あるべき)莫大な価格だったとしたら、わざわざその様な地域に家を建てて売ろうとするだろうか。
 まぁ土地が安くなりそうなので、敢えて地震保険に入らず、格安のそういう地域に建つ家を買うという人もいるだろうから、ゼロではないだろうが・・・。
 結果どうなるかというと、液状化や津波のリスクがあったり、河川が氾濫する恐れがあったり、軟弱地盤だったり、その様にハイリスクな地域に家が建つケースは激減する筈である。
 昨今の新築住宅というのは、震度7の地震でもそう簡単にガラガラと倒壊したりはしない。構造体が塑性変形しつつ、地震力を吸収して持ち堪える作りになっている。東日本大震災で家屋を破壊したのは地震の揺れそのものでは無く、その直後に襲来した津波である。
 ハイリスクな地域に家が殆ど建たなくなれば、津波であれ程の死者を出す事は無くなる筈である。

※補足⑧:津波による被害

 東日本大震災の被害があれ程の規模に至った原因は何かというと、鉄筋コンクリート造のビルすら押し流す程の津波が襲来したからである。
 津波が強烈だったとして、それがどうして数万人の死者を出したのかと言うと、そこに数万の人が居たからである。
 何故そこに数万もの人が居たのかというと、そこに住んでいたからである。
 何故津波で浚われる様な地域に数万もの人が住んでいたのかというと、その様な地域にマイホームを購入する人が沢山居たからである。
 何故その様にハイリスクな地域でマイホームを購入出来たのか。地震保険料とか尋常で無く高額な筈だが、一体どういう事なのか。
 それは、地震保険という商品が、民間保険会社が負う地震保険責任の一定額以上の巨額な地震損害を、政府が再保険することによって成り立つものであり、本来あるべき価格よりも遥かに安価に見せ掛けられていたからであった。
 勿論、もっと安全な地域に住んでいて、別の理由でそこに居て被害に遭われた方も多かろう。全責任が地震保険に対する政府の介入にあるなどと言うつもりは無い。
 だが逆の見方をすると、地震保険料を不当に安価に見せ掛けていた事は何の関係も無いと、言い切る事も不可能である。津波で亡くなられた方の何割かは、政府の政策によるものと看做さなければならない。

※補足⑨:情報の質

 日本において得られる情報の質が低い。
 それは大手メディアだけに止まらず、自らを知識人と勘違いした個人の発するものも同様である。
 低質な情報の最たるものが「事実に基づかない情報」、詰まり「嘘」である。
 堀江氏は本投稿で述べた様な事実を知らなかったのか、知っていてわざと隠したのか、それはどうでも良い。理解しておかなければならないのは、堀江貴文は嘘を事実であるかの様に吹聴する低劣な人間だという事である。
 ところで、引用した記事は堀江氏が書いたのだろうが、実際に掲載しているのはDIAMONDという媒体である。この媒体のついても同様の認識を持つべきである。
 情報は正常な社会を構築し、維持する上での生命線である。堀江貴文やDAIAMONDの様な嘘吐きは、社会の敵である。


※追記①:西村博之(1)

 堀江氏が大嫌いな西村博之氏、通称“ひろゆき”の言葉を借りれば、引用した記事は「個人の感想」に過ぎない。しかも事実を誤認した上でのものなので、「感想」ですら無いかもしれない。
 そう考えると、「勘違い」辺りが妥当ではないか。
 結論。堀江貴文は勘違い野郎である。

※追記②:西村博之(2)

 因みにコイツも「勘違い野郎」である。

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