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【1.5話:スターバックスの恋@恵比寿】

1.5話:期待  1話はこちら

あの日以来私は気づけば毎日早朝、スターバックス恵比寿ファーストスクエア店に立ち寄るようになった。

「フワさん、私はそろそろいきますね。じゃ」

「あ、ごちそうさまでした!」

タカイさんがゆったりとした歩き方でドアへと向かっていく姿を目で追った。タカイさんは外に出ると再度振り返って、窓越しに軽く手を振った。

思わず口元が緩み、私も手を振り返す。

彼の姿が消えたところで、重大なことに気付いた。

「あっ!連絡先!」

そう、タカイさんの姿に惚れ惚れするあまり、重要な連絡先を聞くのを忘れていた。

だから、フワさんこと私はこのお店にいるのである。外側を眺める形で座って、タカイさんがあのわかりにくいドアを押して入ってくるのを密かに待っている。

あの日から5日間たったが、タカイさんは姿を見せなかった。

「もう会えないのかな」そう私は諦めていた。

「もう一度だけ、会いたかったな」

タカイさんの優しい微笑みが忘れられない。押し付けがましくなく、ウィットに飛んだ楽しい会話。

左手の薬指に指輪はなかった、でも彼女はいるかもしれない。

期待ばかりが私の胸の中でパンパンな風船のように膨らみ、苦しい。たった一度、たった20分ぐらい会話をしただけなのに。

あの時間が忘れられず、鮮明に記憶に残っている。

「あ・・・」

ふと自分の手元のカップに視線を落とす。今日は無意識にブラックコーヒーを頼んでいた。それまでは必ずキャラメルスチーマーを頼んでいたのに。

「苦い、はずだよね笑」

今日も外は耳が痛くなる冷え込みで、早朝の恵比寿はまだひっそりと静かだった。

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